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第三章 A Greek Gift
策謀の夜―⑦―
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午後7時12分 スプリングプレイス・ホテル 12階 コンドミニアム棟
淡い橙色の明かりが居間を照らす。
珈琲と香草茶をそれぞれ残す陶器が硝子机に鎮座。
硝子机を挟んで座するサキを、ロックは見ていた。
彼女の目は俯いて、口を動かしている。
サキにここ数日の出来事を話した後、ブルースとエリザベスは部屋を離れた。
サキの個人空間にいるのは、ロックとエリザベスの執事のプレストンの三人である。
第三の人物の彼をお目付けにして、不埒な行動をロックに取らせない対策らしい。
憤慨と言わんばかりにエリザベスを睨んだが、忠実なる老執事はおろか、サキの目の前もあって皮肉すら出せなかった。
それから、三人の間では何も起きずに時が流れている。
サキは、今までの流れを整理しているのか、ソファで座ったまま思考していた。
プレストンはサキに休養を勧めたが、当の本人は、
「二日も寝ていたのだから、眠気が来るまで起きています」
疲れや気持ちを“大切な者の前でも”出さないサキの性格を、先日の出来事で思い知らされたロックは気が気でなかった。
プレストンは、台所の隣にある硝子机で、情報通信端末を見ている。
机の上にある、サキに出したのと同じツナ入りサンドイッチが老執事の目の前の皿に一口分。
ロックも同じものを先ほど二つ平らげた。
少し前、サキは笑顔を作りながら、プレストンと会話をしていた。
サンドイッチの酩酊――つまり、日常会話の範囲から離れないものである。
ロックに加わる意図がなければ、必要性も持ち得なかったので、口は食事の後味を楽しむだけに留めた。
プレストンは、サキに向けた笑顔とは違う視線を、情報通信端末に向けている。
今後の予定の確認でもしているのだろうか。
サキについては、このままコンドミニアムに滞在させていても意味が無い。
ワールド・シェパード社、バンクーバー市にB.C.州は、サキの安全の為と称して、早い内に監視下へ置きたいはずだ。
サロメの所属するホステルは、組織。
“ベターデイズ“の繋がりで、バンクーバー市は愚か、TPTP傘下の企業も捜査の対象となっていた。
だが、それがサロメを捕まえることは愚か、“ホステル”の全容解明に繋がる訳ではない。
UNTOLDに関わる者と“ホステル“は、何らかの形で繋がっている。
サロメは、バンクーバー市の企業や団体などの繋がりを通して、サキに近づくだろう。
少なくとも、サロメとの繋がりの広さについては”ワールド・シェパード社”は愚か、”ブライトン・ロック社”もシロとは言いきれない。
そう思考しているロックの目の前で、軽やかに液晶画面の上で五指を走らせる老執事は、予定を記録し確認すると言うよりは、むしろ作っているように錯覚させられる。
ロックも掌台の自分の携帯通信端末に、目を運んだ。
返信が来ていないことを確認。
待機画面に変えると、今年の冬梅雨は長引くという天気情報を得て、画面を閉じる。
待機画面を閉じた端末の液晶が、鏡として自分の顔を映し、ロックは目を逸らした。
『あの時とは違うぞ、ロック?』
部屋を出る前に、耳打ちされたブルースの言葉。
それが彼の心の内で、反響を繰り返していた。
――そんなつもりは……ねぇよ。
心の中で反論をするものの、間もなくロックは自己嫌悪に陥る。
硝子机の冷めた珈琲に、ロックは手を伸ばすと、
「私、ある災害……いや、事故なのかな? それに関わっていたんだ」
サキが唐突に口を開いた。
ロックは眉を顰めて、珈琲の寸前で手を止める。
「町の人が避難して、色々な人が助けに動いて……事故の原因を探して」
サキの口から出た「原因」と言う言葉が、重く響く。
