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【お礼参り編。カルミア帝国の思惑。】
■お礼に行こう6日目・夜。エティの為に…。
しおりを挟む宰相さんが戻って来た。叔父さんは外出中との事。少し前に出発してしまい、多分一時間程で目的地に到着する。そちらに伝書を送ったので、暫し待ってくれと言われる。待つ間にどうぞと、サンドイッチ等の軽食を出された。こんな時でもお腹は空くんだよ。つい手が出てしまう自分が厭になるよ。
*****
〈しかしこれは…。当事者が既に居なくとも、帝国の不祥事には間違いないですね。神の神託により召喚される聖女様をも汚す行為です。同意無きは拉致と変わりません。これだけの事が明るみに出なかったのは、一重に拉致の被害者が異世界からの人間で有った事。しかも異世界に残された被害者の家族の記憶が無いのではどうにもなら無い。喚ばれた者も帰れないなら尚の事だな。〉
《・・・・・。》
《宰相さん?これって聖女も同じだって理解出来ます?神が介入したかの違いだけですよ?私は事後に説明され、無理矢理自分を納得させはしましたが、自ら同意何てして居ません。姉と聖獣が改良した魔方陣なら、私はまだ元の世界に戻れるそうです。その理由が解りますか?私の体がまだ正式にこの世界の理に組み込まれて無いからですって!女をバカにしてるの?神様は私にもう元の世界には帰れないと言ったたんです!何故嘘をついたの?姉達に出来て神様が出来ぬ訳が無いじゃ無い!歴代の聖女が直ぐにこの世界に定着したから、私も同様だと思われたのでしょうね!召喚先の国に体の相性の良い相手を用意するとか、絶対に即エッチを狙ってるとしか思えないじゃ無い!これじゃ歴代の聖女の意思が伴うかも疑問ですよ!無理矢理は強姦で犯罪だろ!!》
〈〈・・・・・。〉〉
〈〈・・・・・。〉〉
《私は姉も従姉の事も何もかも覚えて居なかった。でも覚えてても何も出来なかったですよ?私の居た世界には魔法なんて有りません。ドラゴンや剣や魔法何て、夢物語のファンタジーな話だったんです。確かに戦争してた国も有ったけど、私の国は誰もが学校へ行き学べた。職業に恋愛結婚の自由。科学と医療が発展した、本当に平和で平等な世界でした。自らが武器を持ったら犯罪者です。こんな甘い世界で暮らしてた私達が、家族を拐われたのを知っても何も出来やしません。専門家に任せるだけです。ましてや異世界の壁なんて破れません!私だって好きで喚ばれた訳じゃ無い!しかも緊急で喚ばれた訳でも無い!でも私だけなら我慢出来た。なのに女系親族総ざらえってバカにしてるの?まさか両親が死んだのも、召喚が関係した訳じゃ無いわよね?母が喚ばれなかったのはたまたまなの?神様はキチンと管理できない訳?地球の神様もよ!拐われまくりで恥ずかしく無いの?地球はチョロいとバカにされてんじゃ無い?自分の世界で賄えないなら、必要な時に喚んでお礼して元の世界に帰せ!拉致は犯罪だ!しかも集団拉致に強姦教唆だ!神様だからって許されないわよ!!》
悔しい。何でこんなに理不尽な事が起きたんだろう。ラピス様が知ってて放置したとは思えないけど、何故解らなかったの?どうして?神様も万能じゃ無いの?悔しくて涙が溢れ出す。握り締めた拳が痛い。怒りのやり場が無い。酷すぎる…。
悲しい…。許せない…。何とかしてよ…。
フワリとカーバンクル姿のモノクが膝に乗って来た。ハンカチを手渡される。モノク…。ちっちゃいお手てで有り難う。肩に置かれた掌から、暖かい魔力が流れてくる。誰かが私の魔力を押さえてる?
〈リョウ。少しは落ち着きましたか?怒りで魔力が渦巻いて居ました。強すぎる魔力の気は、魔力の無い方々には体に触ります。後ろ向きな思考はリョウらしく無いですよ。神様には直談判に行くのでしょう?突如異界の地に喚ばれた聖女達の全ての気持ちを、多分私達には理解出来ません。でも理不尽な事は理解出来ます。それにこの世界が甘えてしまって居る事も…。でも今は前向きな何時ものリョウらしく進むしか無いのでは?貴女は1人じゃ無い。私達も居るんですから…。〉
レイン…。
《そうよね…。取り乱しちゃってすみません。宰相さん。突然ごめんなさい。自分では平気なつもりだったんだけど、本当は全く平気じゃ無かったみたい。お姉ちゃんに会ったら召喚自体が許せなくなって来た。だって歴代の聖女が究極魔法だっけ?滅びを止める魔法を使った事はないのよね?この世界滅びて無いもんね?なのに何故聖女を呼ぶの?必要な時に喚べよ!考えたらそれが大元だよ。帝国だって聖女召喚ありきで、姉達を召喚したんだから!やはり根源は神様よ!神殿行かなきゃ!》
*****
何だかんだ騒いで居たら、叔父さんが外出先に到着したと連絡が来た。何とビックリ。外出先は以前巡回医療でお邪魔した村だった。ハーブの村だよ。おばちゃん達元気かな?今はミントも種類を増やし、ラベンダーや薬草類も栽培してるそう。ギルドへの納品も増え、ギルドの出張所まで出来たそうだよ。その為ストレチア国からフロックス国へ向かう冒険者も立ち寄り始めた。宿屋やお土産屋も増え人口も増えている。
そう言えばあの村は国境の堺だったよね。だから隣国なのに、叔父さんの所とも親交が有るのかな?
