最強天使の俺、日本で迷子になり高校生男子に懐かれ大混乱【改訂版】

エイト∞

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最強天使、休憩所で大ピンチ

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「にーちゃんさ、サミュエルさんうちに泊まってもいいよね?」

 スマホをいじっていた蒼くんが顔を上げ、俺に向かって柔らかく微笑んだ。

「もちろん。サミュエルさん、布団もあるのでどうぞ」

 嘘だろ。

「しかし……」
「いいんじゃないかしら? 遊がデートを申し込めたのも、サミュエルさんのおかげでしょう?」
「息子夫婦も文句を言わんだろ。ほら、留学生を受け入れたこともあったしなあ」

 じーちゃん、留学生と最強天使を混同している。日本以外から栃木へ訪れた、という点では合ってるのか……?

「よ、よろしいんでしょうか?」

 遊と過ごす時間が長いほど、ミッションの発見に有利ではある。だが、栃木よ……。新参者に対して、受け入れ態勢が整いすぎではないか?

「明日の午前中さ、俺部活で家にいないんだ! サミュエルさん、見学にこない!?」

 もはや保護者扱いである。そういえば久美ちゃんが、音楽室から練習が見えると話していたな。

「俺さ、陸上部なんだ! 最近すげえ暑いから、早い時間からスタートして、ちょっと時短になってるんだ!」
「ほう。何時からなのだ?」
「七時だよ!」

 健康的である。行こう。というより、俺が美浜家で留守番というのは、やはりおかしい。

「……ええっ!? こればっかりは仕方ないなあ」
「焦っても危ないからねえ」

 声のほうを見やると、休憩所の入口付近に人だかりができていた。エレベーターホールにいたご老人団体、家族連れ、若者グループ、カップルまで集まり、館内スタッフが説明をしているぞ。

「遊よ、彼らはどうしたのだ?」
「お笑いのミニライブが予定されてたんだけどさ。昨日まで別の地方にいたみたいで、大雨の影響で一時間くらい到着が遅れちゃうんだって」

 各地に舞い降りる天使同様に、人間たちもまた忙しく働き、至る所へと移動しているのだ。

「いま頑張って向かってるみたい。栃木出身のコンビでさ、急にロケ先で相撲を取ったりするんだよ!」

 え?

「二人とも仲良しで、ほのぼのしててさ。ひたすら栃木の名産を紹介しようとして、スベることもあるんだ! ごめんね、ごめんねえーっ!」

 俺のルーツは日本のはずだが、ときどき遊の言語が理解できない。

「サミュエルさんや、ひとつ提案があるんですが」
 
 しばし固まっていた俺に、じーちゃんがほがらかに笑いかけた。

「はい。なんでしょうか?」
「お笑いさんの代わりに、サミュエルさんが手品を披露したら、みんな喜ぶんじゃないかねえ?」

 げっ!じーちゃん、とんでも発言である。
 いや、そもそも俺が「マジシャンです」などと虚言を口にしたせいだ。完全に俺が原因だが、こんな大勢の前で手品をするなどありえん。オーロラ色の鳩でも出せば、大混乱が巻き起こること必須だ!

「いやあ、そのですね……」
「えっ! あなた、マジシャンなんですか!?」
「ママあ、マジシャンってなあに?」

 隣の座卓の家族が、俺とじーちゃんの会話に反応した。し、しまった!

「ほほお。マジシャンだって?」
「おや? エレベーターホールで演劇をしていた男前さんでは?」
「あら、ほんと! 抱きついてた可愛い男の子もそばにいるじゃない!」

 あれは演劇ではない。だが、今はそこではない。
 気づけば数十人はいるであろう人間たちが、俺へジワジワとにじり寄ってくる。なんと館内スタッフまで、ラッキーだと言わんばかりに近づいてくるではないか。勘弁してくれ!

「サミュエルさんはさ、小道具なにも持ってきてないんですよ!」
「サミュエルさんとは、この男前さんのことかい?」
「はい!」

 遊、ナイス!さすが、俺の友よ!ご老人の一人が腰の後ろに手を回し、残念そうな顔をしている。

「そうかあ。やっぱり、手品にはハットやステッキがいるんじゃろう?」
「いえ! 俺が見たときは手のひらだけでした!」

 フォローになっていない件。突然の裏切りである。遊の発言を聞き、群衆が再び期待に満ちた目でこちらを見つめてくる。ほら、早く手品を見せてよと言わんばかりに……!
 
 落ち着こう。そして一旦、整理しよう。

 東京に参上予定が栃木へ → 美浜家の庭の大木に落下 → 不法侵入に怯えたが、おおらかな遊とその家族に受け入れられ事なきを得る → 旨い昼食をごちそうになる → 温泉地までご一緒する → 手品を求められている(今ここ)。

 これ……手品をしなかったら、人としてどうなんだ。違った、天使としてどうなんだ。
 
「で、では、ごく簡単なものでよろしければ……」

 おおっ!と歓声が上がり、拍手が響いた。おい、なに受け入れてんだ!?美浜家への義理が増え、俺の判断能力が落ちているぞ!

「いやあ、助かります。たまたまマジシャンの方がいらっしゃるなんて!」

 館内スタッフが深々と頭を下げ、休憩所の外を手で示した。

「別の部屋に簡易ステージを用意してありますので、ぜひそちらで」
「い、いや! なにも持ち合わせていないゆえ、ここで!」

 俺は誘導を全力で拒否。本格的な場所に立ってみろ、どう取り繕うつもりだ。照明やらマイクやら備えられたら、もはや逃げ場など一切ない。

 かくして俺は、休憩所の入口付近で手品を披露することに。大人たちはあぐらをかき、ちびっこらは体育座りで行儀よく、みなその時を待っている。

 まるで、即席の寄席会場ではないか。いや、そんな生ぬるい話ではない!もはやこれは、悪夢の公開しょけぃ……ぃいいやっっ!聖なる最強天使の俺が、そんな言葉を使ってはならん!撤回だ!!

 だがしかし、なぜこんなことに(白目)!?



  ——続く——

 読んでくださりありがとうございます!「続きが気になる!」と思っていただけたら、ピンチのサミュエルをぜひ見守ってください!(笑)
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