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序章 A Tear In The Rainy Town
雨降る街の枯れた涙―⑧―
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棺の右腕の青白い燐光が、既に白い閃光に変わっていた。
――あれを撃つつもり!?
サキは、電子励起銃で“棺の巨人の右腕“を狙う。
彼女から、解き放たれた光は五発。
二発はキャニスから逸らす為に。
巨人の右腕を右側にずらそうと、三発目から五発目までを続けて連射した。
「全員、下がれ! 僕たちでは戦えない!!」
犬耳の隊員たちへ、ナオトは号令を掛ける。
隊長の声に従おうとした隊員たちは、一歩を踏み出せなかった。
サキの銃撃で、デュラハンの棺から放たれる死の光が、大きく逸れる。
だが、解き放たれた音のない、光の咆哮に、サキ一同は目を奪われていた。
太陽のような輝きと鬱屈な青白さの同居した光が、商店とビル街の一角を抉る。
破壊で解き放たれた熱力が、光となり黄昏時の空を一瞬だけ青色に染め上げた。
光に運ばれた熱気が、周囲の体感温度を上昇させる。
しかし、サキを含めた隊員たちの内部体温はそれに反比例し、下がっていった。
「サキ、テメェなんで逃げなかった?」
背後からのぶっきらぼうな声にサキが振り向くと、赤と黒の剣が目の前に現れる。
ロックという紅い外套の青年が、サキの前に翼の剣を突き付けていた。
「テメェ……逃げないと、棺桶の中で死ぬんじゃなくて、アイツの棺桶によって跡形もなく火葬されて死ぬ。“クァトロ“や“ガンビー“とは全く違う……わかってんのか!?」
ロックの恫喝が死に満ちた言い回しなのは、それが確実に命を落としかねないことの表れなのだろう。
サキの近未来が、人の人生としては、あまりにも唐突に終止符が打たれる。
さらに言うと、「死を受け入れる」というには、理解の範疇を超えていることも。
彼の口調は、そう断言している様だった。
しかし、サキは恐れを見せない。
「ロックさん、私が弱点を撃ちます。だから、そこに向けて攻撃を撃ち込んでください!」
ロックの刃を背に振り切り、電子励起銃を構える。
彼女は矢継ぎ早に言って、デュラハンの“恒星“の中心に連射した。
「人の話を聞けよ!」
ロックの右手の五指がサキの右肩を捉える。
彼女の右肩から右上腕二頭筋を締め付けた。
ロックの与える痛みが、彼女の言葉を奪おうとするが、
「聞いてます。でも、私は……逃げません――!!」
サキは、彼の右手を振り払う。
痛みを感じながらも、立ち上がりつつある巨人に向けて撃ち続けた。
ロックは口頭でなく、痛みをもってサキに死の感触を教え、遠ざけようとしているのかもしれない。
しかし、ロックに与えられた痛みは、彼の望む行動とは別の方向へ彼女を動かす。
――この痛みなんて、比べ物にならない。
これまで、自分たちを助けてくれた人の痛みは自分の比ではないだろう。
あの事件で、支えてくれた人たちの背負った痛みは、ロックの脅し程度で上書きされるものではない。
「”ウィッカー・マン”は倒せない。でも、立ち向かわない理由にはなりません!」
サキは、ロックに向け、
「それに、エネルギーが必要なら、そこを私たちも叩けると思います」
電子励起銃の銃身を軽く叩いて、言った。
ブルースとキャニスは、ロックに向けられた言葉の意味が、分からず顔を見合わせる。
ナオトがサキの言葉に気付いたように、
