【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

文字の大きさ
246 / 257
第十章 Pedal to the Metal

祭禍—⑭—

しおりを挟む
「ブルース……今、『』……そうだな?」

 ロックは“スターマン”に眼を向けると、右手の翼剣型“命導巧ウェイル・ベオ”:“ブラック・クイーン”に力を入れる。

「ああ……“――って、何を考えて――」

 ブルースの問いかけと同時に、ロックは“駆け抜ける疾風ギェーム・ルー”で駆け出した。

 進路を“スターマン”に向け、全神経を加速。

 ロックの前を覆う大きな影――“ライティングス・オン・ザ・ウォール”が飛び出す。

 身長から3メートルから、右脚をしならせた。

 翼剣の“籠状護拳バスケットヒルト”を突き出し、ロックは“魔人”の蹴りを受ける。

――クソが!!

 心に思った言葉より先に、ロックの肺に溜まった空気が衝撃で吐き出される。

 “魔人”:“ライティングス・オン・ザ・ウォール”の繰り出した熱力エネルギーを受けたロックの身体が、慣性の法則により放物線を描いて吹っ飛んだ。

「ロック!!」

 ブルースが苔色の外套コートを靡かせる。

 ロックの追撃を仕掛ける“魔人”:“ライティングス・オン・ザ・ウォール”の銀色の肩から放たれる右直拳撃ストレートを放った。

 3メートルの巨大の放つ熱力エネルギーによって、“ヘルター・スケルター”の虜となった“政市会”会員と“政声隊”のメンバー、それぞれを吹き飛ばしながら、ブルースに迫る。

