【完】専属料理人なのに、料理しかしないと追い出されました。

桜 鴬

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【特別編・What day is today】

night with a full moon【画像つき】

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 日中はまだまだ熱いです。しかし夜には虫も鳴き始め、秋も近づく今日この頃。ころポックル亭のメニューにも、秋の食材がお目見えしはじめています。

 カボチャにサツマイモの根菜類。栗や銀杏や胡桃の種子類。葡萄に柿や梨などの果実類。もちろん茸も盛り沢山の季節になりますね。通年出回ってはいますが、人参に玉葱にジャガイモに里芋なども、丁度今頃が旬なんですよ。

 運動の秋に読書の秋。どれも素敵ですが、やはり秋は美味しい食材がてんこ盛りです。つまりイチオシは!!

『食欲の秋!!』これに尽きるでしょう。秋の食材はお料理にも、スイーツにもあうのです。帝国の女将さんからも色々お料理を教わりました。もちろん私も、販売以外にも色々とアドバイスをしています。帝国のころポックル亭支店。ころポックル屋も、大盛況しているそうです。帝国の景気もかなり上向きになっています。

 そしてまたまた帝国より、とある情報を手に入れて来ました。


 【十五夜。お月見】

 収穫したお米で『お団子』を作る。畑からは『里芋や枝豆』木からの恵みの『栗』これらとお神酒をススキ(稲穂の代わり)御供えし、みなで月を愛で豊穣を感謝する。

 帝国の女将さんの料亭では、中庭の大きな池で、毎年お月見会を開いています。それにお呼ばれしたのです。

 縁側から大きな綺麗な月を眺める。池の水面に写りこむ月を鑑賞する。更には丸い盃にお神酒を注ぎ、そこに月を写して愛で飲む。盃に移したお月さまを、祝い酒と共に飲んでしまう。中々風情のある楽しみ方です。

 お米で作られたというお酒も美味しくて、ついつい飲み過ぎてしまったのは内緒です。

 店内をお供えや麦穂を飾ります。我国の主食は小麦です。稲穂の代わりのススキが無かったので、麦の穂を飾りました。さあ。ころポックル亭でも、お月見を楽しんで貰いましょう!

*****


 今日のころポックル亭のメニューの一つは、松茸をメインにした帝国風定食。もちろん松茸はダンジョン産です。帝国では高級料理だそうですよ。ダンジョン様々です。

 もう一つが栗のクリームパスタをメインにしたセットです。こちらは森で採取したものです。ホクホクとした栗が、チーズとクリームに絡み最高です。

 デザートには、お月見団子がつきます。白いコロリとしたお団子が積まれ、天辺に一つだけ黄色い団子がのります。これはカボチャ味です。

 そしてお月見にはウサギさん。月を良く見てみましょう。ウサギさんが、ペッタンコと餅つきをしている様に見えます。そのイメージを考慮し、店員はウサギの耳つきでお仕事です。もちろんミリィちゃんは別ですよ。

*****

アリーは本当にイベント好きなのですね。まあ見た感じでは、沢山の人と関わりたいのでしょう。美味しいお料理にスイーツ。そして夜はお酒も。プラスお祭りが絡めば最強です。アリーはそれが嬉しいのでしょうね。それらが人々の笑顔に繋がるのですから……。

しかしこの耳はなんとかなりませんかね?服装は地味目に抑えて貰いましたが、耳で台なしです。しかも垂れ耳ですよ?トホホです。兄弟子たちと、仕事に行っているザックが憎いです。

*****

「ライラさーん!お迎えが来ました~。そろそろ孤児院へ行く時間なのです~。主役がいないと始まらないのです~」


「ミリィちゃん有り難う。今行くわ。ではアリーとルイスはまた後からね。次回は是非、主役のかぐや姫をお願いね。あ!ルイスには帝役をあげるわ。後ね。今回の主役はグレイよ?」

 今日は昼から孤児院でも、お月見会を開催しています。昨日は毎月恒例のお料理教室でした。そのさいに作るお菓子を、お月見風にしたのです。お供えもバッチリです。
 午前中はいつもの様にバザーをし、午後からはお月見会。子供たちがメインなので、月はハリボテで作りました。夕方に月が出たころ、ウサギの私たちがクッキーを配りに行きお開きになります。
 途中にライラたちボランティアによる劇もあります。今回の演目は『銀ぎつね』です。聖獣になり自在に変身できる様になったグレイが、銀ぎつね役を引き受けてくれたのです。
 販売用のお菓子は直ぐに完売したそうです。嬉しい悲鳴ですね。みんな楽しんでくれているみたいで、企画をプロデュースした私も嬉しい限りです。

 なにやらブツブツとボヤキが聞こえてきます。どうやらルイスが、帝役は嫌だの、ウサギ耳がどうのと呟いています。

「でもルイス?かぐや姫は月の国のお姫様。地上では結ばれないのよ?」

「私には最終兵器のホーリーシールドソードがあります。フォードもあわせれば八本。ザイルもようやく一本具現させたそうです。九本もあれば一点集中で月の使者など消え去るでしょう。弓矢なんて生ぬるい武器を使うのがいけないのです!グレイとカーバンクルたちもいます。いざとなれば神をしばいてでも……」

 ルイスって…………ある意味危険人物よね……。

「ルイスコワーい。アリーがかぐや姫なら僕は月の使者ね。そのまま神さまの所にとんずらしちゃおう。絶対に安心だよ」

 「そうね。でもかぐや姫の気持ちが一番よね。私は今が一番楽しいわ。みんなと過ごせて最高よ。グレイ大好き。主役頑張ってね」

「はーい」

*****

「アリーまた後でね。松茸定食をご馳走さま。帝国のお料理は、あっさりしているのに腹持ちが良いわね。沢山食べたい食欲の秋には最高だわ。ダイエットにも良いんじゃないかしら?売り切り頑張って」

 ダイエットですか?確かに帝国には太めの方はいないですね。景気のせいかと思っていましたが、ローカロリーな食材が多いのかもしれません。

「はい。ライラも頑張って下さいね。後から合流します」

 さてそろそろ食堂も切り上げないといけませんね。ラスト売り切りますよ!


 (…………ルイス?もしかしなくてもまたですか?)


 (アリー師匠……間違いなくまたなのです。ここは人のいない内にすますべきなのです!)


 (アリーはまたグレイだけに……ブツブツ……私には……)

 はぁ……その恨みがましい視線は止めて下さい。仕方ないですね。もう……。

(ルイス?今晩の晩酌には、特別なお酒をあけてあげる。純米大吟醸ですって。お月見会のお土産よ。女将さんに貰ったの。大切な人と飲みなさいって)

(大切な人ですか?)

(そうでしょ?)

(大切は大好き以上ですか?)

 ……くどいな……でも拗らせると夜が怖いし……。

(みんな大好きだよ。ルイスは特別な大好きね!だからお酒を楽しみにしていて!)

(私もアリーが特別で大好きです。では今は我慢します。夜を楽しみにしています)

 ふぅ。良かった。

(あ!アリー。ウサ耳は取らないで下さいね。大人のお月見も、そのままで続行ですよ。外したらお仕置きですからね!)

 (…………。先に酔った方が勝ちかしら?)

 お仕置きはどうなったのか?それを知るのは、月のウサギさんだけかもしれません……。






 
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