「新エネルギー開発……その関係で」
「“白光事件“……か?」
ロックは珈琲入りの陶器を手にした後、サキは首を縦に振った。
白光事件。
2010年、日本の本州西部の中国地方で、原因不明の光が発生。
公式発表によると死亡者はいない。
だが、その“発光現象”は日本の首都の東京はおろか、韓国のソウル、オホーツク海湾岸からも観測されるほどの大規模なものだった。
事態を重く見た日本政府は、自治体の要請を受けて自衛隊を派遣。
山口県の岩国に駐留していた在日米軍も救援に加わった。
新技術開発の実験の事故と言われた為、爆心地の調査を行う機関が、特別法の元で設立。
爆心地に近い住民は、県外の自治体へ避難させられた。
避難区域への立ち入り制限は徐々に解除されていったが、その原因の究明は事件から時間が立った今でも継続している。
同時に、住民の帰宅問題、安全性を巡る“議論“という名の“陰謀論“まで出て左右問わず、現在も話題のネタが尽きなかった。
「私にも原因があるって言う人もいるけど、そうではないと言う人も味方になってくれた」
サキの話し方に、間が入り始める。
「それだけじゃダメだって……”ワールド・シェパード社”から支援を受けながら、勉強して強くなるために」
「カナダ留学に来た……そういうことか?」
ロックが、サキの言葉を継ぐ。
先の会議で触れた、サキの疑問の残る訓練結果。
あの結果が、カイルの糾弾するよう、サキに関わる何かが干渉したからか、試験を出す為の試験段階の不具合によるものなのかは定かではない。
少なくとも、ロックはサキが試験で力を無暗に使ったとは思えなかった。
「でも、その力はあくまで日本で使いたい。助けてくれた人たちに、大丈夫だって伝える為に」
俯くサキの姿に、ロックは懐かしいものを見た気がした。
「でも、そのためにキャニスさんが……あの時、サロメが――」
「サキ。安い慰めかもしれないが、そう考える必要はない」
ロックは冷めた珈琲を、口元に運ぶと、
「キャニスを殺したのは、お前じゃない。サロメだ」
言葉を紡いでから、ロックは陶器に残る黒い液体全てを喉に流し込んだ。
「そして、お前に罪悪感を抱かせようとする奴らによって、キャニスは二度死んだ。能力を持つ奴やその周囲が、お前をダシにしようとしている。それを見て見ぬ振りする奴らも。敵も味方も変わらない。だから、力を付けろ。そして、リリス含めて、そいつらもぶん殴ればいい」
ロックは、珈琲の苦味と共にサキに言って、目を逸らす。
正直な話を言えば、それ以上の言葉が見つからなかった。
ただ、力を求める者は、目の前の大きな不条理に奪われた何かを取り戻したい。
あるいは、その喪失感を埋める為に、それ以上の何かを求めるかを選ぶ。
だが、自分の力を求める姿勢が、結果として多くの人の死と悲劇を振り撒くことになる。
それを遠巻きに見る者たちがいる。
運命に翻弄された者を、歪な分類分けで自己投影し、彼らに纏わる不遇を何かにつけて糾弾し擁護した気でいる。
自分の正当性を他者に求める行為に、当事者意識は存在しない。
何処までも、自己満足でしかない。
ロックもそういう者達による、独り善がりの救いの悲劇を多く見てきた。
――自分を救えるのは、自分しかいない。
サキの力を求める姿勢は、身近な他者を守る為のもの。
だが、守られて、残された身近な他者は、どう思うのか。
守る意思が、サキ本人の命を差し出すことを意味していたら。
ロックは思考のどん詰まりに差し掛かり、目のやりどころを見つけようとするが、よりにもよってサキと目が合ってしまう。
サキを遠巻きに見ることしか出来ない者たちと、同じことしか言えないロックは、自分に嫌悪感を覚えるが、
「サキ、お前が目にして、考えて、感じている世界は全てお前のものだ。お前の力も含めてな。サロメや外野がお前をどうこうしようとしても、それは変わらない。だから、そいつらに譲る真似だけはするな」
ロックはサキの目を見つめて言った。