「サキちゃ――いや、カワカミさんの話が正しいとすると、エネルギーを吸収する“何か“がある。それがデュラハンの弱点ということ?」
ナオトの意見に、サキは首肯した。
「恐らく、あのデュラハンは目覚めたばかりです。だから、エネルギーの吸収と放出の間隔が早いのだと思います。その分、活動時間はそれほど、長くない筈です。それに、回復量を上回る損傷を与えて、オーバーヒートも狙えます」
サキの返答を隣で見ているロックの顔は、渋さを増させる。
ブルースがそれを見て、
「お前を分かっているじゃないの?」
優男は苔色の外套の袖の右腕で、ロックの左肩を小突いた。
赤い外套の戦士は、その倍の力を込め、時計回りの右肘鉄で返そうとするが、
「ストップ……隊長さん、皆を集めて。サキちゃんの示す場所を皆で、集中攻撃して」
キャニスが、ロックとブルースの間に割り込み、二人の距離を離した。
ナオトは、サキから離れて、扇状に集まる犬耳の戦士の集団に伝える。
ブルースに向かって、
「ブルースは、ロックとキャニスと共に、接近戦を頼む。僕たちは……」
「物陰で隠れながら攻撃しろ。そして、攻撃が激しくなったと感じたら逃げろ」
ロックが、デュラハンを背にして言う。
そして、
「サキ、これが最後だ。聞かなかったら、逃がす……生死問わず、人の形のまま、な」
サキは、ロックの顔を知る由もなかった。
意外な言い回しだが、彼女は、不思議とロックから頼もしさを感じる。
サキの横にいたナオトは、前線にいるロックたちと残りの”ワールド・シェパード社”の隊員たちを背後――つまり、中間地点にいた。
「しかし、僕も隊長をやらせていただいている。君や隊員たちの活路は切り開かせてもらう!!」
ナオトがそう言うと、ロック、キャニスにブルースの三人が消える。
短剣三本が、銀騎士の右腕から放たれると、軌道が逸れることなく、”首なし騎士”の腹部に命中。
”首なし騎士”が、攻撃を仕掛けた隊長に体を向けた。
巨体の胴が、青白く染まり始める。
右腕に運ばれた青白い死の光が、ナオトを覆いかけた。
しかし、赤い突風が銀騎士の前に現れる。
ロックは、紅い外套を炎の様になびかせ、青白い燐光を放つ棺の右腕に飛び掛かった。
黒交じりの紅い斬撃で、棺を突き上げる。
がら空きとなった胴体に、橙の牙と緑の雷蛇が突き刺さった。
ブルースとキャニスの斬撃と刺突が、青白く光る巨人の胴体に食らいつく。
二人の攻撃に、首なし騎士は、胴体から青白い光の奔流をまき散らした。
熱力吸収を中断されて、首なし巨人はブルースとキャニスに両腕で応戦する。
だが、大きな両腕を振り回しても、二人を捕まえられない。
巨人の腹が割れ、恒星が顔を出す。
「みんな、腹部を攻撃して。あの攻撃が来るわ!!」
サキが叫ぶと、白い銃口から極光が放たれた。
一糸乱れない光の束が、路地からだけでなく、車の影や商店の窓からも放たれる。
いずれも発射場所が違うが、狙う場所は一つだった。
その一条を担うサキは、ロックと目が合う。
ロックは、何も言わず視線を ”首なし騎士”に向けた。
彼は、音もなく首なし騎士の腹部に向け、一陣の爆風となる。
サキは銃撃を止める様に、手で合図を送った。
すると、金属の撃ち合う音と爆発音がサキに聞こえた。
サキたちの撃ち込んだ箇所に、ロックは一合、二合と斬撃を加えていく。
間もなく、 ”首なし騎士”の“恒星“が輝きを取り戻しかけたところで、ロックの剣の赤と黒の光閃がぶつかった。
音もない爆発と、衝撃の奔流がロックの体を揺らす。
苦悶が彼の体を駆けるが、口を歪ませながら放ったロックの一振りが、反作用に競り勝った。
ロックの斬撃で押し出した熱力が、 ”首なし騎士”からの電流の奔流を弾けさせる。