 ブルースがショーテル型“命導巧ウェイル・ベオ”:“ヘヴンズ・ドライブ”の二刀を交差させ受けた。

「一体、どういう――」

「“ヘルター・スケルター”を“スターマン”ごと、“ワンダーウォール”に叩き込む」

 ブルースの真意を問う一言に、ロックは淀みなく答える。

 前に出たブルースを、ロックは右足で跳ねのけた。

 ブルースのいた位置を貫く“魔人”の銀拳を、翼剣の“籠状護拳バスケットヒルト”の表面を突き出し、ロックは受け流す。

 前のめりになった純金頭の“魔人”首の付け根に、ロックは順手に構えた翼剣を叩きつけた。

 銀の両腕を地に付けようとした“魔人”の上半身が跳ね上がる。

 ロックは翼剣を“魔人”から遠ざけ、一歩下がった。

 命中は免れたが、3メートルの巨体からの“熱力エネルギー”の風圧に仰け反る。

 腹に激痛と熱さが疾走はしった。

 起き上がり様に振り上げた巨人の右腕の拳が、ロックの腹に命中。

 痛さと共に“祭壇”の宙に、紅い外套コートに覆われたロックの身体が放り出された。

 ロックに蹴られ、“魔人”:“ライティングス・オン・ザ・ウォール”の狙いから逸れたブルースの目線。

 彼の翠眼に映るロックに、銀鏡の触手の槍が迫る。

 “魔人”から生えた触手が、ロックの頭、左脇腹、右足の三ヶ所に狙いを付けた。

 翼剣:“ブラック・クイーン”で、切り落とそうと構える。

 その時には、頭への触手が迫っていた。

 ロックの眼の前に、閃光の刃が煌く。

 サキの短髪の乙女の守護者――“ライラ”の右腕の剣が、ロックの頭への触手を斬った。

「“ヴァージニア”!!」

『心得ました!!』

 右腕の鶏冠の兜ガレアの守護者の右腕の弓から、矢が放たれる。

 拳大の“フォトニック結晶”に光を秘めた鏃が、“魔人”の首に命中した。

 “魔人”から生えた銀鏡色の触手が、狙いをロックから大きく逸らし、空を突く。

 “魔人”の全身を揺らすと、結晶が弾け飛んだ。

 純金の頭の輝きを光が集中。

 結晶の欠片一つ一つに宿り、一斉に貫いた。

 光に焼かれて発生した爆破に、“魔人”;“ライティングス・オン・ザ・ウォール”が後退する。
「しかし、ロック……“ヘルター・スケルター”をには――」

「ブルース、不可能じゃない!」

「いや、!!」

 ブルースが、ロックの前で声を大きく上げた。

 ロックは龍之助の身体を見る。

 蒼く染まる右眼から、

 “愛されし者の右眼ザ・アイ・オブ・ジ・ビラブド”は、命熱波アナーシュト・ベハ”を止める。

 しかし、その“命導巧ウェイル・ベオ”の捉える“命熱波アナーシュト・ベハ”が強大なものだったら。

 その答えは、龍之助が示していた。

「……待って、ロック、ブルース」

 サキがロック達の間に入る。

 ロックは、ブルースの異議に加え、サキの闖入に痺れを切らせかけた時、

「私なら……かもしれない」

 ロックはサキの一言に押し黙った。

 ブルースの方は、サキの突然の言葉に息を呑む。

「……私の力、“……だよね?」

 サキの一言に、ブルースが頷きかけるが、

「だが……サキ、龍之助を見ろ……アイツが限界なら、お前も――」

「それは、“命熱波アナーシュト・ベハじゃない?」

 ロックの中で、サキの言葉が引っ掛かった。

――そういえば!!

 ロックの思い出したのは、二つの出来事。

 と、だった。

「そういえば……龍之助の“愛されし者の右眼ザ・アイ・オブ・ジ・ビラブド”に“命熱波アナーシュト・ベハ”を封印されて、動き出した」

 ロックの言葉に、ブルースの眼が見開いた。

「つまり……サキは“命熱波アナーシュト・ベハ、“に働きかけられる……」

「私がやるから……ロック達は、“スターマン”に攻撃して!!」

 サキが“スターマン”に、片刃型“命導巧ウェイル・ベオ”:“フェイス”の切っ先を突きつける。

 蒼白い光を放つと、“スターマン”の巨体が

「だが……力が大きすぎる……」

「しかし、あながちだぜ?」

 戸惑うブルースに、ロックは肩を竦める。

 “魔人”:“ライティングス・オン・ザ・ウォール”が、胴体に取り込んだ三条を揺らしながら、走ってきたからだ。

 純金頭の彫られた眼の奥に、河上 サキのキャミソールと“命導巧ウェイル・ベオ”を構えた姿が映る。

 ロックは翼剣;“ブラック・クイーン”の鍔から、半自動装填セミオートマチック式拳銃型“命導巧ウェイル・ベオ”:“イニュエンド”の銃口を、“魔人”に向けた。

 銃口から数発が、“魔人”の数歩先の道を刻む。

 “道作る蹄ニャッフ・ジェナブ・ラハーチ”で噴き出した炭酸ガスの柱が、“魔人”の右脚を大きく取った。

 体勢の崩れた巨人に、ロックの半自動装填セミオートマチック式拳銃型“命導巧ウェイル・ベオ”が、更に火を噴く。

 “雷鳴の角笛アヤーク・ジャラナッフ”が、うつ伏せで起き上がろうとする“魔人”の銀の肉体と純金の頭を抉った。

 立ち上がろうとする“魔人”の叫び声に、ロックは更に銃弾を二発撃ち込む。

 “定めに濡らす泪フアスグラ・ウイルイエアダサン”による水蒸気爆発が、3メートルの巨体を揺らした。

 膝を突く“魔人”が蒸気に隠れると、

「しょうがねぇ、ロック……精一杯の力をぶち込ん――」

 ブルースが、弾けた様に振り返る。

 ショーテル型命導巧ウェイル・ベオを二刀構えると、苔色の外套コートの戦士に銀色の風が吹いた。

 “魔人”:“ライティングス・オン・ザ・ウォール”の裏拳が、ブルースの両腕に炸裂。

 彼の長身の身体が、ロックから見て左側に吹っ飛ぶ。

 ロックは翼剣を構えるが、“魔人”に一太刀を浴びせることも出来なかった。

 彼の喉を圧迫する銀の右腕。

 ロックは息苦しさと共に、“魔人”に持ち上げられた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

女神の白刃

玉椿 沢
ファンタジー
 どこかの世界の、いつかの時代。  その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。  女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。  剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。  大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。  魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。  *表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

処理中です...