ロックの心の中にいるのは、彼を助けるために自らの世界を委ねた少女。
彼女の誇りに、彼は今も世界に生かされていた。
「ありがとう、ロック。でも、ごめんなさい……やっぱり、私は……あなたに甘えている」
サキの口調と内容に、ロックは違和感を覚える。
――何を言って……。
ロックの抱いた違和感は、確信に変わった。
「あなたに……命を委ねようと考えているの。変なことだけど……そうした方が良いかもしれない気がするの」
彼女の言葉に、ロックは息を呑んだ。
諦めにも似た解決策に、恫喝が出かけたが、
「ロック、正直に答えて。ブルースに言われた、“あの時”って、どういうこと? それと違うって、どういう意味なの?」
サキの言葉に、ロックは沈黙させられる。
ブルースから先ほど、耳打ちされた言葉だった。
二の句を告げることのできない喘ぎを、悟られない様にサキと向き合う。
「ロック、それだけじゃない。貴方には、何が見えていたの? 私を助けた時……それと、グランヴィル・アイランドでも。ブルースさんに、キャニスさんは、あなたに仕切りに聞いていた」
サキが言葉を紡ぐたびに、ロックの心臓が跳ね上がった。
思わず天を仰ぎたくなる気持ちが濁流として表情に出そうだが、隠すことに務める。
だが、サキの眼は、それが隠しきれていないロックの眼を逃さなかった。
「そして……教えて。リリスに魅入られた、その人の結末を」
――サキは、知っている……!?
彼女の真摯な視線は、ロックを貫かんとするものだった。
サキは、回答に詰まるロックの態度を答えと捉えたのか、
「……ありがとう。ごめんなさい」
サキのロックに向けた、礼と謝罪。
彼女に抱いた、“懐かしさ“の正体にロックは気付いた。
彼女の眼に輝く、鈍い光。
ロックを助ける為に、その命と自らの世界を差し出した少女の笑み。
それと同じだった。
『貴方は常に手が届かない。今もこれからも。そして、未来永劫ね!!』
象牙眼の魔女の呪詛。
自分を救った少女とサキが重なる。
硝子机の向こうのサキの姿が、淡い部屋の光と共に、ロックの眼の前から霞んで消えていくように見えた。
淡い橙色の明かりが居間を照らす。
珈琲と香草茶をそれぞれ残す陶器が硝子机に鎮座。
硝子机を挟んで座するサキを、ロックは見ていた。
彼女の目は俯いて、口を動かしている。
サキにここ数日の出来事を話した後、ブルースとエリザベスは部屋を離れた。
サキの個人空間にいるのは、ロックとエリザベスの執事のプレストンの三人である。
第三の人物の彼をお目付けにして、不埒な行動をロックに取らせない対策らしい。
憤慨と言わんばかりにエリザベスを睨んだが、忠実なる老執事はおろか、サキの目の前もあって皮肉すら出せなかった。
それから、三人の間では何も起きずに時が流れている。
サキは、今までの流れを整理しているのか、ソファで座ったまま思考していた。
プレストンはサキに休養を勧めたが、当の本人は、
「二日も寝ていたのだから、眠気が来るまで起きています」
疲れや気持ちを“大切な者の前でも”出さないサキの性格を、先日の出来事で思い知らされたロックは気が気でなかった。
プレストンは、台所の隣にある硝子机で、情報通信端末を見ている。
机の上にある、サキに出したのと同じツナ入りサンドイッチが老執事の目の前の皿に一口分。
ロックも同じものを先ほど二つ平らげた。
少し前、サキは笑顔を作りながら、プレストンと会話をしていた。
サンドイッチの酩酊――つまり、日常会話の範囲から離れないものである。
ロックに加わる意図がなければ、必要性も持ち得なかったので、口は食事の後味を楽しむだけに留めた。
プレストンは、サキに向けた笑顔とは違う視線を、情報通信端末に向けている。
今後の予定の確認でもしているのだろうか。
サキについては、このままコンドミニアムに滞在させていても意味が無い。
ワールド・シェパード社、バンクーバー市にB.C.州は、サキの安全の為と称して、早い内に監視下へ置きたいはずだ。
