最強天使の俺、日本で迷子になり高校生男子に懐かれ大混乱【改訂版】

エイト∞

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最強天使、正体バレる(白目)

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 蒼くんの安全運転に揺られて、美浜家と那須塩原温泉に向かう。目的地のホテルには露天風呂や内風呂がいくつもあり、ツアーが組まれるほど人気だそうだ。宿泊せずとも、一般客も自由に楽しめるらしい。

 車窓に映る生い茂った木々と、遠くの山並み。青空には、優雅に羽根を広げて鳥たちが舞っている。栃木には初めて訪れるはずだが、どこか親しみが拭えぬのはなぜだろうか——。

「予想より渋滞してるな……」

 ハンドルを握る蒼くんがつぶやく。俺はやや身を乗り出し、運転席の蒼くんに礼を伝えた。

「蒼くん。運転をありがとう」
「いえ。左ハンドルに慣れてたら、右ハンドルは怖いですよね」

 普段運転をするのかと問われ、日本製の車は未経験だと答えた。
 正確に言えば、上界では車に乗っていない。「ワープで移動ができるんだ」と語ったところで、誰も信じてくれないだろう。というより、道路で置き去りにされかねない。虚言という名の罪を、またひとつ背負ってしまった……。

「着きましたよ。遊、俺はじーちゃんとばーちゃんと行くから。先にサミュエルさんを案内して」
「オッケー! おんせんっ! おんせんっ!」

 スーツケースや旅行鞄を抱えた人々が溢れるロビーを抜け、ご機嫌な遊と共に男湯へ向かう。ピョンピョン跳ねて横走りする様子に、すれ違う人はみな微笑んでいる。小学生、いや、もはや園児をそのまま高校生男子に成長させたかのような青年だ。

 振り返ると、蒼くんとじーちゃんが談笑しながらついてきている。この調子なら、温泉でも遊と二人きりになれそうだ。じっくり語らい、ミッションを見つけねば……!

「サミュエルさんはさ、内風呂と露天風呂どっちが好きですか?」

 暖簾をくぐると、板張りの床の上に、木製の荷物入れが賽の目状にずらりと並んでいた。遊はズボンを蹴り飛ばすように脱ぎ捨てると、そのまま丸めてカゴに放り込んでいる。
 一言で言おう、雑である。この騒がしさは敵陣に筒抜けだ。忍びの血を引いているわけではなかったらしい。

「空気が心地いいからな、露天風呂のほうが好きだが——」

 Tシャツを脱ぎながら、俺は周りを見渡した。次々と目に飛び込んでくる、人間たちの頭上の数字。【0】【2】【9】……二桁に届かぬ者ばかりだ。

 人間が、どれほど【心の限界】を抱えているのか。片時も忘れてはならないのが我々の定めである。
 ここ栃木の数字は、全体的に小さいようだ。俺は密かに胸を撫でおろした。

「じゃあさ、まずは露天風呂行きましょう! じーちゃんとにーちゃん、あとでね!」

 肩にタオルをひっかけただけの身ひとつで、遊は引き戸をガラガランッ!と豪快に開け放った。途端に熱気がもわっと押し寄せ、俺は思わず目を細める。そして、鼻をつく強烈な硫黄の匂いに襲われた……ぐふっ!
 車を降りたときから感じてはいたが、まるでゆで卵の海に沈む気分だ。バレットめ、やけに正確な表現をよこしたな。

 だが、その奥には白く濁った湯がゆらめき、岩の囲いに抱かれた露天風呂が広がっている。ぼんやり立ちのぼる湯気と情緒あふれる景色が一体となり、なんとも心地よいではないか。ク、クサイのにクセになるだと!?

「サミュエルさんの筋肉、ガチですげえ!」

 じゃぼんと温泉に入った遊は、乳白色の湯の中で俺の体をべたべた触ってくる。くすぐったいが、ここはクールに我慢しよう。

「ありがとう。遊もなかなかだぞ?」
「ありがとうございます! へへっ」 
「ははは」

 なにこれ(二回目)。
 
 気持ちよさそうに肩まで浸かっていたご老人が、のんびりと立ち上がった。
 よし、遊と二人きりだ!俺はゴツゴツした岩肌を背にし、キョロキョロと周りを確認。チャンスである。

「遊よ。改めて聞くが、何か困りごとは……」
「サミュエルさんってさ、人間じゃないですよね!?」

 ——カポーン。

 桶の音が、どこかから聞こえてきた件。



 ——続く——
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