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最強天使、北関東最大級の遊園地へ!
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「立派なお肉までいただいて。サミュエルさん、近いうちにしゃぶしゃぶでもしましょうかねえ?」
「こちらこそ、お世話になりっぱなしで……」
じーちゃんばーちゃん宅の電球を替えたり、スーパーでまとめ買いをしたり。
俺は美浜家に、そんなささやかな恩返しを続けている。
『おやすみ、バレット。良い夢を』
『サミュエル様。一日一通のメッセージ、まるで恋人のようでございますね?』
皮肉めいた冗談を受け流しつつ、バレットが栃木にワープできるまで三週間を切った。
それまでに、遊に関するミッションは見つかるのだろうか。
遊は突然側転をしたり、天井に向かって手を伸ばしてジャンプしたり、とにかく動き回っている。
だが、宿題も勉強もきちんとこなす。そして、遊以上に勉学に打ち込んでいるのが蒼くんだ。あと二年は学業を続ける必要があるらしい。
「来年からは、こんなにのんびりできないかもしれないです」
ソファに腰を下ろし、麦茶を口にする蒼くん。今日は少しおしゃれをしている。
「どこかに出かけるのか?」
「彼女が昨日、栃木に戻ってきたので。これから会うんです」
「おお、よかったな!」
「サミュエルさあーん! 今日さ、キャンプ行こうよ!」
——遊の誘いは、いつも唐突だ。
庭の物干し竿にバスタオルをかけながら、腕時計に目をやる。
午前七時。……には、すでに朝食を終え、洗濯も済ませ、干す段階に入っている。
美浜家の朝は早い。目と鼻の先に住むじーちゃんばーちゃんの生活リズムを真似ているのだろうか。
夏休みといえば朝寝坊が定番だが、この家にはそれが存在しない。今朝も六時過ぎに、遊が俺の腹をくすぐって起こしてきた。……遊よ、お前はいったい何時に起きているのだ?
「キャンプの予定地はどこなんだ?」
「どこでもだいじ!」
遊は麦わら帽子を被り、サンダルを鳴らしながら庭へ飛び出した。
「遊はどこへ行きたいのだ?」
「俺はさ、遊園地に行きたいんだ!」
……なぜ最初にキャンプと言ったのだ。
だが遊園地か、俺も久しく行っていない。情景が浮かぶ——肩車をする親子、盛り上がるグループ、デート中のカップル。
む?デート!
「遊よ、遊園地は久美ちゃんを誘ったらどうだ?」
「えっ?」
家庭菜園のトマトを収穫していた遊が振り返る。……そのトマト、ぜひ横のキュウリと共にゴマダレ冷やし中華へ(切実)!
「夏祭りまでまだ日がある。愛を育むにはデートが肝心だぞ」
俺は最後のバスタオルを干し終え、その隙間から笑顔を送った。
「おはよう! 久美ちゃん!」
次の瞬間、遊はもうスマホを耳に当てていた。行動が早い。そして俺の微笑みはスルーである。
「今日さ、遊園地行かない? サミュエルさんと、にーちゃんも一緒なんだ!」
……俺も行くのか?蒼くんも巻き添えである。
「これから詳細送るね、またあとで!」
遊はリビングへ駆け込み、トマトを冷蔵庫に放り込んで膝で扉を閉めた。本日も安定——雑である。
「サミュエルさあーん! 久美ちゃんも行けるって!」
「よかったな。だが、俺が行く必要は……」
「チケットあるんだ!」
側転しながらテレビボードに近づき(少し落ち着こうか)、遊は引き出しから数枚のチケットをひらひらと見せた。
ほう、『那須ハイパーク』とな。この間の温泉地の近くだろうか?
「久美ちゃんも絶叫系が好きなのか?」
「それがさ、力也先輩は乗れないと思うんだあ……。バスでも酔っちゃうことがあるからさあ」
「そうか。それは気の毒だ……」
ん?
……なぜか力也くんが参加する流れに(震)。
え、これ何人で行くんだ?
遊、蒼くん、久美ちゃん、力也くん、そして俺。もはや最強天使ではなく添乗員である。
「遊、サミュエルさんが困ってるだろ? まずはメンバーを決めないと」
「にーちゃんさ、今日デートで那須ハイパーク行くんだよね!?」
「まあね」
おお、そうなのか。
「じゃあさ、一緒に車に乗せてって! 現地で別行動でもいいから!」
「で、結局メンバーは?」
「あ! じーちゃんとばーちゃんも行くかなあ?」
大所帯である。
「……じーちゃんとばーちゃんは、ハードな乗り物を好まないのでは?」
「あー、そっか。じゃあ、にーちゃんの彼女も入れて六人!」
蒼くんがポケットからスマホを取り出した。
「どちらにしろ俺も行くから、全員乗せて行くよ」
「ありがとう! にーちゃん!」
「それより、力也くんのことは誘ったの?」
ハッとして、遊が再びスマホを耳に当てる。
久美ちゃんも早起きのようだが、はたして力也くんは——
「力也先輩! おはようございます!」
起きていた。みんな健康的である。
「チケットあります! 絶叫系は無理しなくてだいじです! サミュエルさんもいるので!」
俺が絶叫系に乗れないかのような扱いである。大空を猛スピードで翔ける最強天使だぞ……?
「彼女、『全員で行きたい!』って乗り気ですね」
蒼くんが笑いながらスマホを操作している。
「ありがたいことだ」
「遊のこと、気に入ってるんですよ。久しぶりに出かけたいみたいです」
なるほど、遊はみんなのアイドルということか。確かに、一緒にいれば賑やかで笑顔になる。
静かな一日は望めそうにない。だが、こんな騒がしさも悪くない。
いざ、那須ハイパークへ!ははは!