サロメの所属するホステルは、組織。
“ベターデイズ“の繋がりで、バンクーバー市は愚か、TPTP傘下の企業も捜査の対象となっていた。
だが、それがサロメを捕まえることは愚か、“ホステル”の全容解明に繋がる訳ではない。
UNTOLDに関わる者と“ホステル“は、何らかの形で繋がっている。
サロメは、バンクーバー市の企業や団体などの繋がりを通して、サキに近づくだろう。
少なくとも、サロメとの繋がりの広さについては”ワールド・シェパード社”は愚か、”ブライトン・ロック社”もシロとは言いきれない。
そう思考しているロックの目の前で、軽やかに液晶画面の上で五指を走らせる老執事は、予定を記録し確認すると言うよりは、むしろ作っているように錯覚させられる。
ロックも掌台の自分の携帯通信端末に、目を運んだ。
返信が来ていないことを確認。
待機画面に変えると、今年の冬梅雨は長引くという天気情報を得て、画面を閉じる。
待機画面を閉じた端末の液晶が、鏡として自分の顔を映し、ロックは目を逸らした。
『あの時とは違うぞ、ロック?』
部屋を出る前に、耳打ちされたブルースの言葉。
それが彼の心の内で、反響を繰り返していた。
――そんなつもりは……ねぇよ。
心の中で反論をするものの、間もなくロックは自己嫌悪に陥る。
硝子机の冷めた珈琲に、ロックは手を伸ばすと、
「私、ある災害……いや、事故なのかな? それに関わっていたんだ」
サキが唐突に口を開いた。
ロックは眉を顰めて、珈琲の寸前で手を止める。
「町の人が避難して、色々な人が助けに動いて……事故の原因を探して」
サキの口から出た「原因」と言う言葉が、重く響く。
「新エネルギー開発……その関係で」
「“白光事件“……か?」
ロックは珈琲入りの陶器を手にした後、サキは首を縦に振った。
白光事件。
2010年、日本の本州西部の中国地方で、原因不明の光が発生。
公式発表によると死亡者はいない。
だが、その“発光現象”は日本の首都の東京はおろか、韓国のソウル、オホーツク海湾岸からも観測されるほどの大規模なものだった。
事態を重く見た日本政府は、自治体の要請を受けて自衛隊を派遣。
山口県の岩国に駐留していた在日米軍も救援に加わった。
新技術開発の実験の事故と言われた為、爆心地の調査を行う機関が、特別法の元で設立。
爆心地に近い住民は、県外の自治体へ避難させられた。
避難区域への立ち入り制限は徐々に解除されていったが、その原因の究明は事件から時間が立った今でも継続している。
同時に、住民の帰宅問題、安全性を巡る“議論“という名の“陰謀論“まで出て左右問わず、現在も話題のネタが尽きなかった。
「私にも原因があるって言う人もいるけど、そうではないと言う人も味方になってくれた」
サキの話し方に、間が入り始める。
「それだけじゃダメだって……”ワールド・シェパード社”から支援を受けながら、勉強して強くなるために」
「カナダ留学に来た……そういうことか?」
ロックが、サキの言葉を継ぐ。
先の会議で触れた、サキの疑問の残る訓練結果。
あの結果が、カイルの糾弾するよう、サキに関わる何かが干渉したからか、試験を出す為の試験段階の不具合によるものなのかは定かではない。
少なくとも、ロックはサキが試験で力を無暗に使ったとは思えなかった。
「でも、その力はあくまで日本で使いたい。助けてくれた人たちに、大丈夫だって伝える為に」
俯くサキの姿に、ロックは懐かしいものを見た気がした。
「でも、そのためにキャニスさんが……あの時、サロメが――」
「サキ。安い慰めかもしれないが、そう考える必要はない」
ロックは冷めた珈琲を、口元に運ぶと、
「キャニスを殺したのは、お前じゃない。サロメだ」
言葉を紡いでから、ロックは陶器に残る黒い液体全てを喉に流し込んだ。
