【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

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第三章 Obstacles

敵対―⑥―

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 国道の片側二車線の道路を、港と住宅地を結ぶ道路が十字路を作っていた。

 左手前の横断歩道の向こう側は、コンビニエンスストア。

 そこに、格子模様のシャツを着た二十代の男性と、白いトレーナーと水色のパーカーを着た女性と少年が立つ。

――やはり、……。

 サミュエルの目に、コンビニエンスストアに立つ三人のそれぞれの両腕に付けられたもの――“スウィート・サクリファイス”―が映る。

 両手に装着する遠距離攻撃型命導巧ウェイル・ベオである。

 そのことに驚くことはなかったが、

――“政市会”と“ホステル”が繋がっている……まあ、そうなるよね。

 むしろ、繋がりがわかり、サミュエルとしては安心を覚える。

 推量や推測ばかりでは、こちらが見誤る公算が強い。

 その危険性を減らせただけ、マシではあった。

――5分以内……ここで待っていれば――?
 
サミュエルは、これからの5分の予定を考えていたが、中断。

 それは、右手の横断歩道の超えた先。。

 向かい側は、上りの方角は駅に向かっていた。

 そこに立つのは、“力”と白く大きく書かれた黒いシャツを着た男たち。

――“力人衆”……“政声隊”が何でここに!?

 サミュエルとは目が合っていない。

 むしろ、コンビニに立っていた三人の“政市会”会員に目を向けていた。

――まあ、というのが、ね……。

 サミュエルは自分が警戒し過ぎていることに気づき、ため息を吐く。

 しかし、

「助けてよ――!!」

 絹を裂いた……にしては、若干の野太さが消えない声が向かいから聞こえて来た。

 声の方へサミュエルは視線を動かす。

 声の主は、四十代の女性だ。

 肩掛け鞄をしていて、だらしなくなった脂肪に食い込む。

 そして、彼女に続く様に二人の人影。

 一人は彼女と同年代の女性で痩せている。

 矯正されていない歯が、煙草のヤニに染まっていた。

 もう一人は、三十代後半くらいの男で黒縁眼鏡。

 太ってはいるが――力仕事をしているからか――肩幅の広さと肌の張りが伺える。

「リカコ、あんたいつも一言余計なのよ!!」

「マキナこそ、加減がないのよ!!」

「二人とも、こんな時にやめてよ!」

 リカコという脂肪の塊と、ヤニ歯のマキナという女性が言い争いをしていた。

 そして、太っている黒縁眼鏡の男が金切り声で仲裁している。

 しかも、走りながら。

 そんな三人を追う、男たち。

 服装は様々だが、両腕の“スウィート・サクリファイス”が“政市会”を名乗っていた。

――それに追われている、三人には――!?

 サミュエルは追われている三人の首元に、三色のトルクを身に着けていた。

 リカコは赤、マキナは白で、太っている男は青緑。

――“コーリング・フロム・ヘヴン”!?

 両団体の命導巧ウェイル・ベオが一堂に会している。

 しかも、交通量の多い車道で。

 よく見ると、“力人衆”の面々も黒シャツの上に三色のトルクを身に着けていた。

 更には、

「マザキさん、助けてー」

 リカコという脂肪女が大声で叫ぶ。

 黒シャツ集団の男たちの中に、ひどく驚いた男が一人。

 額が広く眉毛を剃った男が、声にならない叫びを放つ。

――間崎……山土師の右腕が何故……?

