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【本編】交換留学編。
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しおりを挟む神の審判でいきなり婚姻となった私とザイールですが、半年後の結婚式までは、婚約者として過ごすこととなりました。
「フランシス? どうかなさったのですか? 」
私はお布団の中をゴソゴソと探っている。……ザイール……起きてしまったの?起こしてしまったのかしら?
「ごめんなさい。起こしてしまったかしら? ちょっと探し物を……」
パンツがないの! さすがにこのままでは、お布団から出られないじゃない。ガウンは遠いし……ザイルってば、なんであんなに遠くに投げるのよ……
「もしかしてこれ? 」
あー! 私のパンツー!
「もう! 返して! やだ! ヒラヒラさせないでー」
恥ずかし過ぎて顔から火が出そうよ。
「これはもうはけないよ」
「わかってるわよ! でもザイルがガウンをあんなに遠くに投げちゃうから……」
さすがにいつもは脱いだものははかないわよ! でもこのまま布団を出るよりマシじゃない……
「……恥ずかしがって可愛らしいですね。まだ慣れませんか? フランはそのままの姿が一番綺麗です。二人だけの閨では、ガウンやパンツなどの、不粋なもので隠す必要はありません」
ザッザイル……まさかそのためにあんなに遠くにガウンを投げたの?
「しかしフランのお陰で目が覚めました。しかしまだ起き出すには早いです。後でお風呂に入れてあげますから……」
ザイルの腕が私をとらえる。スッポリと腕に包まれ、その温もりになんだか眠く……
「やぁんっ! アッ……ンゥゥ……」
「寝かせませんよ。明日からはしばらく離ればなれなのです。愛するフランを補充しなくては……」
もう! でも私も嫌ではないの。だってザイルを愛しているもの。
「たくさん私を補充して。もちろん私も、愛するザイルをたくさん補充したいわ……」
「フラン! ならばご希望に答えなければ! たくさん補充して差し上げます! 」
結果……朝まで寝かせて貰えませんでした。私は愛を補充して貰いたかったの! 気持ち的なものよ! 何度もしてとは言ってないわよ!普通こんなになんどもいたすものなの?
言葉は選ばなくちゃダメね……
目を覚ますと体がさっぱりしている。ザイル?
「フラン! 起きましたか? おはようございます。制服が届いています。着替えてから朝食にしますか? もちろんそのままでも構いませんよ? 」
「着替えます! お風呂に入れてくれたのね。ありがとう」
一応お礼は言うけど……気絶してわからないくらいするのってどうなのよ!ついついジト目でザイルを見てしまう。
「フッフラン……そんな目で見ないでください。おねだりされたのが嬉しくて、ついつい我慢が出来ず……」
「おねだりなんてしていません! 」
「え? ですがたくさん補充してと……なので頑張りましたよ? 」
「物理で補充してという意味ではなかったの。ザイルの気持ちを補充して欲しかったのよ。でも男性は仕方がないのよね? それは私も勉強したわ。でもほどほどにして欲しいの。気絶してお風呂に入れて貰ったのも、わからないくらい激しいのは嫌だわ」
私は項垂れているザイルに抱きつき、そっと抱き締めた。
「フッフラン! 」
……やだ……でもこれは私が悪いわね。
「ごめんなさい。さすがにこの姿で抱きついた私が悪いわね。でもさすがにもう無理よ。着替えてくるわ。ではまたね。チュッ」
「フラン……これでは生殺しですよ……」
もう知りません! ガウンを遠くに投げたのがいけないのです! 二人の寝室に続く私の部屋に行き、姿見の前に掛かっている制服を手に取る。これは悪魔国の貴族学園の制服。
私は現在立太子したザイールと婚姻し、王太子妃として悪魔国のお城に住んでいる。しかし半年後の婚姻式までは、婚約者として過ごすこととなった。なぜなら国民に私という未来の王妃を認めさせるためと、ザイールの立太子としての立ち位置を固めるためだといいます。私たちのことについてですが、悪魔国の現王はしっかりと国を纏めあげ、貴族にも大きな反発は出ていないと言われます。しかしやはり一筋縄ではいかないようなのです。影ではハーフのザイールを貶め、天使族である私を認めないものもいるのです。それらは私とザイールが頑張り、皆に認めさせねばなりません。
