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第2章・婚約破棄は新たなる珍事を招く。

確かに誰にも前世は有るのでしょう。

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ここは何処?城内の筈。しかもお客様を宿泊させる、客室ばかりが有る1画の筈。上下階への通路には、キチンと見張りの兵士もいる筈。なのに夜分にお客様ならぬ、害虫ばかりが次から次ぎへと湧き出るのはなーぜー。

「なーぜー。なぜー。どーうーしーてーなーのーぉぉー。いい加減にねーむーらーせーてぇーぇぇー。」

「こら!ふざけるな!ハモるな!聞こえたらどうするんだ!」

「大丈夫でーす。バッチリ遮音結界張ってまーす。けど張らなくても大丈夫じゃ無い。お部屋は全て個別に完璧防音仕様よ。部屋でどれだけ暴れても、続きの部屋にさえバレないわ。客室だからプライベートを尊重して?まさかねぇ。」

全く何故ここまで徹底してるのよ。個別のお部屋にまで完全防音にする必要が有る?他国に滞在するお客様が、室内でどれだけ暴れると言うの?ほらまた1匹来ましたよ。ん?今度はブライアン狙いね。さあさあ。眩惑付きのお部屋へご案内ー。しかしこの客間は凄いわ。多分ハニートラップ専用なのね。素人まで夜這いに入れちゃう。標的のお部屋まで、扉を叩かずに簡単に到達出来てしまう。更には室内完璧防音で、どんなに大暴れしても大丈夫。これでは屈強な男性だって、多勢に無勢で来られたらお仕舞いよ。

そんな中でも…。

のんきに寝てるブライアン…。

オマケのドレイク様…。

まあ。客間に侍女や侍従のお部屋が備え付けなのは良く有る事なの。通常はお仕事で主人に付き従い、睡眠時位しかお部屋には居ないから。つまり簡易洗面所付きで寝室だけ別な感じ。勿論入口は共通の扉。給湯質兼キッチンは別に有る。寝室が増えただけで、そんなに手の込んだ作りの客室では無い。

それなのにね?私達が案内された客室は凄いのよ。全てのお部屋に防音機能付き。バスタブ付きユニットに、個別に外に出られる扉付き。しかも扉には個人識別認証付き。

なのに隠し扉で誰でも個々の部屋に浸入出来ちゃう。

これで個人識別認証付きはいったい誰得なの?勿論夜這い犯が得なのよね?相手を間違える心配は無いし、拘束してしまえは此方のもの。泣いても叫んでも誰にも気付かれず助けも見込めない。犯人にされるがままよ。全くこんな魔道具購入する位なら、何か他の予算に回せないの?一応呼び出しベルは有るけど、この防音ではよく聞こえないわ!主がお茶を淹れて貰いたくても、下手したら呼び出し音にさえ気付いて貰えない。

案の定。全く何も気付かぬブライアン。幸せそうにグウグウ寝てる。明日破棄にされるかもしれない、婚約の事は気にはならないのかしら?ブライアンはもう少し危機感を持たせなきゃダメね。ドレイク様も防音の魔道具には気付いたけど、静かに眠る為か?気が利くな!と喜び寝てしまった。腕は立つようだけど、考える事は苦手みたい。脳筋なのかしら?

「しかしブライアン狙いは解るのよ。姫を嫁に出したく無くなったからよね。明日の夜会でここぞとばかりに、婚約破棄をぶちこんでくるそうじゃない。でも私を狙うのは何故かしら?」

うーん。夜会で婚約破棄が今の流行なのかしら?何故穏便に出来ないの?まあ単に慰謝料を払いたくない。あわよくば貰いたい。みたいな感じかしら?

ブライアンだけなら丸め込めたかもしれないわ。でもこちらには仲間がいるの。おバカな魔術師団長達にローズマリーもいる。そうよ。これは私たちへのチャンス。迷惑料代わりに、リーダーの家のパーティー代を出して貰いましょう。

勿論、慰謝料は別ですよ?