サキと周囲の目を覆わんとする新星爆発の様な眩い光が路上から広がり、巨人が立ち竦んだ。
彼女の目の前で巨人は体幹を揺らして、脚を崩す。
右膝だけが、土瀝青の大地に立つ鎧の巨体を支えた。
「光が…消えた」
サキが呟くと、周囲に騒めきが広がる。
前は悲観、今回は安堵の色に染まっていた。
「総員、落ち着いて対処。センサーで確認を怠らないように」
ナオトは、長髪を振り撒きながら”ワールド・シェパード社”の隊員に命令を下していく。
サキも他の隊員に倣って、兜のセンサーの調整に入るが、その手が止まる。
ロックが凝視した視線の先にある ”首なし騎士”。
その甲冑の胴体が割れた。
縦に出来た割れ目から、青白い光と蒸気が噴き出る。
ブルースとキャニスが、一足先に飛び込んだ。
二人が両腕を伸ばし、“首なし巨人“から引きずり出したのは、一人の男。
短髪に刈り上げた偉丈夫で、まるで彫刻芸術の様な肉体をしている。
屈強な肉体が、灰褐色の鱗の様な鎧に覆われていた。
ブルースがナオトに一言交わすと、”ワールド・シェパード社”の隊員たちが駆け付ける。
ナオトは、隊員たちと会話を交わし、ブルースと共に男を運び出す準備に入った。
茫然としていて、サキは会話の内容が耳に入らなかった。
それは、
「アンティパス……?」
先ほどロックの口から出た言葉の意味を量り兼ね、サキは思わず好奇の視線を向けた。
だが、彼女は次の句を告げられなかった。
彼女の視線に、デュラハンから出た男を見送り、佇むロック。
彼の眼から溢れる一筋の雫。
彼の目元に見た雨のそれとは違うもの――涙だった。
ロックの姿に、サキの中で鼓動が走る。
鼓動と共に、サキの頭に映像が流れた。
鉢金の男が、血に倒れた男と少女に向け、涙を流している。
それが、彼女に向けられたものか。
それとも、自分の無力に向けたものなのか。
その涙の意味を考えていたから。
――あれを撃つつもり!?
サキは、電子励起銃で“棺の巨人の右腕“を狙う。
彼女から、解き放たれた光は五発。
二発はキャニスから逸らす為に。
巨人の右腕を右側にずらそうと、三発目から五発目までを続けて連射した。
「全員、下がれ! 僕たちでは戦えない!!」
犬耳の隊員たちへ、ナオトは号令を掛ける。
隊長の声に従おうとした隊員たちは、一歩を踏み出せなかった。
サキの銃撃で、デュラハンの棺から放たれる死の光が、大きく逸れる。
だが、解き放たれた音のない、光の咆哮に、サキ一同は目を奪われていた。
太陽のような輝きと鬱屈な青白さの同居した光が、商店とビル街の一角を抉る。
破壊で解き放たれた熱力が、光となり黄昏時の空を一瞬だけ青色に染め上げた。
光に運ばれた熱気が、周囲の体感温度を上昇させる。
しかし、サキを含めた隊員たちの内部体温はそれに反比例し、下がっていった。
「サキ、テメェなんで逃げなかった?」
背後からのぶっきらぼうな声にサキが振り向くと、赤と黒の剣が目の前に現れる。
ロックという紅い外套の青年が、サキの前に翼の剣を突き付けていた。
「テメェ……逃げないと、棺桶の中で死ぬんじゃなくて、アイツの棺桶によって跡形もなく火葬されて死ぬ。“クァトロ“や“ガンビー“とは全く違う……わかってんのか!?」
ロックの恫喝が死に満ちた言い回しなのは、それが確実に命を落としかねないことの表れなのだろう。
サキの近未来が、人の人生としては、あまりにも唐突に終止符が打たれる。
さらに言うと、「死を受け入れる」というには、理解の範疇を超えていることも。
彼の口調は、そう断言している様だった。