これから誕生する子供たちのためにも! 友好のために交流する両国の人たちのためにもです。
実は今日から両国で、一年間の交換留学が行われるのです。お互いの国から30名づつ、互いの国の学園に通うのです。私はその纏め役として婚姻式までですが、監督生として学園に通います。今回交換留学に参加する生徒たちは、高位貴族の三男以下と、家を出て嫁ぐ予定の女性たち。つまり学園内でのお相手探しも兼ねています。もちろんこのことは告知されています。皆さん和平のためにと、理解して参加されているのです。
しかし!恋愛は互いの気持ちが通じたら! つまり政略結婚ではないのです。高位貴族では政略結婚が当たり前。私もそうでしたから。しかしこの留学では自由恋愛ができる。たしかに国は違いますが、好きになった相手と婚姻できる。この誘惑に両国では、参加申し込みが殺到したそうです。
真新しい制服に身をつつみ、朝食が用意されているリビングに続くドアを開きます。ザイールはもちろん学園には通いません。変わりに王になるための勉強をするそうです。
「フラン……可愛すぎます……他の輩に見せたら減りそうですね。虫もワラワラわきそうです。退治するためにも、私も学園に行かねば……」
こら! 虫なんかわかないわよ!
「大丈夫よ。悪魔族には私は貧相で魅力がないのでしょ? ザイルは帝王学をしっかり学ばなきゃダメじゃない」
「帝王学なんてすでに修得済みです。公爵家で学ばされていました。なにせグランデ王子があれでしたからね。それに魅力がないなんて言わないでください! フランは私の女神です。貧相ではありません。感度も良くて最高です! デカいだけの下品な女と比べるなんて! 慎ましく上品なフランが、私の腕の中で乱れる姿……」
「ストーップ! お願いだからそれ以上は言わないで……恥ずかしくていたたまれなくなるわ。でもザイル? 勉強は大切よ。学園に行きたいと、無理を言ってはダメよ? 」
「…………」
いまいち納得していない様なザイルを無視して朝食を戴く。ついてこようとするザイルを執務室に押し込み、裏門に待機している馬車に乗り込んだ。
ちなみに私に護衛は付いていない。通常なら王太子の婚約者には、専任の護衛がつく。しかし婚姻式までの半年間、学園の寮住まいになるため、護衛はつけられない。学園のセキュリティは万全。だから大丈夫とのこと。
学園の門を潜り抜け、学舎の前に到着する。学生寮はすぐ横に見える。荷物はすでに運び込まれ、整理整頓もされているはず。
「「「フランシス様ー! 」」」
学舎の中から複数の女性の声が聞こえてくる。この声は!
「あなたたち!」
私が学園時代のお友だち……本来なら18歳まで通う学園だけど、私は王妃教育のために、学園をスキップして卒業している。
「来ちゃいましたー。ご婚姻おめでとうございます。ザイール様で良かったです。幸せですか? 」
「幸せに決まってるわよ」
「そうよ。愛されオーラが駄々漏れじゃないの。それにお胸が……」
ジッと私の胸を眺める三人娘。
「こら! どこを見ているの! 」
「愛されると大きくなるんですよ! フランシス様のお胸はとても美乳なので、大きさが増せば敵なしです! 」
「ザイール様も念願が叶いましたね。パーティーでパートナーをつとめながら、鼻の下伸ばして胸元を見つめてましたから! 」
「そうそう。婚約者がいるからと、己を律していらしたけど、周囲にはバレバレよ。視線が常にフランシス様に固定されているんだもの。でも悪魔国の王子様とはビックリしたわー。しかも立太子するなんて! 」
「「「でも納得! フランシス様を手に入れるためね! 」」」
相変わらず賑やかね。でも楽しくて憎めないわ。私は三人に手を引かれ、学舎内部の大講堂に到着した。
大講堂では一年間のカリキュラムを伝えられ、簡単な歓迎会が行われた。その後悪魔族の生徒たちが先に解散し、残った天使族の生徒たちは男女に別れ、それぞれの寮の部屋へと向かった。
明日からは授業が始まります。
交流パーティーもね。
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