「そして、お前に罪悪感を抱かせようとする奴らによって、キャニスは二度死んだ。能力を持つ奴やその周囲が、お前をダシにしようとしている。それを見て見ぬ振りする奴らも。敵も味方も変わらない。だから、力を付けろ。そして、リリス含めて、そいつらもぶん殴ればいい」
ロックは、珈琲の苦味と共にサキに言って、目を逸らす。
正直な話を言えば、それ以上の言葉が見つからなかった。
ただ、力を求める者は、目の前の大きな不条理に奪われた何かを取り戻したい。
あるいは、その喪失感を埋める為に、それ以上の何かを求めるかを選ぶ。
だが、自分の力を求める姿勢が、結果として多くの人の死と悲劇を振り撒くことになる。
それを遠巻きに見る者たちがいる。
運命に翻弄された者を、歪な分類分けで自己投影し、彼らに纏わる不遇を何かにつけて糾弾し擁護した気でいる。
自分の正当性を他者に求める行為に、当事者意識は存在しない。
何処までも、自己満足でしかない。
ロックもそういう者達による、独り善がりの救いの悲劇を多く見てきた。
――自分を救えるのは、自分しかいない。
サキの力を求める姿勢は、身近な他者を守る為のもの。
だが、守られて、残された身近な他者は、どう思うのか。
守る意思が、サキ本人の命を差し出すことを意味していたら。
ロックは思考のどん詰まりに差し掛かり、目のやりどころを見つけようとするが、よりにもよってサキと目が合ってしまう。
サキを遠巻きに見ることしか出来ない者たちと、同じことしか言えないロックは、自分に嫌悪感を覚えるが、
「サキ、お前が目にして、考えて、感じている世界は全てお前のものだ。お前の力も含めてな。サロメや外野がお前をどうこうしようとしても、それは変わらない。だから、そいつらに譲る真似だけはするな」
ロックはサキの目を見つめて言った。
ロックの心の中にいるのは、彼を助けるために自らの世界を委ねた少女。
彼女の誇りに、彼は今も世界に生かされていた。
「ありがとう、ロック。でも、ごめんなさい……やっぱり、私は……あなたに甘えている」
サキの口調と内容に、ロックは違和感を覚える。
――何を言って……。
ロックの抱いた違和感は、確信に変わった。
「あなたに……命を委ねようと考えているの。変なことだけど……そうした方が良いかもしれない気がするの」
彼女の言葉に、ロックは息を呑んだ。
諦めにも似た解決策に、恫喝が出かけたが、
「ロック、正直に答えて。ブルースに言われた、“あの時”って、どういうこと? それと違うって、どういう意味なの?」
サキの言葉に、ロックは沈黙させられる。
ブルースから先ほど、耳打ちされた言葉だった。
二の句を告げることのできない喘ぎを、悟られない様にサキと向き合う。
「ロック、それだけじゃない。貴方には、何が見えていたの? 私を助けた時……それと、グランヴィル・アイランドでも。ブルースさんに、キャニスさんは、あなたに仕切りに聞いていた」
サキが言葉を紡ぐたびに、ロックの心臓が跳ね上がった。
思わず天を仰ぎたくなる気持ちが濁流として表情に出そうだが、隠すことに務める。
だが、サキの眼は、それが隠しきれていないロックの眼を逃さなかった。
「そして……教えて。リリスに魅入られた、その人の結末を」
――サキは、知っている……!?
彼女の真摯な視線は、ロックを貫かんとするものだった。
サキは、回答に詰まるロックの態度を答えと捉えたのか、
「……ありがとう。ごめんなさい」
サキのロックに向けた、礼と謝罪。
彼女に抱いた、“懐かしさ“の正体にロックは気付いた。
彼女の眼に輝く、鈍い光。
ロックを助ける為に、その命と自らの世界を差し出した少女の笑み。
それと同じだった。
『貴方は常に手が届かない。今もこれからも。そして、未来永劫ね!!』
象牙眼の魔女の呪詛。
自分を救った少女とサキが重なる。
硝子机の向こうのサキの姿が、淡い部屋の光と共に、ロックの眼の前から霞んで消えていくように見えた。
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