 サミュエルは困惑した。

 確か、“政声隊”は、あちこちに展開している“政市会”のデモを各個撃破と言わんばかりに妨害している。

 だが、

 その名前に反応したのが、リカコ達を追う“政市会”の集団。

 彼らの内の一人が、“スウィート・サクリファイス”を“力人衆”に向けた。

 “力人衆”の一人が、“政市会”の向ける悪意に対して、間崎の前に躍り出る。

 青白い弾丸が、中年三人組を追う、“政市会”から放たれた。

“力人衆”の内の一人の緑のトルクが輝き、青緑の人型が現れる。

雷撃を疾走はしらせ、政市会の集団の中心で、閃光混じりの爆発が起きた。

“スウィート・サクリファイス”の弾丸が遅れて、中年三人組を抜け“力人衆”のタオルを巻いた“力人衆”に命中。

サミュエルの見える車道の脇の歩道で起きた爆発と銃声に、人々が足を止め始めた。

それに連動して、車が急ブレーキを掛ける。

ブレーキ音と土瀝青アスファルトを抉る音が、昼下がりの国道を切り裂いた。

合図と言わんばかりに、上り車線で連鎖的に車が衝突。

横転した上り車線の車が、下り車線に飛び込む。

そして、下り車線を走る車も数台巻き込んだ。

「サミュエル、何があったの!?」

「シャロン、下がって!!」

 ヨメダ珈琲店の出入り口から出て来た、シャロンを背中越しに右手で制する。

 遅れて背後を見ると、シャロンと共に轟音に驚いたのかハチスカも出てきていた。

 安全よりも好奇心を優先させたハチスカに、サミュエルは内心狼狽する。

 サミュエルの眼前で、上りと下りで、車両の往来がクラクションの音で埋め尽くされ出した。

 コンビニエンスストア前にいた“政市会”三人組の姿が、サミュエルの視界から消失。

 サミュエルの左手の方角から、三人組が迫ってきたのだ。

 彼らの目に映るのは、ハチスカ。

 想定内だ。
 しかし、右手から来るもの。

それは、サミュエルの

――“力人衆”!?

 先ほど追われていた三人の中年男女を背後に、“力人衆”が“政市会”と命導巧ウェイル・ベオの応酬を開始した者たち。

 それから、こちらに向かう“力人衆”の二手に分かれたのだ。

 こちらに来るのは、間崎を先頭にしている。

 後方に続くものも、視界にハチスカを捉えていた。

「シャロン!!」

 サミュエルが呼ぶと、桃色の風が左手方向の“政市会”に向かう。

 “スウィート・サクリファイス”の銃声が響き、サミュエルはの得物を手に駆けた。

 顎髭あごひげを生やせた“力人衆”から炎の人型が現れた時には、サミュエルは

 顎髭の男の懐に入り込んだサミュエルは、筒状の袋の封を解く。

 が上に飛び出し、その勢いで顎髭の顎が抉られる。

 頭部を支点に顎鬚男は一回転。

 衝撃で砕けた歯が血染めのスパンコールを作りながら、顎鬚男は土瀝青アスファルトんを舐める。

 サミュエルは間髪入れずに、

「言え……ハチスカに狙いを定めた理由は?」

 袋に包まれていた得物――肩幅ほどの散弾銃ショットガン――を顎鬚男に突きつける。

 散弾銃ショットガンの上部で折りたたまれた鎌の刃が、昼下がりの陽光を反射していた。

 鎌の刃を煌かせ、サミュエルは顎髭の頭を右足で踏みつける。

 “パラダイス”。

 サミュエルの“命導巧ウェイル・ベオ”。

うめき声を耳にした“力人衆”の間崎、後続の集団は両手を上げる。

「……同士だからだ、の」

「ふざけるな!! とか言いがかりを付けてきたのは、お前らじゃないか!!」

 間崎の言葉に、ハチスカは真っ赤にして否定する。

「……少なくとも、これ以上とないくらいだね」

 サミュエルは銃口を間崎に突きつける。

「……難しい話だ。ってヤツだ」

 銃口の前で肩をすくめる間崎に、

「へえ……じゃあ、も聞いてみる?」

 サミュエルが間崎に言うと、薄い両眉毛で鋭い眼の男は眉を顰める。

「ヤニ臭くて、麦酒ビール腹の汚い刺青いれずみをした、とっとと消え失せろ!!」
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