「さあな。エリザベート様なら解るが、何故侍女のエリーを狙う?俺にもさっぱり解らん。」

私にも解らないわよ。ローズマリーが関係してるのかしら?ローズマリーは早々に第1王子に取り入り、既に手玉に取っている。ローズマリーを私と勘違いし脱獄させ、魔の森の拠点まで担いで運んだのが第1王子との事。ついでの様に王太子もローズマリーの魅了に墜ちている。まあ王太子は女グセが悪いから即落ちよ。幾らなんでもチョロすぎよね。廊下でイタしていて驚いたわ。魅了の魔道具の魔力は切れたと聞いたけど、何処で補充したのかしら?まさか投獄中に?疑問ばかりだわ。

明日の朝までにはグレイシー様が、ローズマリーについては調べてくれる手筈になっている。

「私が魅力的すぎるのかしら?」

・・・・・。

「おい冗談言ってる場合じゃ無いぞ。こりゃまたダブルで凄いのが来た!否。4人いるな。こいつらは顔出してからの方が良いな。次期公爵様のトラウマ勃発だ。しかし団体で夜這いに来るか?頭イカれてるな。」

・・・・・。

冗談言ったわよ。申し訳ございませんことね!でも確かに言うタイミング悪かったわ。

本当よ。夜の散歩に行くんじゃ無いのよ。ニヤニヤと話ながら団体で夜這いに来るなんて…。

まあベラベラと口の軽い事ね。他に誰もいないから、所構わずなのでしょう。しかし騎士団長(仮)と魔術師団長(仮)は、ローズマリーの魅了が切れてないのかしら?それとも本気で惚れてるの?惚れてるならどうして?惚れてるのに、皆でベッドで仲良く出来るもの?父親や友達とも関係を持ってても愛せるの?私には理解できないわー。

ローズマリーもだけど、魔術師団長もかなり頭がイカれてるわね。ローズマリーが騎士団長(仮)の手をかり2人がかりで、ブライアンを手込めにする?成程。傀儡としてブライアンを利用しようとしてる訳ね。確かに魅了にかかり、一時期ローズマリーとそういう関係になったのは事実。更にとなると、自称聖国側の強みになってしまう。

この4人は完璧に、自称聖国の仲間と言う訳ね。まあ勝手に自国を抜け出し、他国の王城にいる時点で売国奴は決定。戻っても己達の居場所は無い。ブライアンの籠絡は、その保険でも有るのだろう。上手く行けば自称聖国側へ有利な証拠を与える事が出来る。恩が売れる。もしもの場合も、ブライアンに助けて貰えば良い。次期公爵様の肩書きは大きいからね。

さてお次の話題は何かしら?魔術師団長と息子は侍女を共有する?高魔力持ちだから、血筋の為に囲う?この侍女ってのは勿論私よね?つまり高魔力持ちな侍女を見付けたから、手込めにすると?己達の血筋を産ませる為に監禁すると?

冗談じゃないわ!まさかこんな所でも、マリエンヌが良く言う監禁フラグが立つの?私はエドワードだけでお腹一杯よ。胸焼けしてるわ!コイツら絶対に成敗してやる!監禁撲滅よ!

多分これがロジャースの言ってた、魔力史上主義って奴なのね。リーダーのお母様も妹さんを出産後に、コイツの毒牙にかかってしまった。しかもお父様の助けも間に合わずに目前で。お互いに労りあいご両親は乗り越えた。しかし魔術師団長は、今だにリーダーのご両親を脅している。伯爵が魔術師団長に頭があがらないのは、妻の名誉を思っての事なのだろう。

「成程ね。高魔力持ちだからか。エリーの正体がバレた訳では無いんだな。しかしコイツら解ってるのか?皆で仲良くイタしましょう。共有いたしましょうは犯罪だぞ。ん?聖国では大丈夫なのか?」

「皆でイタしましょう以前に、同意無きは犯罪よ。でも聖国では多重婚可能よ。因みに同性同士も可能。子供が増えるとかなりの人頭税がかかるの。だから税金を沢山払いたくない貴族達は、男色を公認している。大神殿では、正式に結婚式もあげられるそうよ。そうだわ。大神殿も腐敗が凄いらしいわよ。潜入してみる?住み込みの修行は、女性より男性の方が喜ばれるそうよ。何故かしらね?」

・・・・・。

「俺には無理!絶対無理!死んでも無理!考えるだけでも無理!無理強い厳禁!腐れ坊主は死ね!神の裁きを受けて死ねば良い!ってか皆死ね!」

「そんにムリムリ言わなくても大丈夫よ。そうだ!気を付けなさい。王太子はどちらもいけるそうよ。ローズマリーと一緒に、3人で寝室へ行くぞと誘われ、魔術師団長(仮)が逃げまくってたそうよ。まあリーダーより、ブライアンの方が危なそうだけどね。」

婚約破棄が上手くいかなかったら、ブライアンを王太子が手込めにする計画まで有るそうだからね!ブライアンはのんきに寝てるけど、魔力も有るんだしやはり特訓してやろう。既にローズマリーに奪われちゃったけど、流石に同性に奪われたくは無いだろう。