しかし、サキは恐れを見せない。
「ロックさん、私が弱点を撃ちます。だから、そこに向けて攻撃を撃ち込んでください!」
ロックの刃を背に振り切り、電子励起銃を構える。
彼女は矢継ぎ早に言って、デュラハンの“恒星“の中心に連射した。
「人の話を聞けよ!」
ロックの右手の五指がサキの右肩を捉える。
彼女の右肩から右上腕二頭筋を締め付けた。
ロックの与える痛みが、彼女の言葉を奪おうとするが、
「聞いてます。でも、私は……逃げません――!!」
サキは、彼の右手を振り払う。
痛みを感じながらも、立ち上がりつつある巨人に向けて撃ち続けた。
ロックは口頭でなく、痛みをもってサキに死の感触を教え、遠ざけようとしているのかもしれない。
しかし、ロックに与えられた痛みは、彼の望む行動とは別の方向へ彼女を動かす。
――この痛みなんて、比べ物にならない。
これまで、自分たちを助けてくれた人の痛みは自分の比ではないだろう。
あの事件で、支えてくれた人たちの背負った痛みは、ロックの脅し程度で上書きされるものではない。
「”ウィッカー・マン”は倒せない。でも、立ち向かわない理由にはなりません!」
サキは、ロックに向け、
「それに、エネルギーが必要なら、そこを私たちも叩けると思います」
電子励起銃の銃身を軽く叩いて、言った。
ブルースとキャニスは、ロックに向けられた言葉の意味が、分からず顔を見合わせる。
ナオトがサキの言葉に気付いたように、
「サキちゃ――いや、カワカミさんの話が正しいとすると、エネルギーを吸収する“何か“がある。それがデュラハンの弱点ということ?」
ナオトの意見に、サキは首肯した。
「恐らく、あのデュラハンは目覚めたばかりです。だから、エネルギーの吸収と放出の間隔が早いのだと思います。その分、活動時間はそれほど、長くない筈です。それに、回復量を上回る損傷を与えて、オーバーヒートも狙えます」
サキの返答を隣で見ているロックの顔は、渋さを増させる。
ブルースがそれを見て、
「お前を分かっているじゃないの?」
優男は苔色の外套の袖の右腕で、ロックの左肩を小突いた。
赤い外套の戦士は、その倍の力を込め、時計回りの右肘鉄で返そうとするが、
「ストップ……隊長さん、皆を集めて。サキちゃんの示す場所を皆で、集中攻撃して」
キャニスが、ロックとブルースの間に割り込み、二人の距離を離した。
ナオトは、サキから離れて、扇状に集まる犬耳の戦士の集団に伝える。
ブルースに向かって、
「ブルースは、ロックとキャニスと共に、接近戦を頼む。僕たちは……」
「物陰で隠れながら攻撃しろ。そして、攻撃が激しくなったと感じたら逃げろ」
ロックが、デュラハンを背にして言う。
そして、
「サキ、これが最後だ。聞かなかったら、逃がす……生死問わず、人の形のまま、な」
サキは、ロックの顔を知る由もなかった。
意外な言い回しだが、彼女は、不思議とロックから頼もしさを感じる。
サキの横にいたナオトは、前線にいるロックたちと残りの”ワールド・シェパード社”の隊員たちを背後――つまり、中間地点にいた。
「しかし、僕も隊長をやらせていただいている。君や隊員たちの活路は切り開かせてもらう!!」
ナオトがそう言うと、ロック、キャニスにブルースの三人が消える。
短剣三本が、銀騎士の右腕から放たれると、軌道が逸れることなく、”首なし騎士”の腹部に命中。
”首なし騎士”が、攻撃を仕掛けた隊長に体を向けた。
巨体の胴が、青白く染まり始める。
右腕に運ばれた青白い死の光が、ナオトを覆いかけた。
しかし、赤い突風が銀騎士の前に現れる。