……実は一番楽しみにしているのは、この最強天使である。
——続く——
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「こちらこそ、お世話になりっぱなしで……」
じーちゃんばーちゃん宅の電球を替えたり、スーパーでまとめ買いをしたり。
俺は美浜家に、そんなささやかな恩返しを続けている。
『おやすみ、バレット。良い夢を』
『サミュエル様。一日一通のメッセージ、まるで恋人のようでございますね?』
皮肉めいた冗談を受け流しつつ、バレットが栃木にワープできるまで三週間を切った。
それまでに、遊に関するミッションは見つかるのだろうか。
遊は突然側転をしたり、天井に向かって手を伸ばしてジャンプしたり、とにかく動き回っている。
だが、宿題も勉強もきちんとこなす。そして、遊以上に勉学に打ち込んでいるのが蒼くんだ。あと二年は学業を続ける必要があるらしい。
「来年からは、こんなにのんびりできないかもしれないです」
ソファに腰を下ろし、麦茶を口にする蒼くん。今日は少しおしゃれをしている。
「どこかに出かけるのか?」
「彼女が昨日、栃木に戻ってきたので。これから会うんです」
「おお、よかったな!」
「サミュエルさあーん! 今日さ、キャンプ行こうよ!」
——遊の誘いは、いつも唐突だ。
庭の物干し竿にバスタオルをかけながら、腕時計に目をやる。
午前七時。……には、すでに朝食を終え、洗濯も済ませ、干す段階に入っている。
美浜家の朝は早い。目と鼻の先に住むじーちゃんばーちゃんの生活リズムを真似ているのだろうか。
夏休みといえば朝寝坊が定番だが、この家にはそれが存在しない。今朝も六時過ぎに、遊が俺の腹をくすぐって起こしてきた。……遊よ、お前はいったい何時に起きているのだ?
「キャンプの予定地はどこなんだ?」
「どこでもだいじ!」
遊は麦わら帽子を被り、サンダルを鳴らしながら庭へ飛び出した。
「遊はどこへ行きたいのだ?」
「俺はさ、遊園地に行きたいんだ!」
……なぜ最初にキャンプと言ったのだ。
だが遊園地か、俺も久しく行っていない。情景が浮かぶ——肩車をする親子、盛り上がるグループ、デート中のカップル。
む?デート!
「遊よ、遊園地は久美ちゃんを誘ったらどうだ?」
「えっ?」
家庭菜園のトマトを収穫していた遊が振り返る。……そのトマト、ぜひ横のキュウリと共にゴマダレ冷やし中華へ(切実)!
「夏祭りまでまだ日がある。愛を育むにはデートが肝心だぞ」
俺は最後のバスタオルを干し終え、その隙間から笑顔を送った。
「おはよう! 久美ちゃん!」
次の瞬間、遊はもうスマホを耳に当てていた。行動が早い。そして俺の微笑みはスルーである。
「今日さ、遊園地行かない? サミュエルさんと、にーちゃんも一緒なんだ!」
……俺も行くのか?蒼くんも巻き添えである。
「これから詳細送るね、またあとで!」
遊はリビングへ駆け込み、トマトを冷蔵庫に放り込んで膝で扉を閉めた。本日も安定——雑である。
「サミュエルさあーん! 久美ちゃんも行けるって!」
「よかったな。だが、俺が行く必要は……」
「チケットあるんだ!」
側転しながらテレビボードに近づき(少し落ち着こうか)、遊は引き出しから数枚のチケットをひらひらと見せた。
ほう、『那須ハイパーク』とな。この間の温泉地の近くだろうか?
「久美ちゃんも絶叫系が好きなのか?」
「それがさ、力也先輩は乗れないと思うんだあ……。バスでも酔っちゃうことがあるからさあ」
「そうか。それは気の毒だ……」
ん?
……なぜか力也くんが参加する流れに(震)。
え、これ何人で行くんだ?
遊、蒼くん、久美ちゃん、力也くん、そして俺。もはや最強天使ではなく添乗員である。
「遊、サミュエルさんが困ってるだろ? まずはメンバーを決めないと」
「にーちゃんさ、今日デートで那須ハイパーク行くんだよね!?」
「まあね」
おお、そうなのか。
「じゃあさ、一緒に車に乗せてって! 現地で別行動でもいいから!」
「で、結局メンバーは?」
「あ! じーちゃんとばーちゃんも行くかなあ?」
大所帯である。
「……じーちゃんとばーちゃんは、ハードな乗り物を好まないのでは?」
「あー、そっか。じゃあ、にーちゃんの彼女も入れて六人!」
蒼くんがポケットからスマホを取り出した。
「どちらにしろ俺も行くから、全員乗せて行くよ」
「ありがとう! にーちゃん!」
「それより、力也くんのことは誘ったの?」
ハッとして、遊が再びスマホを耳に当てる。
久美ちゃんも早起きのようだが、はたして力也くんは——
「力也先輩! おはようございます!」
起きていた。みんな健康的である。
「チケットあります! 絶叫系は無理しなくてだいじです! サミュエルさんもいるので!」
俺が絶叫系に乗れないかのような扱いである。大空を猛スピードで翔ける最強天使だぞ……?
「彼女、『全員で行きたい!』って乗り気ですね」
蒼くんが笑いながらスマホを操作している。
「ありがたいことだ」
「遊のこと、気に入ってるんですよ。久しぶりに出かけたいみたいです」
なるほど、遊はみんなのアイドルということか。確かに、一緒にいれば賑やかで笑顔になる。
静かな一日は望めそうにない。だが、こんな騒がしさも悪くない。
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……実は一番楽しみにしているのは、この最強天使である。
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