う…。考えたくない。私もイヤ…。

「侍女のエリーが大活躍だな。まさか下働きまで潜り込んで無いよな?危ないから止めろよ。後もう考えるな。無心になれ。俺よりは絵面的にもマシだろ。ほら早く行くぞ。」

「他の奴等と同等に、眩惑部屋へ直行でのおもてなしじゃダメ?ウサギ穴の事を思い出しちゃったわよ。」

・・・・・。

「また余計な事を…。うげぇ。俺まで思い出したわ!挨拶したら直ぐに送り込んで良い。だが俺らが顔を見た証拠が欲しい。ほら仲良し使用人で行くぞ。奴等は気付けば朝まで眩惑部屋だ。弟の為に少しの我慢だ。」

はーい。はぃ。頑張りますよ。

「はいは1度だろ!」

何時もは己が言われるのに、妙に張り切ってて気持ちが悪いわね。

*****

おはよう。清々しい朝ですね。と言いたい所だけど、正直まだ眠い。でも既にグレイシー様が到着している。先にリーダーが話を聞いてくれてる。私もも着替えて、ブライアンの部屋で待機している。準備はバッチリよ。今日は少し若い子向けのお仕着せなの。全体的にふんわり丸みを持たせて、袖や裾丈を変えている。ワンピタイプは昨日のキッチリタイプとの2種類。上下セパレートタイプも数種類持ってきてるから、無くなっても心配は無い。

だけど!差し上げるつもりはございませんことよ。昨晩のバカの一部が持ち去ろうとしたのよ。眩惑部屋はリーダー用の部屋を使用。放り込まれた人達は、己達に都合の良い幻影を見せられた。それを夢と思うかどう感じかは本人次第。皆は勿論すっぽんぽん。朝になり裸の己が起き出した部屋には、己と同様な裸な男女が重なりあう。服は乱雑に混ざりあい、部屋中に散らばっている。周囲を見て驚愕する人々。状況が理解できずに、悲鳴をあげ己の散らばる衣服をかき集め逃げ帰る人々。何を勘違いしたのか、仲良く始めてしまう方々。(ローズマリーと魔術師団長達)慌てて着替えつつも、途中で落ち着いたのか?再度他の部屋に忍びこもうとする人々。勝手にクローゼット漁るな!勿論奪い返しましたよ。

そう言えば、魔術師団長の所も親子丼なんだね。ローズマリーは節操がないな。流石に侯爵親子は、今回はもう出てこないみたい。流石にあれだけの事をしたら、降格だけでは済まぬだろう。王家に手出しはしてないが、王家主催のパーティーで勝手をしたのだ。下手したら爵位強奪の上、一族島流しだ。侯爵本人と嫡子が関わってしまったから、次代に爵位を譲り自身は国外退去で謹慎と言う手も使えない。侯爵は良くて隠居して領地で療養。実質は幽閉だ。嫡子たる息子がマリエンヌとの婚約破棄をした。これだけなら両家の問題で済んだ。しかしパーティーで周囲を騒がせた。侯爵はそれに乗っかり、自身の勘違いで詐欺を働いてしまう。それも近隣諸国のお偉方も揃う、大掛かりな王家主催のパーティーで。え?それ位で一族島流しは厳しい?今回はローズマリーが主犯だから、少しは軽いんだよ。もし侯爵が主犯なら、一族郎党処刑台ゆき決定。

侯爵は王家に近しい公爵家を貶めようとした。これは政治の権力が偏ると言う事。己がその地位に成り代わり、王家に仇をなそうとしたのかもしれない。ローズマリーは私を、皇太子様の婚約者から引きずり下ろそうとした。これもそう。ローズマリーと侯爵家嫡子との関係が公にされたばかり。そのローズマリーが皇太子様に言い寄る。侯爵家は関係ないと言い張っても、侯爵家が王家に取り入ろうとしてると思われても仕方がない。更には婚約者で有る私へと送られてくる刺客。私をなきものにし、時期王妃をすげ替えようと考えてるとも取られてしまう。この刺客が侯爵家の手の者で無くてもだ。怪しければ煙が立ってしまう。

更には国家転覆を狙うとか、売国奴とかかんぐられる恐れも有る。可哀想だけど魔術師団長を含む仲間は、多分この扱いになるだろう。自称聖国は多分彼らの亡命を認めない。所詮は使い捨ての駒扱いなのよ。

