前世で魔神だった男、嫁と再会して旅をします。

明石 清志郎

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4章

90話:昔の事件

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 周平がファーガスに戻る前の話だ。とある日、いつも通り雪と美里が迷宮で周平の分身体に会いにきた時だ。

 「来ちゃった~」
 「ご苦労様」
 「もっと喜びなさいよ」
 
 美里がジト目でこちらを見る。

 「ハハッ、嬉しいに決まってんじゃんか」
 「本当かしら?」

 美里はジト目でこちらを見る。

 「本当だよ、それで何か話に来たのか?」
 「いや周平君迷宮で襲われたじゃない?」
 「裏で糸を引く犯人ってやっぱあの時の事件がらみかなって……」

 雪が複雑な表情でこちらを見る。まぁおそらくそれ絡みである可能性が高いな。俺がクラスで外されたあの事件だ。


 ◇


 クラス替えによって仲良し四人のうち陣だけ外れたが、雪や美里が一緒で嬉しかったのは覚えている。

 「おはよー今年も同じクラスだね~」
 「またそばで雪のお守りができて私は嬉しいね~」

 二人とは小学生の頃からの親友で付き合いが長い。

 「はあぁ~、お前ら朝から騒がしいな」

 大きな欠伸と共に二人に話しかける。

 「フフッ周平君、よかったね私達と同じクラスで」

 美里はニヤニヤしながら言う。

 「そうだな、陣の奴はご愁傷様だな。また杉原には面倒見てもらうさ」
 「私だけに頼むと雪が妬くから雪にも頼んでおきなさいね~」
 「そうだな、月島またノートよろしく」

 俺は基本授業は聞かないしいつも寝ているからよく雪からノートを借りていた。それでいてテストの点がいつも高かかったので雪からは少しムッとされたがその度に何か奢っていたな。

 「まぁまた好きな物奢ってやるからお願いな」
 「周平君、雪の使用料金は高いわよ?」
 「わってるよ、代わりにお前らにはしっかり使われてやるから」

 二人は二年のアイドルなんて言われて有名だった。二人的には不本意だったらしいがな。俺はと言えばいつも寝ているが、周りからは頭が良くスポーツもでき副業でかなりお金を稼いでいることで知られていた。陣は両親が傭兵で、自身も語学堪能で喧嘩も強いことで知られていた。

 新たにクラスでの友人を見つけつつも四人での交流は絶えることはなかったし楽しく過ごしていた。だが一月が経った頃クラスで変な事件が起きていた。

 「私の体操服がないわ……」

 クラスメイトの一人田島の体操着が盗まれたのだ。

 田島の体操着がなくなっていたことでクラスメイトがまず疑われたが、朝来た時に発覚したのもありその時点では他のクラスも犯行可能であり、容疑者が多すぎて誰が盗んだのかは検討がつかなかった。

 「田島ってあのギャルっぽい奴か~あれの体操着は要らんな」

 その日の放課後四人で集まった陣は笑いながらそんなことを言っていた。

 「もう、そんな不謹慎なこと言っちゃ駄目よ~」
 「そうよ陣君」
 「ごめんごめん、でも俺や周平なら田島の盗む前に雪ちゃんや美里ちゃんに頼んでパンティ嗅がせてもらうように頼むよな」
 「ふっ、陣よおれはブラでもいいぞ」

 俺と陣は美里から強烈なパンチを喰らった。だけどこれを聞いた二人は俺達じゃないなって笑いながら安心してくれたんだったな。

 「でもよ、早く犯人捕まるといいな……正直容疑者扱いは面倒だからな」

 同じクラスメイトの男子となると、嫌でもそういう目にあってしまう。その三日後、犯人は捕まるどころか今度は河内と白井の体操着が盗まれたのだ。しかも今度は朝はあったが、昼前にはなく間の移動教室の時間内の犯行とされた。その移動教室はパソコンの授業だったが、先生の手違いで何人かの生徒が教室に忘れものをとりに行く事態になった為、十名の生徒が教室に戻っていることから犯人はその十名のクラスメイトの中にいることがわかったのだ。厄介な事にそれをとってくるタイミングがバラバラで、大半が一人で教室に戻っておりその十名の中には俺が含まれていた。

 「ねぇ周平君?」
 「どうした杉原?」
 「私の体操服欲しい?」
 「いらん、下着ならまぁ考える」

 美里は疑われた俺に気遣いこんなことを言ったのを覚えている。

 「ハハッ、周平君が彼氏になってくれるなら考えるよ」

 美里はたまにこうやって冗談交じりで俺を誘惑していた。俺は立花の事もあり、当時は冗談を返すように笑いながら断っていた。

 「魅力的な提案だけど未練タラタラの俺にはきついな~」

 この時はずっと失踪した幼馴染である立花の事をずっと気にしていた。美里も当然それを知ってるからからかって言っているとは思ってたけど、思えば本心はずっと気になっていた。

