【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

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第三章 Obstacles

敵対―⑪―

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 ロックは取り出した携帯通信端末スマートフォンの画面を展開させていく。

 サキからのリーネアのメッセージを見ると、


『ファンさんの名前を使って、ごめんなさい』

 
 通知を切った後に送られた一通。

 サキの顔を見るが、

「……怒っているかと思った」

 先ほどとは打って変わり、サキには悲しさと罪悪感が同居していた。

「どういうことかと思ったら……気にするな」

 ロックは携帯通信端末スマートフォンをポケットに入れて、肩をすくめた。

「名前なら、俺がどこかで出してた……それに、?」

 ロックの一言に、サキは驚きの表情を浮かべた。

「やはりか……なら、尚のことだ。命熱波アナーシュト・ベハが強くはないけど、な」

 ロックの前で、サキの言葉が失われていくのがわかった。

「それだったら、だ……全てじゃないが、出来た心の繋がりを利用した。お前を助けるという名目でな」

 バンクーバーで、サキを彼女の命熱波アナーシュト・ベハを通じて乗っ取る敵がいた。

 彼女の精神とも言える“ライラ”と“ヴァージニア”と――それを倒すためとはいえ――ロックは協力した。

 無論、サキの無許可で。

 きっかけはどうあれ、どこかで咎められるとは思っていた。

「それだったら、私も……」

「いや、むしろ昨日の件は。そうでなければ、二人を除いて、その場にいた“政市会”や“政声隊”はおろか、ブルースやアンナも含めた命熱波アナーシュト・ベハ使いにも素手だろうが、……場合によれば、お前との間に立った

 ファンの残した意思を“天からの贈り物”の様に扱われたこと。

それに怒りを覚えたのは事実だ。

同時に、それが、ことも。

しかし、大乱闘の後、サキへの後ろめたさも覚えていた。

自分が一番、を目の当たりにしたこと。

それが、サキの前に晒された。

「サキ、止めてくれてありがとうな」

 ロックの言葉が、思いもしない反応だったのか、

「……どういたしまして、の方が良い?」

 笑顔だが、どこか未消化感を残しながら、感謝を返す。

「それに……ただでさえ、“命熱波アナーシュト・ベハ”使いには、良い感情はないしもあるからな……」

 ロックの言葉に、サキが戸惑う。

「……サキ、ところでさっきから」

 戸惑うサキへロックはバツが悪そうに、彼女の背後を指さす。

 振り向いた彼女は、スーパーの陳列棚の影に見えた眼鏡の男を目撃した。

 サキはどこか――気まずさと共に――納得したように、ロックと同じくバツが悪そうな顔で棚の影から姿を現す。

 男はロックと同じくらいの背丈だが、眼鏡を掛け、細面の端正な顔が繊細さを醸し出していた。

「ごめん、入りづらかったから見てたけど……お友達?」

 ややあって、細面の眼鏡の男性が口を開く。

「そうですけど……」

「……だよね?」

 サキが戸惑う様を見て、眼鏡の男の視線が鋭さを増した。

「待て……サキ、もう少しはっきりと言え! そいつから殺気染みた何かがこっちに向いてるぞ!?」

 ロックの戸惑う様に、

「冗談だよ」

 眼鏡の男がロックに笑いながら言うと、彼はサキの義兄の秀夫と短く名乗る。

 ロックも自分の名を言うと、

「ロック君……取り敢えず、後ろの呼んだ方が良くないかな?」

 秀夫の指摘に、

「いや……警察を呼ぼう」

 ロックは携帯通信端末スマートフォンを取り出し、

「待て待て待てェい!! なんで俺だけ!?」

 カートを猛スピードで押し、後輪走行でロック、サキと秀雄の間に乱入したブルース。

「取り敢えず、こいつブルースと言う名の不審者……直に見ると眼をやられるから、二人でいるときは不思議な石と一緒に“滅びの呪文”を唱えて――」

「それ、どこの日本の古典的な天空都市のアニメの展開!? あと、周りじゃなくて、追い詰めた奴しか目をやられないからね!?」

 ロックに対して、ブルースは冷遇っぷりに全力でツッコミを入れて来た。

というのに、訂正を加えなかったから、まあこんな感じだ」

「いや、だけで、肯定と受け取らないで!?」

 ロックの前で、全力を出し切ったブルースが溜息を出す。

 サキは大笑いをして、秀夫は笑みを控えめに出した。

「それより、母さんから連絡が来てね……遅いみたいだからって」

 秀夫の言葉にサキが驚いて、

「それだったら、秀夫さん……言ってくれれば良かったのに……」

「そう思ったけど、サキちゃんがと話していることを伝えたら、『。あと、』って来たから」

 秀夫の悪戯めいた言い回しに、

「それって、どういう――。ロック、またあとで送るから――」

 サキはロックとの関係について訂正をしながら、会計に向かう秀夫に続く。

「……嵐の様だったな」

 ブルースの言葉に、ロックは肩をすくめた。

「サキ、元気そうでよかったな」

 ロックは、ブルースの言葉に答えない。
 
 ロックは、カートに食品が積まれているのを確認して、カートを押し出す。

「そういえば……“賢人計画”……調べてたな?」

 ブルースの指摘にロックは足を止め、

「……なんだろ、興味はある……」

 ロックが振り返ってブルースに言う。

 しかし、ロックの目の前に立つブルース。

彼の顔に、いつもの人好きのする笑みはなかった。

 ただ、感情のない、極限まで研いだ短剣を思わせる鋭利なブルースの眼差し。

それがロックを貫く。

「おまえが“”に

 ブルースはロックを脇に、彼の押していたカートに手を置いて、

「同時に、
 
 ブルースは押しながら、

「……良ければ、ロックとサキ……お前ら二人だけでも――」

「必要ない」

 ロックは断固とした口調で否定する。

 そして、ブルースの代わりに、カートを押して会計に向かう。

「俺は、望んで……!!」

 ブルースが何か言葉を背後で言っていたが、ロックには聞こえなかった。

 炎を背に笑う、その顔が浮かんだために。
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