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【記念日お礼・Thanks to everyone】
フラグだったんじゃない!⑦
しおりを挟む今回の件は、確かにルイスに内緒にしたのが悪かったのでしょう。私にもやはり、ルイスの過去を知りたくなかった気持ちがあったのでしょう。大神殿の腐敗の撤廃。帝国の開国。それらに関わった私とルイス。人の口に戸はたてられません。私の出自やルイスの大神殿時代。それらが何故か、公然の秘密となってしまいました。確かに隠すことではないのでしょう。しかし周囲が落ち着くまで、とにかく大変だったのです。沢山の噂が囁かれました。食堂で、お客様に心配されてしまう位だったのです。特にルイスに関しては、私に忠告という形で密告の様なものが集中したのです。
とにかく酷い人間だから、結婚なんてしない方がよい。女性の敵だ。あなたは騙されている。その様な話が、女性からも男性からもです。正直に言いますと、私はルイスの大神殿時代のことを知っています。以前ライラから、大神殿でのルイスとの出会いや交友について。以前のルイスの大神殿での立ち位置。その苦労についても聞いていたのです。ライラも私に密告した訳ではなく、私も詮索した訳ではありません。たまたまお茶会中に、そういうお話になったのです。もちろん、女性遍歴などは知りませんよ。プライバシーは侵害したく有りません。だからこそ!ルイスが言いたくないなら聞きませんでした。ルイスの良心の呵責にならぬ様にと、気づく前に一つでも憂いを晴らしてあげたかった。ララさんはルイスにお礼を伝えたかった。いつかはルイスも真実をしるべき時が来る。それは私がお膳立てすべきことではありません。だから私からも言わなかったのです。
だからこそです!
帝国に泊まり込んだ際にも、知り合いの治療のためだと伝えました。確かにララさんの名は出しませんでしたが、ルイスが直接私に聞いてくれたなら、キチンと話をするつもりだったのです。
ルイスが聞かないから私も言わない。ただそれだけだったのです。
「ララさんの治療には、私も魔力を使いきる位だったの。ポーションがぶ飲みは不味いから、帝国に泊まり込みになった。女将さんに椿姫に菊姫、椿姫のご両親からも連絡して貰った。王宮からは、第二王子様がわざわざ伝えに行ったそうね」
ララさんの治療法は、神通力を持つ三人にそれぞれ、患部にその力を注いで貰いました。まずは体外から正確な患部の位置を把握し、奥へと続く隙間の有無を探したのです。残念ながら片方は、完璧に癒着していました。しかしもう片方には、針の先ほどにも満たない細さの空洞があったのです。その空間に向け、私の治癒の力を注いでみました。しかし穴が細すぎて途中で詰まってしまいまうのです。そこで出力を最低にした神打力で、器官を傷つけない様にゆっくりと、穴を押し続けたのです。さらにその隙間を、神気砲で少しずつ満たしてゆきました。細いながらも、どうにか道を作ったのです。全ての神通力の源は空気の様なもの。私は神気砲に治癒の力を同調させ、患部の奥へ奥へと送り続けました。
やがて神眼力の術者が、卵巣から詰まっていたものが流れ出すのを確認しました。それと共に突然、排卵が開始したのです。この治療にまる二日かかりました。私はスキルによる治癒の力に、魔力をも一緒に練り込み送り続けたのです。この方がより効果が得られると、グレイに教えられたからです。
『アリーお疲れ様。二日は寝てよ。僕の癒しだけでは、精神的な疲労までは無理だからね。後は僕に任せて』
『グレイは大丈夫?』
グレイもあちこちにと、寝る間もおしみ飛び回ってくれたのです。
『うん。第二王子が僕の専任侍従だからね。王さまがビシバシ使ってと、早々に送ってきてくれたよ』
第二王子様ごめんなさい。ご愁傷さまです……。ダメ……もう眠い……。
私はそれから三日も寝てしまいました。またまた私の寝てる間に、グレイや皆が奔走してくれたのです。
ララさんは帝国へと呼び寄せられた伯爵様と、椿姫の国でハネムーンを兼ね療養しました。その間にリズちゃんはライラのお宅で、貴族としてのマナーや教養を学んだのです。
あ!もしかしなくても赤ちゃんは、ハネムーンベィビーですね。
