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【本編】交換留学編。
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しおりを挟むはあ……まさか早速のお出ましとか……これって悪魔国でも変わらないのね。
「ちょっと! グランデ様から、ザイール様にくら替えした淫乱女ってあなたなの? なにか慎ましい天使族よ!悪魔族より淫乱じゃない! 」
慎ましいですか?ザイルに散々愛されて、慎ましさなんて言っていられませんよ?だってあんなことやこんなことまで……さらには私からも……きゃあ恥ずかしすぎます……
……思い出すだけで赤面してしまいそうです。
「そうよ! しかも最上階の部屋を使うなんて生意気よ! 公爵令嬢である、イライゼ様さえ使わせて貰えないのに! 」
たしか最上階の部屋は、王族専用だと聞いています。公爵令嬢では王族ではありませんよね?例外は王族の婚約者とのこと。今の対外的な私の立場です。先々はザイールの妃。つまりは未来の王太子妃。先々は王妃となり、間違いなく悪魔国の、王族の仲間入りを果たすのですから。
実際は私はすでに、神の審判で婚姻をし、悪魔国の王族の仲間入りをしています。まあ婚姻をしていなくとも、これでも天使国の王族の一員です。
「はあ……それで私にどうして欲しいのですか? 私は天使国と悪魔国の、交換留学の監督生として、婚姻式までの、短い時間しか学園にはいません。そんな私になにを求めているのですか? 」
部屋を譲れとでも言うのかしら?それともザイールの婚約者を下りろとか?部屋は構わないけど、ザイルは渡しません!
「ザイール様と婚約を解消しなさい! あなたにはグランデ王子がいるでしょう? 辺境まで追いかけて行きなさいな」
グランデ王子には下界おちの処分が下されました。しかし対外的にはロゼッタとともに、辺境の地に幽閉されたことになっているのです。
「グランデもと王子には、運命の女性であるロゼッタさんがいらっしゃいます。私はお呼びではありません。私の運命はザイールです。ザイルも私を運命だと言い、毎日愛を囁いてくださり、優しく抱き締めて下さいますわ」
私の惚気ともとれる言葉に、顔を真っ赤にし拳を握りしめる女性たち。
「なによ! 傷もののくせに! 私はザイール様が天使国へ行くまでは、一番お側にいたのです! グランデ王子が廃嫡されたからと、すぐにザイール王子に取り入るあなたとは違います 」
「取り入ってなんていませんわ。あなたも公爵令嬢。ならば政略結婚の意味くらい理解できますよね? 」
「なによ! イライゼ様をバカにするつもりなの! 」
バカにしてなんていません。私は当たり前のことを言ったのみです。
「あなたさえ居なければ……私は王太子様の婚約者になれたのに! 」
「あなたは王太子妃になりたかったの? ではザイールが好きなわけではないのね? 」
「当たり前よ! 誰があんなハーフなんて好きになるものですか! 私は王子妃になりたかったのよ! 発言力のある王家の一員になりたかったの。でも王子はグランデ王子しかいなかった。天使のくせに! 婚約者のあなたが憎かったのよ…… 」
イライゼさんが泣き出してしまう。泣きながら嗚咽を漏らしている。彼女は外交の様な仕事がしたかったそう。しかし悪魔国では、女性が仕事をすることを嫌う傾向にある。特に高位貴族では、女性は嫁いで夫に尽くすだけ。後継を産むまでは、屋敷に監禁も当たり前。とくに悪魔族は性に奔放なため、監禁の比率が高まるという。浮気されて夫と違う血を混ぜられても困る。でもこれは天使国でも同じ感じよ。さすがに監禁はないけど……女性にも男性とは違う仕事があるしね。
しかし王家の一員ならば、他国との親交を深めるため、外交の様な仕事を任される。女性の場合は主に男性王族のパートナーとして、他国との親善パーティーに出席する。または他国から招きもてなしたりもする。これらも立派な外交よね。
「天使国でもやはり女性が働く場所は少ないわ。しかも外交の仕事となると、王族くらいしかしないわね。でも天使国と悪魔国は友好を結んだの。往き来も増える。公爵令嬢ならば、率先して友好の場に出られるのでは? 」
「私は……王子妃に……」
「悪いけどあなたにザイルは渡さない。私はザイルを愛しているわ。政略的婚約であったグランデもと王子は、私が寄り添い支えることを拒んだ。政略結婚の意味を理解できない彼とは、親愛の情すら育めなかった。ザイルは私を愛し続けてくれた。私はザイルが天使だろうが悪魔だろうが構わないの! あなたは天使を下に見ている。さらにはザイルをハーフだと貶めているわ。ザイルはザイルよ。ハーフだなんて関係ないわ。私の唯一無二の運命の人なの」
「イライゼ様……」
一緒に私にくってかかっていた女性が、イライゼさんを慰めている。少し言いすぎたかしら?でも普通なら不敬罪よ?天使国の王女に対してとしても、悪魔国の王太子様の婚約者に対してもね。でも令嬢がそんなに大声を出して泣かないで欲しい。私が苛めたみたいじゃないの。
「ふん! わかりましたわ! ハーフのザイール様など要りませんわ! あんな優しいだけの王太子様なんて、好きでもありませんもの! 私は培ってきた知識を悪魔国のお役に立てたかっただけなんだから! 」
「イライゼ様! 」
イライゼ様とやらは、突如顔を上げふんぞり返り踵を返す。令嬢らしからぬドスドスとした足音を立てながら、あっという間に消え去った。
「すみません。イライゼ様はお父様に王太子妃になれと厳しく教育されたのです。なのに学園を卒業したら伯爵家の長男に嫁げと、急に婚約話をすすめられてしまい……その伯爵家は嫁を一切外に出さず、子を産む道具としてしか見ていない様な家なのです」
もう一人の女性が話しきると頭を下げ、慌ててイライゼさんを追いかけて行く。
イライゼさんと言えば、パープル公爵家のご令嬢よね。たしかあそこは天使国との友好を賛成していたはず。二か国合同婚約披露会にも参加していた。なのに娘は天使を下にみてハーフを貶める?ううん違うと思いたい。きっと不本意な結婚に、意地を張っているのでしょう。
たしかに監禁は嫌だわ。それにきっと公爵は、私がザイールの婚約者に収まったから、急遽イライゼさんき他の婚約をすすめた。グランデもと王子と私の婚約がなされる前も、各公爵家で妃の座を争っていたという。しかし私に決まったらピタリと収まった。
それは私が天使国の王女だったから……
友好を結ぼうとしている時に、自国内で妃の座を争っているのは得策ではない。しかし公爵ならば、グランデもと王子が王の子ではないと知っていたはず。そしてザイールが王の子であることも……
だからザイールに目をつけた。グランデもと王子が失脚すれば、ザイールが王になるから……まさかザイールが私を求めるとは思わなかったのだろう。しかもザイールはハーフ。その体には、天使族の王家の血も流れている。ならば天使国から妃を迎え、その繋がりをさらに強める必要はない。それより悪魔族の血を濃くするためにも、妃は悪魔族から求めると考えたのかもしれない。それでイライゼさんを……
うーん考えていたらなんだか寒くなって来たわね。早くお部屋に入ってお風呂に入ろうっと。部屋の鍵にカードキーをかざす。そのまま部屋に入ろうとすると、後ろから抱きつかれ部屋に押し込められる。
誰が? 最上階はとくにセキュリティは万全だと聞いているのに!
「まったく……女性でも最上階に通したら駄目ではありませんか……警備員には処分が必要ですね。もちろん私は別ですよ。ねえ?フランシス? 」
なぜここにいるの……
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