 「杉原、ありがとな。月島も陣も心配かけてすまんな」
 「ううん、周平君もついてないよね」
 「そうだな、教室に戻らなきゃな~」

 あの時教室に行かなきゃ犯人候補から外れて、容疑者の身も晴れていたのだ。

 「しゃーねぇーだろ、あれは先生が悪いわ」
 「でも二人はしっかり持ってきてたんだろ周平?」
 「ぐっ……痛い所を……」
 「ハハッ、それと俺はお前が犯人じゃねぇの知ってるから心配はしてないよ」

 陣もなんだかんだでこの時はフォローしていてくれた気がする。

 「陣に言葉はいらんな」
 「まぁ気になることが一つあるが……まぁ杞憂に終わるだろうからいいわ」

 この気になることをちゃんと陣が言っていればもっと警戒をしたかもしれない……だが時すでに遅しだった。

 その十名の中でも忘れ物を取りに行った時、三分ずれで教室で合流した河内と橋本や被害者の白井にその白井と一緒にいった岡部は除外された。また授業終わり間際にとりにいき廊下で他のクラスメイトに目撃されている南井も限りなく白に近いと言われ残ったのが俺を含めて五人だった。

 それからさらに三日がたった朝にその事件は大変不本意ながら終結したのだ。

 「おはよ~」
 「おっす」

 遅刻ギリギリでなく登校してきた日の事だ。

 「珍しいね、どうしたの?」
 「最近生きた心地がしなくてさ……おかげで眠くて朝も校門で人とぶつかっちまったし……」

 俺に対する周りの目は少しキツくなっていた。犯人が五人の中に縛られたことでその五人はいつもどこかで見られているような感じになっていたのだ。

 「まぁしょうがないのかな?本当困っちゃうよね」
 「まったくだよ……」

 周平君はため息をつきながら言う。

 「あら周平君早いじゃん!」
 「おはよー杉原、容疑者になるとこうも落ち着かないのな。東の名探偵のアニメにでてくる容疑者の気分だよ……」
 「ははっ、真実はいつも一つだよ~」

 いっそこの事件解いたろうかなんて思ってたな。

 「あれその袋は?」
 「ああ、これは俺の体操着だよ。」

 つい疑われていたのが気になって袋の中身を取り出したんだ。

 「今日は体育だからな、陣達のクラスと勝負するために……えっ?」

 その時目を疑った。その袋の中には最初に盗まれた田島の体操着が入っていたのだ。

 「えっ……これって田島の……」

 周りのクラスメイトは俺達の元に来る。

 「おい、それ田島の体操着じゃ……」
 「嘘だろ……」
 「犯人は神山!」

 周りが騒ぎ立てる中、田島本人が俺の元に来ておもいっきし頬を引っぱたいた。

 「変態!」
 「ちが……俺じゃない!」
 「はぁ!まだ誤魔化そうっての?あんたが持ってきた私物に私の体操着あったのよ!これはどう説明してくれるのかしら?」

 すると同じく盗まれた河内さんや白井さんも周平君に問い詰めにきた。

 「返してよ!」
 「俺は本当に知らない!これは何かの陰謀だ」

 こん時は流石に焦ったな。必死に弁解したし二人も擁護してくれたが気が気ではなかった。

 「そうよ、周平君はそんなことするわけない。何かの間違いよ」
 「じゃあ月島さん、これはどう説明するのかしら?」

 田島が雪を睨み付ける。

 「待って!とりあえず落ち着きましょう!」
 「美里ちゃん」
 「周平君は昨日からここに体操着をおいていたのは私が見ているわ。昨日一緒に帰ったし間違いない。周平君の体操着だって探すべきよ」
 「そんなの嘘よ!」

 田島は頭に血がのぼって冷静ではなかった。

 「さすがにそれであなたの体操着を私達の前で見せるなんて真似は普通しないはずよ。そもそも犯人なら今日体育があるのにこんなとこに置いたりしないわ!」

 美里は半ば威圧するように言うと回りは一度静かになり、入れ替わった俺の体操着とまだ見つからない白井と河内の体操着の捜索が始まった。結果俺のやつは落とし物として届けてあり、二人の体操着は袋にまとめてクラスの掃除用具入れのある所を発見された。この一件で俺は雪と美里を除く女子と橋本達のグループから無視をされるようになった。結局玲奈先生がかばったのと無事紛失した物が持ち主の元に戻ったことでお咎めなし。
 
 だが二人と今までと変わらず仲良く話しているそんな姿が残りの男子達の反感を買うようになり、さらに孤立し今に至るようになったのだ。
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