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最強天使、自己紹介も兼ねて
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「おはようございます、サミュエル様」
カーテンが開けられ、眩しい光が寝室に流れ込む。俺は大きく伸びをして半身を起こし、サイドテーブルの時計をちらりと確認した。……む?
「お目覚めがすぐれませんか?」
「バレット。予定より一時間ほど早くないか?」
きっちりオールバックに固められた金髪。リムレスの眼鏡の奥からこちらを覗く、深いグリーンの瞳。長い手足を持つ我が執事バレットが、タキシード姿で腕時計を凝視している。
そして、明らかに動揺の色を浮かべていた。
「……サミュエル様、本日もなんと黒髪がお美しいことでしょう!」
「褒めてごまかすな」
俺は天蓋つきのベッドを降り、スリッパを履いて窓辺へ歩み寄った。真っ白な光の向こうに広がる下界を見下ろし、目を細める。灼熱の太陽、カラフルな日傘、風を吐き出すハンディファン。多くの人間が行き交う東京・渋谷のスクランブル交差点。そう、今回のミッションの地は——。
「大変失礼致しました。日本時刻に合わせるのを失念しておりました」
「まあ、遅れるよりはいい」
昨夜ミッションを終え上界に戻ったのは、日付をまたぐ直前。優秀なバレットとて、ケアレスミスが増えても致し方ない。思えば彼が休暇を取ったのはいつだっただろうか?
「サミュエル様、日本は流行の移り変わりが激しく……」
バレットは難しい顔でファイルを広げ、パラパラとめくった。眉間にしわを寄せ、やれやれと左右に首を振る。おや、どうしたものか。まるで台風の目のように変化する日本の流行。それが今回のミッションに、何らかの影響をもたらすのか?
「現在は『生ドーナツ』なるものが、日本のトレンドのひとつだそうでございまして」
「ほう」
「その人気もいつまで続くのやら、でございます」
生ドーナツの情報が、今後のミッションにおいて何の役に立つのだろうか。俺は遠い目でバレットを見つめたが、彼はそんな俺の眼差しに気づかず、ファイルをめくりながらごくりと生唾を飲んでいた。お前が食べたいだけか、バレットよ……。
さて、ここで少し自己紹介を。我々天使にはランクがある。俺はその最高位『最強天使』の称号を授かったサミュエルだ。相棒は少々小言は多いが頼れる男、『無双執事』のバレットである。ここ上界で天使と執事はバディを組み、下界へと舞い降りる。二人で共に人間を窮地から救い、与えられた任務——すなわちミッションを遂行する。
達成すればミッションコンプリート。無念ながらミッションインフェイル(未達成)となった場合、上界のその先へ人間をお連れする。運命の一言で片づけるには難儀ゆえ、この件は割愛させて頂こう。
バレットと組んでから、俺のミッションは達成のみ。もとい、最強天使となる前から「ミッションコンプリートのサミュエル」と呼ばれてはいたが、いつもバレットには感謝をしている。ブラックユーモアが過ぎる点はご愛敬だが、ときに同志であり、ときに友人のような関係を育める彼とのバディは、今後も長く続くことだろう。
ところで、この最強天使というネーミング。正直、そのセンスに首を傾げざるを得ない。わかりやすいと言えばそうだが、もっとこう……威厳ある響きが欲しいところだ。ちなみに、バレットの無双執事なる称号も、いかがなものかと俺は思っているのだが——。
「おめでとう、バレット。バディを組んで数年で昇格とは、俺も鼻が高いぞ!」
「サミュエル様、ありがたいお言葉ではございますが。無双執事という名称をどうお思いでしょうか? 若者ふうに申し上げることが許されるならば、ダッセッッ!! ふう、スッキリ致しました」
どうやら彼も気に入っていないらしい。
おっと、長くなった。「サミュエル様は説明が不得意でいらっしゃいます」と、バレットにたびたび怪訝な顔をされる俺ゆえ、一旦ここで切らせて頂こう。ピュアな少年少女、麗しき紳士淑女の皆様、次のチャプターでぜひまたお会いしよう。
——続く——
ここまで読んでくださりありがとうございます!面白いと思って頂けましたら、お気に入りやいいね、レビューで応援してくださると嬉しいです!よろしくお願いします!^^
カーテンが開けられ、眩しい光が寝室に流れ込む。俺は大きく伸びをして半身を起こし、サイドテーブルの時計をちらりと確認した。……む?