ロックは、紅い外套を炎の様になびかせ、青白い燐光を放つ棺の右腕に飛び掛かった。
黒交じりの紅い斬撃で、棺を突き上げる。
がら空きとなった胴体に、橙の牙と緑の雷蛇が突き刺さった。
ブルースとキャニスの斬撃と刺突が、青白く光る巨人の胴体に食らいつく。
二人の攻撃に、首なし騎士は、胴体から青白い光の奔流をまき散らした。
熱力吸収を中断されて、首なし巨人はブルースとキャニスに両腕で応戦する。
だが、大きな両腕を振り回しても、二人を捕まえられない。
巨人の腹が割れ、恒星が顔を出す。
「みんな、腹部を攻撃して。あの攻撃が来るわ!!」
サキが叫ぶと、白い銃口から極光が放たれた。
一糸乱れない光の束が、路地からだけでなく、車の影や商店の窓からも放たれる。
いずれも発射場所が違うが、狙う場所は一つだった。
その一条を担うサキは、ロックと目が合う。
ロックは、何も言わず視線を ”首なし騎士”に向けた。
彼は、音もなく首なし騎士の腹部に向け、一陣の爆風となる。
サキは銃撃を止める様に、手で合図を送った。
すると、金属の撃ち合う音と爆発音がサキに聞こえた。
サキたちの撃ち込んだ箇所に、ロックは一合、二合と斬撃を加えていく。
間もなく、 ”首なし騎士”の“恒星“が輝きを取り戻しかけたところで、ロックの剣の赤と黒の光閃がぶつかった。
音もない爆発と、衝撃の奔流がロックの体を揺らす。
苦悶が彼の体を駆けるが、口を歪ませながら放ったロックの一振りが、反作用に競り勝った。
ロックの斬撃で押し出した熱力が、 ”首なし騎士”からの電流の奔流を弾けさせる。
サキと周囲の目を覆わんとする新星爆発の様な眩い光が路上から広がり、巨人が立ち竦んだ。
彼女の目の前で巨人は体幹を揺らして、脚を崩す。
右膝だけが、土瀝青の大地に立つ鎧の巨体を支えた。
「光が…消えた」
サキが呟くと、周囲に騒めきが広がる。
前は悲観、今回は安堵の色に染まっていた。
「総員、落ち着いて対処。センサーで確認を怠らないように」
ナオトは、長髪を振り撒きながら”ワールド・シェパード社”の隊員に命令を下していく。
サキも他の隊員に倣って、兜のセンサーの調整に入るが、その手が止まる。
ロックが凝視した視線の先にある ”首なし騎士”。
その甲冑の胴体が割れた。
縦に出来た割れ目から、青白い光と蒸気が噴き出る。
ブルースとキャニスが、一足先に飛び込んだ。
二人が両腕を伸ばし、“首なし巨人“から引きずり出したのは、一人の男。
短髪に刈り上げた偉丈夫で、まるで彫刻芸術の様な肉体をしている。
屈強な肉体が、灰褐色の鱗の様な鎧に覆われていた。
ブルースがナオトに一言交わすと、”ワールド・シェパード社”の隊員たちが駆け付ける。
ナオトは、隊員たちと会話を交わし、ブルースと共に男を運び出す準備に入った。
茫然としていて、サキは会話の内容が耳に入らなかった。
それは、
「アンティパス……?」
先ほどロックの口から出た言葉の意味を量り兼ね、サキは思わず好奇の視線を向けた。
だが、彼女は次の句を告げられなかった。
彼女の視線に、デュラハンから出た男を見送り、佇むロック。
彼の眼から溢れる一筋の雫。
彼の目元に見た雨のそれとは違うもの――涙だった。
ロックの姿に、サキの中で鼓動が走る。
鼓動と共に、サキの頭に映像が流れた。
鉢金の男が、血に倒れた男と少女に向け、涙を流している。
それが、彼女に向けられたものか。
それとも、自分の無力に向けたものなのか。
その涙の意味を考えていたから。
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