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【城下町編。アカンサス国への旅】
★城下町6日目。急転。神に1番近き者。
しおりを挟む私はタルバを抱えて吹き飛ばされた。壁にぶつかるっ!と目を瞑ったが、何かにフワリと止められる。恐る恐る目を開けるとラスの顔。ラスが私を抱え、レインが前で盾になってくれてた。ホッとする私。壁に直撃してたら怪我をして居ただろう。しかしそんな安心もそこそこに、魔方陣からは凄まじい風が巻き上がり竜巻の様に広がってくる。皆壁に張り付き這いつくばってる。
「ほう。雑魚ばかりかと思ったが、稀に見る粒揃いだ。しかしこの魔方陣は何を呼び出すつもりだったんだ?聖獣か?聖獣は自ら主を選ぶ。召喚等されんぞ?前回も貴様らの魔力は魔神達の界に亀裂を入れた。それをわざわざ修理してやったのに、また同じ事を繰り返した。だから私が出てきたのだ!」
魔方陣で渦巻く暴風が徐々に終息し、陣の中心の人影が徐々に顕になってくる。彼を取り巻く魔力が凄い。ビリビリと肌を焼く感じがする。威圧で立ち上がる事も出来無い。
〈出てきて戴けましたか!聖獣の王よ!私は大神官を司る神に1番近き者。此度の召喚は邪魔をされましたが、生け贄の王太子を含め侵入者の命も全て差し上げます。どうぞ私めを貴方様の主にして下さい。私はこの国の神になりたい!〉
ちょっと何言っちゃってるの?この大神官って馬鹿なの?本人が聖獣は召喚なんてされないし、主は自分で選ぶって言ってるじゃん!つまりこの人は聖獣じゃ無いのよ!しかも大事な事も聞き逃してるの?魔神の界に亀裂を入れたのを、修理してくれたって言ってるじゃ無い!先にお礼を述べなさいよ!魔神が攻めこんで来たら神になる所じゃないでしょ!
「雑魚は黙れ!勘違いも甚だしい!私が神に1番近き者だ!貴様が名乗るな!命等要らんし、聖獣の王でも無い。ましにてや貴様を主に等するか!すまんがそこの聖獣2体よ。コヤツと。そちらに一纏めにした馬鹿者どもを拘束してくれ。おい!間抜けな大神官とやらに教えてやる。お前達の行った召喚は術式から間違っとる。これでは魔力を違う界にぶつけるだけだ。亀裂で済んで良かった。もし穴が開けば、この世界は魔神に滅ぼされてたぞ。可哀想だが魔方陣の中に居た者は、魔神の界に飛ばされた。もう生きてはいまい。骨まで食われとるな。」
こっ怖いよ~。魔獣だけでも怖いのに、魔神なんて耐えられないわ。私はか弱き乙女よ。後は王族に任せて私は遠慮させて戴きたいです~。腰抜け言いなり王をここに連れて来てよ~。
「神に愛されし乙女よ。そう怖がらないで欲しい。私が誰か解らぬか?ならばこの姿ならどうだ?」
こんな男前知らないわよ。って、あ~!!
《神様の膝の上にちょこんと座ってたニャンコじゃ無い?ベタベタ甘えて鬱陶しがられてた猫よね?1番ってそう言う意味なの?貴方雄だったの?まあ神様綺麗すぎて女神様みたいだから、どちらでも構わないのかしら?》
「相変わらずだな。そう言う意味じゃ無い。私は9尾の猫だ。お主の元の世界の2尾の猫又妖怪とは違うぞ。動物が長生きし徳を積むと、稀に尻尾が別れる事が有る。更に尻尾が9本になると魔力を得て神の眷属になれる。キツネが有名だが、全ての動物に可能性は有る。我らは神の1番近くで仕えて居る。あれは甘えてたのでは無い。癒しを与えてたのだ!」
そうね~。モフモフは癒されるからね。
《了解!そう言う事にして置きます!》
「しておくじゃ無い!そう言う事なんだ!私も神もノーマルだ。神が言っとったぞ。閨の教育が良く話題になっとるが、必要なら教会に来いだそうだ。神が直々に伝授したいそうだぞ?神との行為では処女性は失われない。痛くもなく快楽だけだ。幾らでも練習出来る。嫁に来ても良いそうだ。かなり気に入られた様だな。」
《ちょっと!神様までエロいの?あんな美人の神様と何てムリ!顔が近付いただけで鼻血出しちゃいそうよ。でも話題ってまさか覗いてるの?》
「見守ってるんだ!神様を貶すな!」
〈お二方そろそろ本題に戻られては?召喚に関わった教会関係者は、調べて全て牢に入れました。魔方陣は破壊し処分済みです。王に詳細を話し、既に儀式の無効を宣言させました。修行中に当たる子供達は、今王宮のホールに集めて居ます。皆かなりの栄養失調です。炊き出しもしてますが、リョウは治療魔法をお願いします。9尾様は出来ましたら一刻も早くに、魔神界への亀裂を直して戴けたら幸いなのですが…。〉
そうよ!亀裂が心配だわ!