〈叔父上はあの村を気に入ってるんだ。かなり栄えて来てるから、自領の村と姉妹都市契約をしたらしい。最近は黒髪の少女が広めた、タコまん丸焼きが好物らしいぞ。定期的に訪問し自らハーブのお茶等も買い上げとる。黒髪の少女はリョウだろ?聖女様に体を治して貰ったと村人が言ってたそうだ。〉
タコまん丸焼き?あー!タコ入りのお好み焼きモドキの事だよ!でもわざわざ領主様本人が買いに行かなくても良いのでは?あつあつのタコまん丸焼き食べたいのかな?
〈リョウは相変わらずですね。黒髪の少女がお目当てなのでしょう。なら話は早そうですね。厨房をお借りして、本物のたこ焼をご馳走してはどうですか?たこ焼を焼く為の丸い窪みのついた鉄板を、ギルマスわん(まんに何とかならぬか頼んでたでしょう。青のり等もゲットされたんですよね?タコが足りぬなら、ダンジョンのサソリもシーフードも有る筈。その間に私は村に迎えに行って来ます。モノクも手伝ってあげて下さい。〉
えー!私は別に構わないけど、レインが男性だけを転移で迎えに行ってくれるなんて!天変地異の前触れかしら?
〈リョウ?何気に失礼な事考えてますね?貴女が迎えに行けば時間を取られます。村の人々の歓迎に有ってしまうでしょう。だからですよ。お姉様はまだ眠って居る様ですが、何事も早い方が良い結果へと繋がります。僅かな時間も惜しい。人間はお腹が空きます。まだまだ大変ですよ。神の前でお腹を鳴らさぬ様に、タコ焼きを食べ貯めて置きなさい。臨機応変です。〉
お腹空けば鞄から何か出して食べるわよ…。
*****
私とモノクは厨房を借りてタコ焼きを作り始めた。タコ焼きにイカ焼きにエビ焼きにメガスコーピオン入り…。キャベツたっぷりで、タコ入りお好み焼きモドキもね。お好み焼きモドキは、カキやホタテ入りや魔物のお肉入りでも作ったよ。勿論出来立て熱々を、インベントリ内にもインしとこう。大皿に種類毎に並べてたら、かなりの皿数になってしまった。
バタンと扉が開き、レインが優しげな雰囲気の美青年を連れてきた。えー!何だか凄く若いんですけど?今年48才?エティと過ごしたのが30年位前?私が考えたより遅かったんだね。エティが起きてた時間がはっきりしないから、もう少し年上かと思ってた。ブラン王のお兄さんでもOKそうだよ。何て考えてたら、美青年が私を見るなり駆け寄って来た。
〈エティ!と言いたい所ですが、貴女はエティでは有りませんね。見た目はそっくりですが、雰囲気がまるで違います。もしかして彼女の娘さんですか?流石に孫には無理が有りそうです。彼女は使命を果たし幸せになれたのですか?私の元に戻ってきては貰えないのですか?エティの幸せに私が含まれなかった事はとても悲しいです。私が幸せにしたかった。でもエティは元気なのでしょう?私に訃報を伝えに来たならこのまま帰って下さい。私はエティの幸せしか聞きたくは無い。不幸なら知らぬまま墓にまで行きたい。エティに助けられた命です。この命は永遠に彼女だけの物です。〉
お姉ちゃん…。素敵な旦那様だね。この人なら大丈夫。だって今まで待って居てくれたんだよ。私とお姉ちゃんを間違える事もない。でもこれ以上は私達にはもう何も出来やしない。このままならエティと聖獣が魔方陣を墓標に死ぬしかない。エティが子を産むには肉体が耐えきれない。これ以上は神様の領域だ。この人に全てを伝えよう。エティに会って貰えるなら、私が神様に直談判に行こう。少しでも最良な未来に道を繋げたい。
《私はストレチア国で異世界から召喚された聖女です。エティは異世界での私の双子の姉でした。私は何も知らずにこの世界に喚ばれた。でも今なら思える。私が喚ばれたのは必需だったのでしょう。今はこの世界に聖女の力は必要ない。ならば私は姉の幸せをもぎ取りたい。いや、返して貰いたい。姉もお腹の子も聖獣も、誰も欠けさせたく無い。貴方はエティに会ってくれますか?これからのエティの全てを受け入れてくれる度量は有りますか?エティの不幸な未来でも寄り添ってくれる覚悟が有りますか?全ての話を聞き返事を下さい。》
〈そんな事は言われずとも大丈夫だ。お腹の子?誰の子だろうと構わない。エティの幸せが私の幸せだ。全てを受け入れる!話を聞かせてくれ!頼む!私をエティに会わせてくれ!〉
《信じられないでしょうが、エティは貴方の子を身籠って居ます。皆に詳細を聞いて下さい。私はモノクとストレチア国のお城の神殿へ行き、神様と話をしてきます。やはり私を喚んだ国の方が良いでしょう。全ての話を聞き尚心が変わらぬなら、レインにエティの側に連れて行って貰って下さい。私も神との話が終わり次第行きます。レイン?また臨機応変だけど宜しくね。私はタコ焼き食べ食べたし、仕舞ってあるから大丈夫。皆もしっかり食べてね。》
モノクを抱っこして席を立つ。
《皆様。姉の為に宜しくお願い致します。》
私は深く頭を下げ、ストレチア国へ転移した。
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