前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

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1章

14話:捜索

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 「黒髪の長い子ね、勇者様じゃなくて?」
 「ああ、二月以上前に見かけたりはしなかった?」
 「見かけてないね~」

 情報収集の為に街を回ること数時間、手掛かりが掴めずにいた。

 「クソ……」

 あいつがここに来たのは間違いないんだ、せめてその手掛かりを……

 「次は飲食店を一個ずつ潰していけばいくか……」

 流石に飲み食いしなければ生活できない、どこかの飲食店には立ち寄ったはずだ。

 「すまないがちょっといいか?」
 「あら勇者様かい」
 
 寄ったのはちょっと良さげなレストランのような場所だ、勇者だと割引してくれるからか何人かはここで食べているようだ。

 「俺達がこっちに来る前に黒髪の凄い美人な奴とか見かけなかったか?」
 「黒髪の美人……あの雪ちゃんって子じゃなくてかい?」
 「いやもっとスタイルのいい女だ、そうだな……可愛いよりも美人よりな奴、当然可愛いいんだが」
 「そうだね~雪ちゃんみたいな黒髪でもっと可愛い子……そんな子は見てないわね~」

 流石にここには来ていないか……まだ他にも店はあるし気を取り直して聞き込みだな。

 「いや待って、ちょっと旦那呼んでくるわ」
 「あ、はい」

 しばらくすると旦那がこちらにやって来る。

 「おう兄ちゃんどうしたんだ?」
 「あんたがとびっきりの美人の話していたじゃないか、あれはいつだったかしら?」
 「ああ~ありゃ三か月前の話よ、街はずれの飲み屋に行った時に見かけたんだよ~」
 「街はずれの飲み屋?」
 「ああ、週末にやってる飲み屋でさ、席も少なく満員になったら入れないんだがあそこに運よく入れたらいたんだよ~」
 「それはどこだ!」

 三か月前、ならまだ出入りしている可能性がある。

 「おう、そんな慌てんなって」

 旦那は場所について口頭で説明する、この世界は紙というのが貴重な物で一般にはそこまで流通していない。

 「西門の前の左に木々が広がる場所があってな、そっちに向かうと見えるはずだ」
 「了解」
 「ただ週末はやっていないしマスターは不在なことがほとんどだ、兄ちゃんの探してる黒髪美人はマスターとよく話をしていたはずだからな」

 となると行くのは週末だな、二日後に向かうか。


 ◇


 城に帰還し夜の食事を城で早速クラスメイトに絡まれた、菱田だ。

 「よう神山~」
 「菱田か……何の用だ?」
 「こないだの決着つけようじゃねぇか!」
 「面倒だわ」

 なんで今更こんなのとやらないといけないんだか……取るにも足らん。

 「あっ!てめぇ舐めたことを……」
 「今お疲れでね~気が向いたらな~」
 「いつまでもそんなんじゃ困るんだよね」

 と間を割って入ってきたのは嶋田だ。

 「なんだ?」
 「二日後迷宮に行く、君も当然来てもらう」

 二日後だ?
 無理ですはい。

 「二日後はちょっときついな……」
 「そんなこと言ってまたサボる気だろう、今日も街をふらふらしていたようだしいつまでもそんなんだと困る」
 「そうは言っても俺にも事情があるんだなこれが~」

 迷宮攻略なんざやってる暇はない。

 「なぁ嶋田そんな奴わざわざ入れる必要ないんじゃないか?」
 「橋本?」
 「この一月半俺達はこいつ抜きでやったんだ、参加させる必要なんてないだろ?」
 「ハハッ気が合うな橋本~それでいいんじゃねぇの~」

 この忌々しい男もたまにはいいこと言ってくれる。

 「それは流石に……」
 「こいつに自分の立場をわからせる必要があるだろ」
 「立場ね~」
 「いつまでもそんな余裕でいれると思うなよ?俺達は皆この一月半で強くなっている」
 「そうか~それは楽しみだね~」

 せいぜい五千前後のステータスで何を言っているんだか……

 橋本隆司
レベル:70
種族:人間(ヒューム)
職業:戦士
攻撃:5000
防御:5500
魔法攻撃:5000
魔法防御:5500
素早さ:5000
魔力:5000
ギフト:身体強化、成長速度UP、戦士適性
異能:粘着床(B)
称号:中流戦士

 まぁ前よりはまともになったようだがまだまだだな。

 
 ◇


 夜になり月島と杉原の寝る部屋へと向かう。

 「よっ」
 「「待ってたよ~」」
 「サウンドアウト!」

 まずは音をシャットアウトする魔法を発動する。

 「電磁障壁!」

 そして盗聴の恐れもあるのでそれらも全て遮断する。

 「これでいいな、さっきはすまなかったな~」
 「ううん、事情が色々あるのはわかってるから」

 さっきの食堂での態度だがこの二人も流石にいい顔はしてなかったからな。

 「それでこんな念入りな事したってのは色々話してくれるってことだよね?」
 「ああ」
 「それもだけど音も遮断されたってことは私と美里ちゃん今から周平君に食べられるんじゃ……」
 「あ、確かに~よし私達を食べろ~」

 おいおい食べろってな……いや美味しいこと間違いないんだが……

 「ハハッ、んなことバレたらまた命狙われちまうぜ~」
 「フフッ、私は別に構わないわよ~」
 「私も……その周平君なら……」

 余裕な表情で言う杉原と顔を赤くする月島、そんな顔を赤くして言われるとこっちも照れちまう。

 「いやいや、今はそんな話をしにきたんじゃないぜ~」
 「はいはい、また周平君に振られちゃったね~」
 「そうだね美里ちゃん……」
 「それはまた別の話でだな……取り合えず俺の身に何があったか話そうか」

 まずステータスを見せと二人は目を点にしてこちらを見つめる。

 「これバグとかじゃないの?」
 「いや違う、ちなみに来た時は六万ぐらいだった」
 「嘘……さっきあんなに余裕な発言してたけど納得だよ」

 とまぁ俺の前世の話、失踪した長馴染みの立花のことも話した。

 「信じられないわね……でも周平君がそう言うなら本当なんでしょうね」
 「ああ、このステータスがそれを証明している」
 「それで今後はどうするつもり?」
 「立花を探す、迷宮に行かないのもその手掛かりを掴んだからなんだ」
 「なるほどね~」

 俺はこの二人も大好きだ、いつも俺のことを心配してくれて信じてくれた二人だ、だけど立花は嫁だった女、まずはあいつを探さないといけない。

 「わかった、取り合えずその使命とやらを果たすなら立花さん見つけてここを出なさい」
 「美里ちゃん!」
 「雪、周平君にとっての一番はいつだって立花ちゃんだったでしょ?」
 「でも私は……」

 月島は悲しそう表情を見せる、この顔を見るのは辛い。

 「でも!その代わり私達と約束をしてもらいます」
 「約束?」
 「そう、約束、これをちゃんと誓ってもらうわ」

 約束か……一体何の約束だろうか……

 「まずは私達のことはこれから名前で呼ぶこと、それから……」

 
 ◇


 その頃王都アスタルテが一望できるとある場所では。

 「よくここに彼と来たわね……」

 初めてこの世界に来た時、この街で一番綺麗な景色が見える場所を歩いて探した。
 
 「ここに来ると思い出してしまうね……」

 夜の誰もいないその場所で昔交わした約束。

 「戦争が終わったらまたここに二人で来るか……覚えているといいけどね~」

 街での彼の動きを遠目で監視しており聞き込みをして回っている姿を見ていた。

 「フフッ、あの人の予言だともうすぐね……」
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