【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

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第九章 Feed The Machine

真実—⑩—

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「ヒュー、すげぇな!!」

「よそ見せずに、前に進め!!」

 “バイス”の肉弾戦に感嘆の声を上げる一平に顔をしかめつつ、ロックは“政声隊”の男を籠状護拳バスケットヒルト越しの右拳で迎撃した。

 “政声隊”の両拳に覆われた氷が吹き飛び、“コーリング・フロム・ヘヴン”の人型――氷の“フロスト”――も倒れる男の意識と共に消えた。

 倒れた“政声隊”の男の向こう側に見える、是音台高等科学研究所。

 その入り口の扉が開かれていた。

 眼鏡を掛けた小太りの“政市会”代表の尾咲 一郎と鍔なしビーニー帽を被る痩せ型中年の山土師 靖の二人が入口で争っている様子は無い。

 それぞれの政治団体の代表は――――入口でロック達を眼にすると、研究所の内部に進んだ。

 “政市会”の支援者である、胴田貫 剛介と菅原 辰雄も続くと、“政市会”会員が彼らを囲みながら続く。

 “政声隊”の三条 千賀子と“力人衆”の間崎も、黒いシャツの構成員も、遅れて、中に入った。

 それぞれの団体の構成員が、“バタリオン・ピース”達の進軍を研究所の入り口で遮る。

「こう言う時だけ、で仲良くなってるよ」

「少なくとも、って意味で言えば、ってことだよね!!」

 サキが犬猿の仲にある団体の長の態度に呆れ、シャロンが何処か胸を張って言った。

だったら、滑輪板スケートボードを使った全力でぶん殴るんじゃねぇよ!!」

 ロックはツッコミを入れた。

 彼の眼の前では、シャロンに“芝打”で襲った“政市会”会員が、彼女の両手で叩きつけた滑輪板スケートボードの反撃を諸に受ける。

 彼女の一撃で右頬を中心に顎を砕きながら、“政声隊”の炎を構えた男を覆う様に倒れた。

「まあまあ、兄さん……降りかかる火の粉は振り払わないとね」

「それを言うなら、まず、!!」

 飴色のジャケットを着た双子の弟のサミュエルの笑顔に、ロックは順手に替えて翼剣を右に薙ぎ払った。

 “迷える者の怒髪ブイル・アブァラ”による噴進ジェット火炎の斬撃が、青緑のトルクから召喚した“アンペア”を構える“政声隊”の三人の女性メンバーを吹き飛ばす。

 女性メンバーの目に映るサミュエルの周囲には、砂塵が集まっていた。

 黄金の旋毛風が、彼の周りで吹き荒れる。

 その中に微かに混じる電流が、サミュエルを囲む“政市会”会員と“政声隊”メンバーが、巻き込まれた。

真名ジェナム・エ:“ゲイ・ボルグ”!!」

 砂と電流の渦が、サミュエルの声に呼応するように、大鎌の畳まれた散弾銃型“命導巧ウェイル・ベオ”:“パラダイス”の銃口の前に一列となる。

 彼の右人差し指が引き金を引くと、黄金の一擲が放たれた。

 ロック達の進む研究所への道を塞ぐ“政市会”会員と“政声隊”メンバーが、サミュエルの放った“疑似物理現象”の蹂躙に飲まれる。

「ロック、何あれ……カッコいいじゃん!!」

「“命導巧ウェイル・ベオ”の能力を解放させる“真名”だ……“命熱波アナーシュト・ベハ”と一致していると出来るんだが……」

 ロックは一平に答えながら、翼剣型“命導巧ウェイル・ベオ”を薙ぎ払った勢いを殺さず踏み込む。

 紅い外套コートを翻しながら、右後ろ回し蹴りを“政市会”会員の男に放った。

 両腕の“スウィート・サクリファイス”に青白い敵意を宿っていたが、ロックの意識を刈る踵の一撃に、両腕の火種と共に男が両膝を着く。

