前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

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1章

15話:再会

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 俺が見たのは懐かしい夢だった。といっても前世の話ではない。
 二年前の中学三年生の時の夢……隣に住んでいた幼馴染はいつも通り寝坊しそうな俺を叩き起こし、一緒に学校に向かった。
 だがその途中で先に行こうとする幼馴染を追い俺も追いかけるが、追いつくどころかその距離はやがて広がり俺はそのまま一人になるんだ。
 あいつが失踪してから一年以上が経ったが俺はずっと探し再会出来る事を信じていたんだ。

 「夜明けか……」

 雪や美里と約束を交わしたが色々と面倒なことになりそうだ。だがああでもしないと二人は納得しないし俺としても気分が悪い話だ。

 後は俺を殺ろうとした奴の話も少ししたがまだ犯人を完全には特定していない。疑わしい奴の名前は教えておいたが今後どうなるかだな。

 「周平君」
 「よっ」

 来たのは尾形だ。あらかじめ朝にこの門のところで会う約束をしていた。

 「ちゃんと起きれたみたいだな~」
 「ハハッ、ここではネトゲはできないからね~」

 尾形の奴はよく遅刻気味でギリギリに来ていたがあれはよくネトゲをしていたからだったんだな。

 「それで俺の事を少し話そうと思う」
 「うん」

 尾形にもある程度の事情を話した。
 二人同様驚いた様子を見せていたものの、来たぐらいの時に念話なんかを実践していたのですんなり信じてくれた。

 「立花さんって確か周平君の中学時代の友達以上嫁未満の幼馴染だった人だよね。俺も周平君と何回かいる時会ったけど凄い美人だったよね~それこそ月島さんや杉原さん以上に」
 「まぁ好みはわかれるだろうがあいつほど美人な奴はそうはいないだろうな」
 「確か当時は告白したかったけど踏ん切りつかずでそのまま失踪……本当は零明高校に入学予定だったんだよね?」
 「ああ」

 その時の俺の喪失感……あの数か月俺は立ち直れずに何に対しても無気力だった。
 それをケアしてくれたのがあの三人だった。

 「まさか前世は嫁なんてビックリだね!」
 「本当それな~」
 「それで周平君わかってると思うけど命狙われてたよね?逃げる時不自然に攻撃当たってたの見てた……」

 尾形の顔が真剣な表情に変わる、そうかこいつは見ていたのか。

 「その話も今しようと思ってな。あん時は罠に嵌まったフリしてワザと下に落ちたが、クラスメイト内でのそういった行為が今後起こる可能性がある」

 勿論俺は狙われても仕方ない部分もあったが、もっと力を得て個々がどんどん強くなり、まとまりにヒビが入った時……クラスは最悪な形で崩壊する。
 これはいつか起こりえることだ。

 「うん、その犯人は心当たりはあるの?」
 「やった奴はわかるがそれを裏で引いているクソ野郎がいる可能性がある」
 「なるほどね~」

 あの実行犯の二人の所属グループを考えると少し厄介だ、グループが割れてくる今後を考えれば余計にだ。

 「河内と岡部に気をつけろ。それと俺はじきここを出る」
 「えっ……」

 ここにいては目的は果たせない。
 この世界に巣食う偽神共を殲滅しなければならんからな。

 「その前世の話聞いたら当然だね」
 「お前も来るか?」

 こいつは友達だ、できれば一緒に連れて行きたい。
 もしこのまま不憫な扱いを受け命を失うようなことがあったら後悔が残る。

 「お誘いは嬉しいよ……でも俺はまだここにいるよ」
 「そうか、でもそのまだってのはいずれはってことだな」
 「うん、そんな話聞かされたら当然さ」

 ならせめて少しでも尾形のことサポートしてやらんとだな。

 「こいつを持っておけ、二人にも渡したがお前にも渡す」

 ちょっとしたお守り、一度は命を救ってはくれるしきっと役に立つ時がくるはずだ。

 「ありがとう~俺も俺でいつかは周平君の力になりたいんだ。今はまだ無理だけど強くなったらコバンザメしていい?」
 「ハハッ、お前なら構わねぇよ~いつでも歓迎するさ」

 俺を慕い、ゲームでは俺と同等の腕を見せてくれたクラスで唯一の同性の友達だからな。

 「その時はよろしく。それじゃあそろそろ戻ろうか」

 
 ◇


 朝食を済ませた後は迷宮攻略に行くクラスメイト達を見送り街に出た。あのお店に行く為だ。
 時間があったので夕方前までは街での聞き込み行い、目撃情報がないかの聞き込みを行った。
 ついでに街での食べ歩きで美味しい食材なんかもチェックして、今後の為に購入した。宝物庫には無限に収集可能だから非常に便利だ。

 「さて夕方前だな……」

 街はずれのその飲み屋に向かった。
 四つの大きな門のうちの一つ西門の付近は住宅街もあり木々が多い地域だ。西門の前の大きな広場のような場所を西に行くと自然の多い区画に入る。