それだけ貴族世界は厳しいんだよ。私たちは国民の血税で生活してるの。贅沢をしてるかもしれない。でもそれは他国に侮られぬ為もある。確かに必要以上の贅沢も有るかもしれない。でもそれ以上の義務も務めも果たしてる。私はそのつもりだった。

貴族の義務。ノブレス オブリージュ。貴族に産まれたなら、この言葉を必ず叩き込まれる。私は義務も務めも放棄しなかった。精一杯頑張ったの。学園に通ったローズマリーならば、必ず教わった筈。なのに何故なの?その気持ちが全く理解出来ない。

自由恋愛。素敵よね。自由に生きたい。素晴らしいわ。しかしそれを叶えるには、何かを犠牲にしなくてはならない。それが私にとっては、貴族の地位だった。

ローズマリー?貴女は何がしたいの?自由に生きて沢山の恋愛をしたいなら、庶民として暮らしてた方が叶えられるわ。でも貴女は父の男爵の手を取った。男爵は領民に慕われる優しい人だと言われてる。今回の件を嘆き、男爵位を息子に譲り領地に帰ったと。野心の無い方で、決して政略結婚を無理強いする人ではないそうね。実質、男爵家のお姉さまも、政略では無い一般の商家に嫁いでいた。

「やはりローズマリーはゲームの物語の主人公だそうです。そして後半も知っている。後半の主人公エリザベートが出奔し居なくなった事で、自身がヒロインに成り代わったのだと主張してます。今度こそ、王妃になるそうですよ。つまり皇太子土下座ルート狙いです。此方の第1王子と、国に戻り下克上。しかし皇太子の土下座により揺れる女心。第1王子か皇太子かで、皇太子様を選ぶそうです。第1王子では、王妃にはなれないそうです。第1王子を選んだ場合は公爵位を貰い結婚。臣籍降下し国を支え幸せになるそうです。」

※※※※※

エリザベート(ローズマリー):「エドワード許して。ごめんなさい。私には貴方の愛が重かったの。でもそんなに愛してくれる貴方を見捨てられないの。まだ遅くないなら、私が貴方を支えます。一緒に国を建て直しましょう。」

第1王子:「エリザベート(ローズマリー)!君は私を身捨てるのか…。」

エリザベート(ローズマリー):「レイシス…。ごめんなさい。私にはやはりエドワードを見捨てられないの。レイシスなら大丈夫。沢山頑張ったわ。王太子様も王様も、もうレイシスを蔑ろに何てしない筈よ。お母様の体調も良くなった。だから貴方も幸せになって欲しいの。私が手を取れなくてごめんなさい。お願い。許して…。」

※※※※※

けっ。茶番よね。カッコローズマリーじゃ無くて、エリザベートをカッコにしてよ。私がそんなくさくてむず痒い台詞を言う訳が無いじゃない。

「レイシスは健気なエリザベートの姿に感激し、身を引く決心をするそうです。レイシスはエドワードと王妃を助けた功績で、聖国での立場を強くします。王と王太子も反省し、此方もハッピーエンドですね。」

ちょっとローズマリーってば、調子良すぎよ!勝手に成り代わるな!

エリザベートはここにいるわよ!ゲーム通りに進む気は無いけどね。

「頭痛い…。まあローズマリーの頭の可笑しさの再認識はしたわ。後最後の攻略者だけ出ないのね。大神官のユリウスの情報は有るの?」

「ええ。この方が1番厄介かも知れませんね。軽い未来予知。これは多分薄まった前世の記憶です。そしてもう1つ。皇太子様もです。」

え?まさかよね?

エドワードも前世持ちなの?

大神官と皇太子様は、最初の召喚で此方に呼び込まれた魂との事。その後、この世界で何度も転生した。

転生は本来なら記憶は白紙になる。しかし異世界の魂は不安定だった。全てか白紙にはならなかった。しかし転生を繰り返す度に、異世界の記憶は薄まり消え去ってゆく。やがてこの世界にそまり消えてしまう。マリエンヌとローズマリーは、塞がれた遺跡の穴から、此方に来たばかりの魂の様だ。だから記憶がしっかり残っている。

「そしてエリザベート様。貴女も転生者です。しかし皆とは違う。元からこの世界の人間でした。」

え?どう言う事?

「あの召喚事故が起こった時、エリザベート様はやはりフローラ公爵家のお嬢様でした。エドワードとユリウスは、確信は無い様ですが覚えています。だから執着してるんですよ。」

・・・・・。

私は全く覚えてませんが?

いきなりの電撃発表に、私はただ驚きで固まるしか出来なかった。

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