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最強天使、無双執事にいじられる(その1)
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「な、なにを遊はまた……(ピクピク)」
「空から来たってことはさ、天使とかですか?」
遊は白い歯を見せて無邪気に笑った。黄金の【0】の数字が、さらにピカピカと強く輝いているではないか。
「あっ! 言っちゃダメって決まりがあるなら、答えなくてだいじです!」
「いや、そんな掟は存在しないが……」
口を酸っぱくして俺に忠告していたバレットの言葉が、ふいに頭をよぎった。
「人間と親しくなってはなりません。情が移れば、別れの時に苦しむのは、サミュエル様ご自身でいらっしゃいます」
天使も執事も、職務に就いたあとの記憶はすべて鮮明に刻まれる。出会いの喜びも、別れの悲しみも、決して薄れることはないのだ。
「遊よ、その通りだ。単刀直入に言えば、俺はお前を救わねば上界に戻れぬ。その任務を、我々はミッションと呼ぶのだが——」
「上界って、天国のことですか?」
俺は首を左右に振った。
「厳密に言えば天国ではない。天国と上界は限りなく近いのだが、このあたりはややこしくてな」
「あっ! 天国と二世帯住宅みたいな感じですか?」
「ちが……そうだ」
とりあえず合わせておこう。
「困りごとかあ、なんだろうなあ。さっき俺、キッチンの電球変えてもらいましたけど」
「あれだとショボ……弱いのだ」
「うーん、考えておきます!」
軽く流されてしまった。
澄んだ夏空と、源泉かけ流しが流れる音。のどかで癒されるが、いやはや、参ったな……。
「天使みたいな先輩ならいるんだけどなあ。でも、俺を救わないとダメですよね?」
途方に暮れる俺のそばで、遊がほっぺを赤く染めて問いかけた。
「そうだ。俺は、遊の前に舞い降りたからな。今回は、少々目的地からズレてしまい——」
「サミュエルさんってさ、方向音痴なんですね!?」
満面の笑みでバッサリである。天使ってな、心の痛みは感じるんだぜ……?
「だいじです、俺も方向音痴なんで! あっちの温泉にも行きましょう!」
ズバザーッ!と堂々と立ち上がり、再びタオルを肩にひっかけた遊は、隣の檜風呂へ移動した。居合わせた見知らぬご老人たちと、楽しそうに話している。
悩みは誰も抱えている。明るく元気な遊とて、かつては涙を堪えた夜も経験しただろう。
だが今は、心の曇りは見当たらない状態だ。果たして、遊のミッションなど本当に見つかるのだろうか。
「のぼせる寸前だったや!」
「ははは。そうだな」
作務衣に着替えた俺と遊は、スリッパをパタパタ鳴らしながら廊下を歩いた。
うーむ、どうしたのものか。ミッションをコンプリートできなければ、最強天使の称号に傷がつく。右肩上がりだった成績は、方向音痴の俺のせいで一気に転落するだろう。長年バディを組んできたバレットに、顔向けできんぞ……。
「サミュエルさん、喉乾いてませんか?」
数種の温泉に入り、ずいぶん汗をかいた。夏といえども、日本の温泉はつい長湯してしまう。
「そうだな。なにか飲むとするか」
「じゃあさ、レモン牛乳飲みましょうよ!」
え?
レモン牛乳……?