 ここいらは店があまりないのかほかの場所よりは静かだな……まぁだからこそ立花の奴はその飲み屋に通ったのだろう。

 草木が生い茂る場所を進んでいくと、小さな建物がポツンと建っていた。昨日聞いた通り行ってみるとわかりやすい場所にあった。

 「ここか……」

 まだ時間も夕方前、クラスメイト達はもう城に帰っている頃かもしれないな。

 「さて……」

 早速店に入る。まだ人はいなくカウンターにゴツイ体のおっちゃんが立っていた。
 マスターで間違いないな。

 「いらっしゃい~」
 「ああ、一杯貰えないか?」

 頼んだのはこの世界の果物から作られた果実酒だ。玲奈先生や嶋田達の目もあり酒を飲むようなことはしなかったが、誰も見ていないし久しぶりに味わうといしょう。

 「いい酒だな」

 度数も高くないし甘目でいい感じだ。昔よく立花と飲んだりしたものだ。

 「どうも、その黒髪……あんた勇者って奴かい?」
 「ああ、そうだよ」
 「そんな勇者様がこんな穴場に何の用だ?」
 「ここによく通ってた凄い美人な奴がいたよな?そいつに会いに来たんだ」
 「なるほど~あんたもあの子の噂を嗅ぎつけて来たってことか」

 あんたもということはそういう輩が前にもいたようだな。あれだけ美人で可愛ければ当然か。

 「まぁそうだな、それでその子は?」
 「先週来てもうここには当分こないってさ。何でも待ち人がそろそろ来るからとある場所に行くんだとさ」
 「何!」
 「ああ、一足遅かったようだな~」
 「それはどこだ!」

 それを聞いて焦ったのか声を荒げてしまう。
 ある場所って一体どこだ。

 「さぁ、そこまでは聞かなかったよ」
 「クソッ……」

 やっと手掛かり掴んだと思ったのにこれか……もう少しであいつに会えるってのに……

 「そうか……」

 なら早くその場所とやらを探さないといけない、だがそんな場所の検討がつかないしどうしたものか……

 「まぁ落ち着けよ~昔一緒に行った思い出の場所とかそういう所なんじゃないか?」
 「思い出の場所?」
 「そうそう、もしお前さんがあの子の待ち人ならそれがわかるはずだ」
 
 思い出の場所……このファーガスにそんな場所なんてあったっけか……
 確かに前世でも初めてこっちの世界に来た時拠点にしたのがファーガスではあったが……

 戦争が終わったらまた二人で景色を見ましょう。

 「うっ……」

 記憶が……

 「どうした?」
 「いや、何でもない……」

 景色?確か前にここに来た時にそんな約束を……
 しかしそれは一体どこなんだ。

 「なぁここいらで一番景色が綺麗な場所ってわかるか?」
 「景色?」
 「そうだ、一番綺麗な景色が見れるところだ!」
 「う~ん、いくつかあるからな……」
 「昔から変わらずある場所だ」

 前に来たのは百年以上前の話だ、その時代から変わらずある場所とばれば多少は絞れるはず。

 「そうなると……もしかしたらあそこかな?」
 「あそこ?」
 「ああ、俺の両親が好きだった場所なんだがな。この西区画でここを出て、ちょっと行ったところにファーガス城よりも高い場所があるんだ」
 「有名なのか?」
 「今は草木が多くて入りにくいってのでそうでもないが……昔は人気で決意の丘なんて言われてたらしいな」

 決意の丘……そうかあの時約束したのはその場所で間違いない。
 偽神どもを倒し戦争を終結させてまたここに来ると約束したんだ。

 「ありがとう、思い出したよ!」
 「おう、なら早く行け!あまり女を待たせるもんじゃねぇぞ~」
 「ああ!」

 店を出て向かった。

 「全く自分から顔出せばいいのにあの子は……」

 マスターは立花から周平がここに来るというのを聞かされており、場所を思い出せなかったらヒントを与えるように頼まれていたのだ。

 「頑張れよ青年!今度は二人でうちに来い」


 ◇


 昔のおぼろげな記憶を頼りに決意の丘を目指す。木々が多く昔とあまり変わってないのが救いだ。

 「立花……」

 前世でも転生後もいつも俺の傍にいてくれたな。全くあのまま記憶戻らず会えなかったら告白しなかったのを一生後悔するとこだったな。

 一番高いその場所に向かう。息をハァハァさせながら必死に向かった。

 こんなに必死になったのは失踪した直後の捜索の時以来だな。

 あの時は凄く悲しく胸が張り裂けそうだった。
 今でもあの時の絶望感は忘れていない……いや忘れることはできないだろう。

 もうすぐだ……

 一番高い場所まで辿り着いた。街を一望でき明かりのついている場所とそうでない場所がはっきりわかる。

 「ここだな……」

 あの時もここでこの景色を眺めたな……座って寄り添いながらこの景色を見ていた。

 「後は待つだけか……」
 「その必要はないわ~」

 後ろから声が聞こえ、それと同時にこちらに近づいてくるのがわかる。

 「あっ……」

 後ろを振り返ると懐かしいその姿が目に入り涙が流れる。
 そうだ……ずっと俺はこの子に……

 「フフッ、何泣いているのよ~」
 「あ……たり前だろ……俺はずっと……」
 「そうね、無理もないわ……私だって寂しかったわ」

 その姿、形、声……やっと俺は再会することができたんだな。

 「お帰り」
 「うんただいま」

 抱きつきキスを交わした。
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