「お目覚めがすぐれませんか?」
「バレット。予定より一時間ほど早くないか?」
きっちりオールバックに固められた金髪。リムレスの眼鏡の奥からこちらを覗く、深いグリーンの瞳。長い手足を持つ我が執事バレットが、タキシード姿で腕時計を凝視している。
そして、明らかに動揺の色を浮かべていた。
「……サミュエル様、本日もなんと黒髪がお美しいことでしょう!」
「褒めてごまかすな」
俺は天蓋つきのベッドを降り、スリッパを履いて窓辺へ歩み寄った。真っ白な光の向こうに広がる下界を見下ろし、目を細める。灼熱の太陽、カラフルな日傘、風を吐き出すハンディファン。多くの人間が行き交う東京・渋谷のスクランブル交差点。そう、今回のミッションの地は——。
「大変失礼致しました。日本時刻に合わせるのを失念しておりました」
「まあ、遅れるよりはいい」
昨夜ミッションを終え上界に戻ったのは、日付をまたぐ直前。優秀なバレットとて、ケアレスミスが増えても致し方ない。思えば彼が休暇を取ったのはいつだっただろうか?
「サミュエル様、日本は流行の移り変わりが激しく……」
バレットは難しい顔でファイルを広げ、パラパラとめくった。眉間にしわを寄せ、やれやれと左右に首を振る。おや、どうしたものか。まるで台風の目のように変化する日本の流行。それが今回のミッションに、何らかの影響をもたらすのか?
「現在は『生ドーナツ』なるものが、日本のトレンドのひとつだそうでございまして」
「ほう」
「その人気もいつまで続くのやら、でございます」
生ドーナツの情報が、今後のミッションにおいて何の役に立つのだろうか。俺は遠い目でバレットを見つめたが、彼はそんな俺の眼差しに気づかず、ファイルをめくりながらごくりと生唾を飲んでいた。お前が食べたいだけか、バレットよ……。
さて、ここで少し自己紹介を。我々天使にはランクがある。俺はその最高位『最強天使』の称号を授かったサミュエルだ。相棒は少々小言は多いが頼れる男、『無双執事』のバレットである。ここ上界で天使と執事はバディを組み、下界へと舞い降りる。二人で共に人間を窮地から救い、与えられた任務——すなわちミッションを遂行する。
達成すればミッションコンプリート。無念ながらミッションインフェイル(未達成)となった場合、上界のその先へ人間をお連れする。運命の一言で片づけるには難儀ゆえ、この件は割愛させて頂こう。
バレットと組んでから、俺のミッションは達成のみ。もとい、最強天使となる前から「ミッションコンプリートのサミュエル」と呼ばれてはいたが、いつもバレットには感謝をしている。ブラックユーモアが過ぎる点はご愛敬だが、ときに同志であり、ときに友人のような関係を育める彼とのバディは、今後も長く続くことだろう。
ところで、この最強天使というネーミング。正直、そのセンスに首を傾げざるを得ない。わかりやすいと言えばそうだが、もっとこう……威厳ある響きが欲しいところだ。ちなみに、バレットの無双執事なる称号も、いかがなものかと俺は思っているのだが——。
「おめでとう、バレット。バディを組んで数年で昇格とは、俺も鼻が高いぞ!」
「サミュエル様、ありがたいお言葉ではございますが。無双執事という名称をどうお思いでしょうか? 若者ふうに申し上げることが許されるならば、ダッセッッ!! ふう、スッキリ致しました」
どうやら彼も気に入っていないらしい。
おっと、長くなった。「サミュエル様は説明が不得意でいらっしゃいます」と、バレットにたびたび怪訝な顔をされる俺ゆえ、一旦ここで切らせて頂こう。ピュアな少年少女、麗しき紳士淑女の皆様、次のチャプターでぜひまたお会いしよう。
——続く——
ここまで読んでくださりありがとうございます!面白いと思って頂けましたら、お気に入りやいいね、レビューで応援してくださると嬉しいです!よろしくお願いします!^^
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