 一平に目を向けると、“政声隊”の“ブレイザー”の一団に囲まれていた。

 人型たちの繰り出す炎の雨が、一平を覆う。

「つうか、俺を焼けると思ってんのか!?」

 一平の戦叫と共に、橙の炎が彼の周囲で巻き起こる。

 “ブレイザー”の放つ炎の雨を、一平を覆う炎の壁が

「こいつ、“?」

「流石、一平だ……信じられないことを成し遂げる」

 ロックの背後で、ブルースと龍之助が、一平の技について分析していた。

 その一平が、炎を全身に纏いながら、“政声隊”の炎使い達を拳の露にしていく。

「……それ、『どこの少年誌のバトル漫画だ!?』とツッコんだ方が良いか?」

 ロックは呆れながら、振り向く。

 順手にして“穢れなき藍眼スール・ヒンプリィ”の周囲の空気を融点にして作った、水の刃で、氷の拳撃で迫る“政声隊”を一刃に伏す。

 翼剣の水の刃が“芝打”で武装する“政市会”会員の男と、“スウィート・サクリファイス”で後方支援を行う女“政市会”会員というに疾走した。

 水の斬撃の運ぶ“熱力エネルギー”が、二人の会員の背後にも炸裂し、地べたを舐めさせる。

 ブルースが三人の“政市会”の“芝打”を、迎え撃った。

 苔色の外套コートが風に流しながら、一人目に突っ込む。

 懐からすり抜ける様に一撃を避け、二人目と三人目の攻撃を流す。

 三人を駆け抜けたブルースの両手には、二振りのショーテル型“命導巧ウェイル・ベオ”。

「ツッコむことを考える時点で、って教えなかったか……ロック?」

 人好きのする笑みをロックにしたブルースの背後で、緑色の斬閃が荒れ狂う。

 斬閃の蹂躙に、三人の“政市会”会員が、眼を剝きながら倒れた。

「そういうものなのか、ブルース?」

 龍之助が言うと、穂先を水平に右から水平に走らせる。

 蒼い斬閃が、“政声隊”の女性の纏う青緑のトルクを破壊した。

 電気を操る“アンペア”の人型を焼失させる。

 敵意を向けたが、武器を突然無効化され、女性が立ち尽くした。

「龍之助、真に受けるな」

 翼剣型“命導巧ウェイル・ベオ”:“ブラック・クイーン”の籠状護拳バスケットヒルトと一体化した柄から半自動装填セミオートマチック式拳銃型“命導巧ウェイル・ベオ“を取り出す。

 “雷鳴の角笛アヤーク・ジャラナッフ”のナノ強化銃弾を、龍之助に三発放った。

 射貫いたのは、“政声隊”の“アンペア”を従えた三人。

 彼らの眼が、龍之助の背後を捉えていた。

「ロック、ありがとう。助かった」

 眼鏡の奥の切れ長の眼に安堵を宿しながら、龍之助が礼を言った。

 ロックの照れ隠しの顔をブルースの笑顔の中の眼が見逃さなかったので、無言と無感情を維持する。

 視線のやり場を探していたら、ロックは絶句した。

 その声が何を言っていたのかわからないが、龍之助が先ほどトルクを破壊した女性。

 彼女が徒手空拳で、龍之助に襲い掛かってきたのだ。

 ロックは駆け出すが、彼女の方が龍之助との距離が近い。

 加えて、女性の能力者の扱いに慣れていないのか――もしくは、安心しきっていたのか――矛槍型“命導巧ウェイル・ベオ”:“セオリー・オブ・ア・デッドマン”を右手に、穂先を下にしていた。

 眼鏡の青年の眼の奥に戸惑いの色が生じる。

 両手を構えて飛び掛かる“政声隊”のトルクのない女性の眼から、意識が消えた。

 彼女の意識を失ったのは、電流。

 倒れる彼女の後ろにいたのは、“政声隊”の青緑のトルクの男だった。

 女が倒れるのを蔑みの色で見下し、ロックは龍之助の眼に怒りの色を見る。

 だが、“アンペア”の利点は

 龍之助の矛槍型“命導巧ウェイル・ベオ”を構えるよりも速く、男は二撃目の雷撃を放った。
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