遊が廊下の奥を指さす。少し窪んだ場所に自動販売機が設置され、内部のライトに照らされた瓶飲料がぎっしり収められている。
木製のベンチの上には座布団が敷かれ、どうやら小さな休憩所のようだ。
「俺もぜひ味わってみよう」
「うん!」
ポケットからスマホを取り出すと、バレットから追加のメッセージが届いていた。俺は遊に背を向け、廊下の隅でその内容を確認する。
『サミュエル様。遊様に天使だとバレてしまいましたね。今後、お洋服は白の天使カラーを中心にご用意致します』
絶対に着るものか。
——続く——
「空から来たってことはさ、天使とかですか?」
遊は白い歯を見せて無邪気に笑った。黄金の【0】の数字が、さらにピカピカと強く輝いているではないか。
「あっ! 言っちゃダメって決まりがあるなら、答えなくてだいじです!」
「いや、そんな掟は存在しないが……」
口を酸っぱくして俺に忠告していたバレットの言葉が、ふいに頭をよぎった。
「人間と親しくなってはなりません。情が移れば、別れの時に苦しむのは、サミュエル様ご自身でいらっしゃいます」
天使も執事も、職務に就いたあとの記憶はすべて鮮明に刻まれる。出会いの喜びも、別れの悲しみも、決して薄れることはないのだ。
「遊よ、その通りだ。単刀直入に言えば、俺はお前を救わねば上界に戻れぬ。その任務を、我々はミッションと呼ぶのだが——」
「上界って、天国のことですか?」
俺は首を左右に振った。
「厳密に言えば天国ではない。天国と上界は限りなく近いのだが、このあたりはややこしくてな」
「あっ! 天国と二世帯住宅みたいな感じですか?」
「ちが……そうだ」
とりあえず合わせておこう。
「困りごとかあ、なんだろうなあ。さっき俺、キッチンの電球変えてもらいましたけど」
「あれだとショボ……弱いのだ」
「うーん、考えておきます!」
軽く流されてしまった。
澄んだ夏空と、源泉かけ流しが流れる音。のどかで癒されるが、いやはや、参ったな……。
「天使みたいな先輩ならいるんだけどなあ。でも、俺を救わないとダメですよね?」
途方に暮れる俺のそばで、遊がほっぺを赤く染めて問いかけた。
「そうだ。俺は、遊の前に舞い降りたからな。今回は、少々目的地からズレてしまい——」
「サミュエルさんってさ、方向音痴なんですね!?」
満面の笑みでバッサリである。天使ってな、心の痛みは感じるんだぜ……?
「だいじです、俺も方向音痴なんで! あっちの温泉にも行きましょう!」
ズバザーッ!と堂々と立ち上がり、再びタオルを肩にひっかけた遊は、隣の檜風呂へ移動した。居合わせた見知らぬご老人たちと、楽しそうに話している。
悩みは誰も抱えている。明るく元気な遊とて、かつては涙を堪えた夜も経験しただろう。
だが今は、心の曇りは見当たらない状態だ。果たして、遊のミッションなど本当に見つかるのだろうか。
「のぼせる寸前だったや!」
「ははは。そうだな」
作務衣に着替えた俺と遊は、スリッパをパタパタ鳴らしながら廊下を歩いた。
うーむ、どうしたのものか。ミッションをコンプリートできなければ、最強天使の称号に傷がつく。右肩上がりだった成績は、方向音痴の俺のせいで一気に転落するだろう。長年バディを組んできたバレットに、顔向けできんぞ……。
「サミュエルさん、喉乾いてませんか?」
数種の温泉に入り、ずいぶん汗をかいた。夏といえども、日本の温泉はつい長湯してしまう。
「そうだな。なにか飲むとするか」
「じゃあさ、レモン牛乳飲みましょうよ!」
え?
レモン牛乳……?
遊が廊下の奥を指さす。少し窪んだ場所に自動販売機が設置され、内部のライトに照らされた瓶飲料がぎっしり収められている。
木製のベンチの上には座布団が敷かれ、どうやら小さな休憩所のようだ。
「俺もぜひ味わってみよう」
「うん!」
ポケットからスマホを取り出すと、バレットから追加のメッセージが届いていた。俺は遊に背を向け、廊下の隅でその内容を確認する。
『サミュエル様。遊様に天使だとバレてしまいましたね。今後、お洋服は白の天使カラーを中心にご用意致します』
絶対に着るものか。
——続く——
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