またララさん親子は一時的に、私のお母さんの実家の養子となりました。貴族家の母子として、伯爵様と結婚したのです。大神殿での粛正では、お母さんの実家も関係者です。法的に裁きは受けました。しかし残された人々のためにも何かしたいと、ボランティアや独立したい方々の後見人などを引き受けているそうです。ララさんは一時とはいえ、私の従姉妹になったのです。リズちゃんは私の姪になりますね。
伯爵様とララさんは既に、治療開始前に結婚していました。お二人は治療の成功に驚いていましたが、本当に喜んでくれました。もちろん、リズちゃんもです。
「ルイス?今回は私がキチンと伝えなかったからなの?だから執拗に詮索したの?違うわよね?なにか言いたい事があるの?ならキチンと話して欲しい。今回のことも、直接聞いてくれたら話したわよ?でも私からは知らせない方が、良いと思ったから黙っていただけ。もし私から聞いていたら、ショックを受け無かった?そしてルイスは聞かなかった。それなのに……」
ルイスは私には聞かずに、孤児院やお店のお客様などに探りを入れていたのです。しかも私が浮気してるかもしれないと、ぼやいていたそうなのです。
「…………」
「ルイス?言いたいことは、声に出してハッキリと話して!」
「そっそれは!……っ。アリーにっ!隙が……あるの……が……」
私に隙が?
「くっ……なぜ私が知らない黒子の場所まで!しかも舐められたと!更には何度も危険を感じたのですか?私は神殿騎士たちと、フォードのことしか知りませんよ!何度もとは?私もまだ見ていないのです!更には無断外泊です。疑心暗鬼にもなりますよ!」
静まり返る室内。
ララさんたちが帰った後で良かった。大の大人が恥ずかしすぎです。
ルイス?確かに見てはいませんよね?見せていませんから!でも他の人々にも、見せた訳ではないのです。あれは不可抗力でした。
「見せてはいないけど……毎晩それ以上のことをしてるじゃない。あれで見せる以下なの?なら結婚するのが正直怖いです!私はもう、ルイスに付き合えません。エロすぎです!」
「「「どの位なんだ?」」」
私の口からは言えません!
「とにかくこれにて一件落着ね。ルイスが最近余りにも理不尽すぎるから、この件を皆で話し合う予定だったの。悪く言えば吊し上げです。ですから反撃は幾らでも受け付けますよ」
「反撃はございません。申し訳ございません……」
少し苛めすぎたかな?でも話すなら、しっかりと話し合わないとダメ。私はお茶を淹れ直し、皆にすすめます。
「アリー?ミルクプリンは?」
「ルイスってある意味、傍若無人だよね。ここでそれいう?アリーには、甘党か食い意地がはってると思われだけだよ。でも違うんだよね?キチンと言わなきゃ、アリーには伝わらないよ」
グレイの言う通りです。場の雰囲気を読んで下さい。
「私もアリーの特製が食べたいのです」
まったく意味がわかりません。
「ルイス……お前女々しいぞ……」
ザックの言う通りです。
「「確かにルイスは女々しいな。男ならドンと構えたらどうだ?だから女顔とか言われるんだ。嫉妬は女性の専売特許だぞ」」
お兄ちゃんズ?それは女性に失礼ですよ!でも確かに美人さんだし、女装も似合いそうです。
「…………」
さっ寒いです。冷気の様なものが発生しています。発生元は……ルイスです。あ!まさか!
「ルイス、ストップ!もしかして女々しいの部分に反応してるの?女顔とか美人さんって言われたくないの?ララさんの時も、オカマの部分に反応したの?まさかそれが無ければ何もせず、暴漢たちに言われたまま、部屋から出ていったなんてことはないわよね?そこまで冷血だったなんてことは……」
「…………」
なんで無言なのー!?
「アリーは聞きませんでした。ですから私も言いませんでした。利を得た方がいる。誰も損をしていない。それで良いのではないのでしょうか?」
揚げ足を取ったな。ルイスめ……。
まあ今回は仕方ないですね。
さて。リーダーと魔法使いに頼むという、大きな宝箱にはなにが入っていたのでしょう。小さな宝箱もまだあります。ささっと開いてしまいましょう。
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