【第二部完結】クリムゾン・コート・クルセイドー紅黒の翼ー

アイセル

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第六章 St.Anger

脱出―④―

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 恰幅の良いカンタの青緑の雷撃が、右手から出る。

 サキの頬を掠り、

『やったな、クソデブ!!』

 項が見えるのほどの短髪のサキの守護者――“ライラ”――の剣と化した右手の一閃が、疾走はしる。

カンタの右腕から放たれた雷撃とぶつかり、衝突熱力エネルギーが発生。

熱力エネルギーの奔流と衝撃が、カンタの眼を覆った。

「やったわね!!」

 野太くも、絹を引き裂いたような声を上げるカンタの姿が、サキの眼の前から消える。

 オゾン臭が鼻を突くと、サキは背後に“命導巧ウェイル・ベオ”:“フェイス”を振った。

 青緑の残光と共に黒縁眼鏡の大男が両手を組み、サキの頭へ振りかぶる。

 黒縁眼鏡の表面にサキの顔が映った。

 勝利の確信に、嗜虐の笑みを浮かべたカンタだったが、彼の眼に“”が浮かぶ。

 カンタに肉迫するのは、“鶏冠ガレアの守護者”――“ヴァージニア”。

彼女の右手が弓に変わった瞬間、カンタは吹っ飛んだ。

 カンタの顎をぶち抜いたのは、“ヴァージニア”の右腕から放たれたのは、拳の大きさをした結晶。

 結晶は放物線の頂点に達し、光を発する。

 放出された光は、熱力エネルギーは人型となる。

つまり、“ライラ”に。

『気持ち悪い声上げるな、クソデブ野郎!!』

“ライラ”の猛禽を思わせる両目が、カンタの巨体を捉えた。
 
カンタが倒れる間際に放った雷撃を、“ライラ”が右手の光の剣で相殺。

 熱力エネルギーの衝突は爆発を生み、カンタを衝撃で地面に叩きつけた。

 “フォトニック結晶”。

 光の屈折率を100%にして、それを制御することができるナノ構造体である。

 光そのものとも言える“命熱波アナーシュト・ベハ”の守護者である“ライラ”を移動させ、カンタに一撃を加えたのだ。

「……何よ、あんた……――!!」

 “ヴァージニア”と“ライラ”の連携攻撃を受けながら、カンタが立ち上がる。

 その憎悪が、崩れた庁舎や公園の風景を背後にしたサキを映す。

『こいつ、何か眼がヤバいよ!!』

『……それに、口調も……

 “ライラ”と“ヴァージニア”の二人の言葉に、サキは無言で同意する。

 カンタの眼から感じる、

 それが、彼女を警戒させる。

 カンタの背後を見ると、一平と龍之助が“政声隊”の二人組を迎え撃っていた。

 リカコと言う、炎を纏った脂肪太りの女は、大地を焼きながら接近戦を龍之助に仕掛ける。

 龍之助は、“命導巧ウェイル・ベオ”の矛槍で作った水の刃を振るいながら、彼女の攻撃をいなしている。

 ヤニの目立つ歯のマキナは氷を放ちながら、一平の炎を寄せ付けない。

 どちらも調

「ちょっと、リカコ、マキナ!! こっち来てよ、早く!!」

 カンタが甲高くも、不快な声を上げる。

「そっちこそ、こっちに来てよ!!」

「リカコ、カンタ、あんたら、どんくさ過ぎ!!」

 リカコとマキナが口々に、異議を唱える。

 そこが、均衡状態を崩した。

「龍之助!!」

 一平が声をかけると同時に、“命導巧ウェイル・ベオ”:“ライオンハート”を装備した両手の内、右手を突きだす。

 龍之助は一平の声に応えないが、眼を見て、その意図を把握したようだ。

 彼は“命導巧ウェイル・ベオ”:“セオリー・オブ・ア・デッドマン”で、一平の右手の捉えた先を撃った。

 龍之助の矛槍が水の塊を放ち、“ライオンハート”の炎の榴弾がそれを追った。

 炎と水が衝突し、爆発。

 水蒸気の幕を張り、リカコとマキナの視界を奪った。

 やがて、水蒸気の幕がカンタも覆い始める。

 ライデンフロスト現象。

 水を急激に摂氏100度に上昇させると、蒸発せずに沸騰しつつ水蒸気の幕を作る。

 しかし、その幕が何らかの衝撃で破れると、高温の液体と水が一気に混ざり、水が爆発的に蒸発する現象を言う。

 それによる煙幕に戸惑う脂肪女、ヤニ女と大男を他所に、一平と龍之助がサキに合流を果たした。

「こいつら、何か……タフすぎだぜ!!」

「一平もそう考える?」

「三条が、他の“コーリング・フロム・ヘヴン”を使う奴らとを施しているようだな……」

 一平の言葉に、サキが同意。

 そして、龍之助が二人の言葉と、目の前の“政声隊”から、違いを導き出した。

 サキは“トルク”をした“政声隊”と戦ったことはあまりない。

 だが、ロックや一平の戦った、上万作あまんさく学園前の大乱闘までの記憶をたどっても、何かが引っ掛かる。

「龍之助……強化って、もしかして……回復が速いってこと?」

 サキが言うと、龍之助が頷いて、

「“政声隊”にせよ、“政市会”は装備によって――――

「待てよ……じゃあ、って!?」

 一平の疑問に、サキは息を呑む。

 龍之助も目を見開いた。

「……“へルター・スケルター”の力は使……だよな?」

 一平がロックの言った言葉を反芻すると、サキはある考えに気づいた。

「もし、“コーリング・フロム・ヘヴン”の力が“へルター・スケルター”由来なら、使のはおかしい」

「三条がやっていたのが、するなら、大元はどこからだ?」

 一平が疑問を呈すると、サキは周りを見渡す。

 そして、三条に眼を向けた。

 彼女は、ロックの右肘鉄による打ち上げを躱す。

 ロックが、三条の出方を見つつ、左直蹴りを放った。

 彼女が左へ動くと同時に、ロックは右の回し蹴りで移動を妨害した。

 三条が動きを止めると、逆手にして“ブラック・クイーン”の籠状護拳バスケットヒルトで彼女の左頬を狙う。

 純金の頭と銀の両腕を持った、三条の“守護者”が立ちはだかった。

 “守護者”の左拳が、ロックの攻撃を潰す。

 そして、右拳から炎がロックに向けて放たれた。

 ロックは、翼剣型“命導巧ウェイル・ベオ”から半自動装填セミオートマチック式拳銃型“命導巧ウェイル・ベオ”:“ブラック・クイーン”を取り出し、炎の弾丸で打ち消す。

「ついでに言うと、そのもだが……?」

 龍之助が矛槍型“命導巧ウェイル・ベオ”の穂先を向け、
 
 龍之助の視線に、サキと一平も得物を構える。

 水蒸気の幕が晴れた先。
 
 炎、氷と雷。

 それぞれを纏った、リカコ、マキナとカンタがサキ達を睥睨していた。
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