「そうだな。我らのコントの合間に頑張ってくれたのだ。直ぐに直して来よう。乙女よ一緒に来るか?待つ間に神に教えを乞うてこい。」
さ~!皆の治療に行かなきゃ!重傷者は多分お城まで来れないわよね。そちらが先ね!
《私は治療に行くわ!ニャンコ様は亀裂を宜しく!教えはノーサンキューね。ラブラブエッチがしたいからね。私は夢見る乙女なのよ。》
〈〈〈・・・・・。〉〉〉
「ラブラブは誰とでも出来よう?」
〈男性陣はダメね~。乙女心が解らないとモテ無いわよ。リョウの相手は幸せ者ね。〉
《ルリちゃん有り難う!この世界は貞操の価値が軽すぎ!私は私です!一夫多妻?ノーセンキュー!婚前交渉?愛してなきゃ嫌!てな訳で、私は私だけのダーリンをゲットするの。皆様グッバイ!》
私はホール目指して走り出した。
*****
王宮のホールは人でごった返して居た。ホール内には当事者本人だけにして貰い、付添人にはホール外に一時出て貰う。少し高い雛壇の上から皆を治療するイメージをする。このホールに居る人達は皆栄養失調だ。広範囲に鑑定をかけてみて確認済みだ。
《この世界の神に願う。神の僕と語る愚者に惑わされた人々を癒したまへ。》
『ファイド スプレェド ラァプ ジェントリー。』
《 若者達に正しき未来を!》
『オール ヒール アピーズ。ついでにキュア ヒール!渇きを癒して。全てを癒して!』
より広く広範囲に治癒の力が届く事を願う。未来有る子供達の飢えを癒し栄養失調を治して。全ての体内の厄を払って欲しい。願いをこめて魔力を放つ。
私の周りを白い光が包み込み、1度体内に収束すると発光し、徐々に周囲に広がり始めた。
またごっそり魔力が抜けた感じがする。でも重傷者はホールには来れない。私が行かなくちゃ。
〈リョウよ。後はシスル達王族に任せよ。主は少しは魔力の放出の加減をしろ。これはかなりの範囲まで届いてるだろう。治療洩れは確認させ私が行く。暫し休め。毎回倒れてるのか?コントロールを教えねばならぬな。ちと悪いがこれはセクハラでは無いぞ。後で怒るなよ〉
ん?タルバ何?その見かけにその喋り方は似合わないね。ん~。唇に何か冷たい物があたる。ん?私、額の柘榴石にチューしてる?徐々に温かくなり、何かがゆっくりと流れ込んで来た。
〈私は治癒特化だ。レインは守備特化でラスは攻撃特化。上手く集まったな。しかしリョウは主としても学ばねばならんな。私達を上手く使え。全て主がする必要は無い。まあ良い。今は休め。〉
有り難う。眠いよ…。
「確かにリョウは主としても頼りないな。まあ戦いとは無縁な、武器を持つと罪になる様な世界から来たのだから仕方無い。命令も慣れぬのだろう。価値観の違いか。閨の事もしかりだな。良し。暫しリョウを借り受ける。1時間ほどだ。心配は無い。」
〈〈〈9尾様!?〉〉〉
「ひと皮剥いて返す。後は任せたぞ。」
起きたら豪華な天涯付きベッドに寝て居た。何か違和感を感じてソロリと布団を捲る。
いや~!なにこのスケスケ!すっぽんぽんより恥ずかしいわよ!はっ!これがレインの言ってた、着衣の方が刺激的って奴ね!確かにエロい…。
何て考えてる場合じゃ無い!
《ここ何処よ~!元に戻して~!》
・・・・・。え?犯人は貴方なの!?
*****
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