最強天使の俺、日本で迷子になり高校生男子に懐かれ大混乱【改訂版】

エイト∞

文字の大きさ
21 / 72

最強天使、聖火ランナーと化す

しおりを挟む
「お待たせいたしました、いらっしゃいませ!」

 ——カランカランッ!

 甲高いベルの音と共に、アイスクリーム屋がオープン。ものすごい数の人間が、どやどやと店内へ流れ込んでくるぞ。

「こちらに並んでくださーい!」

 遊が声を上げると、少女たちは「可愛い!」と大はしゃぎ。遊はアイスクリーム屋のマスコットにもなれそうだ。
 その人気は、所在地は千葉にも関わらず、名称に東京をねじ込んでいるあの有名パークのキャラクターたちも、きっとびっくりするだろう。

 ……誤解しないで頂きたいのは、決して有名パークをいじっているわけではない。
 だが、もし俺の語りがストップしたら、「ああ、そういうことか」と察して欲しい。

 なんの話だ、これ。
 
 視線を店内に戻す。磨き上げられたウッド調の床。そこかしこに漂う甘い匂い。透き通ったガラスのショーケースには、純白のミルク、鮮やかなイチゴ、爽やかなレモン——。
 そして、淡いグリーンが輝くジェラート!遊よ、あれがピスタチオだ!!

 少々取り乱したが、開店直後とは思えぬ大盛況ぶりだ。二階からは子どもたちの嬉しそうな声が聞こえ、テラス席ではカップルが大きなパラソルの下、互いにミルクソフトを食べさせ合っている。

 ちなみに、俺も例のピンクのエプロンを着用している。この胸に抱かれたニコニコ乳牛。最強天使サミュエル、完全に威厳を喪失したのではないか。

「二階席も空いてますので、どうぞ」
「エプロン可愛いー! お兄さん似合ってるー!」
「ははは……」

 少女に「可愛い」と褒められる。下界は奥が深い。

 愛想笑いを送る俺をよそに、遊はせっせとカップを補充したり、テーブルを拭いたりと、終始動き回っている。笑顔を絶やさぬ姿勢は、まさに接客の鑑である。

「遊よ。ソフトクリームは巻かぬのか?」
「さっきちょっとやってみたんだけど、ヘビみたいにニョロニョロしちゃったや!」

 普段の豪快さを思えば容易に予想できる。遊の家のドアが壊れたら、それは間違いなく彼が原因だ。

「でもさ、ジェラートを盛るのは褒められたんだ!」
「ははは。よかったではないか」
「うん! ……えっ!?」
 
 笑っていた遊の表情が一変。入り口のほうを見て硬直している。どうしたのだと、振り返ると——?

「……く、久美ちゃんが来てる!」

 ポニーテールに白いワンピース姿の久美ちゃんが、吹奏楽部の友達と順番を待っている。 
 あわあわする遊をよそに、店内はさらに賑わいを増していた。窓際では親子がレモン牛乳ソフトを片手に写真を撮り、テーブル席の少女たちはイチゴソフトを掲げて映えを競っている。

「美浜くん。その元気いっぱいな接客で、ジェラートの担当をお願いできるかしら?」

 スタッフの一人が声をかける。遊は慌てふためき、自分を指さした。

「俺ですか!?」
「……あれ? 遊くんとサミュエルさんがいる!」

 久美ちゃんと友達がこちらに気づいた。俺はにこやかに手を振ったが、遊はガチガチに固まってしまったぞ。

「ど、どうしよう! 久美ちゃんの前じゃ、緊張して上手くできないかも!?」

 俺は微笑み、遊の肩にポンッと手を置いた。だいじだ。お前はいい男なのだ。

「遊よ、案ずるな。いつものお前でいれば——」
「サミュエルさん、こっちでソフトクリームをお願いできますか!?」

 ドヤ顔で諭している場合ではなかった。スタッフはすでにフル稼働。コーンもカップも飛ぶように消えていく。

「未経験ゆえ……」
「ぜひ、一度やってみてください!」

 魔法を使いたい衝動を抑える。ここでオーロラの輝きを放ったら、とんでもない騒ぎになるぞ。
 だが、俺は最強天使だ。手先の器用さには自信がある。

「では、手始めに……」
 
 スタッフからコーンを受け取ると、手首のスナップでくるくるとソフトクリームを巻いてみせた。美しく均等なフォルムだ。上出来である(満足)。

「サミュエルさん、上手ですね! ミルクソフトはお任せします!」
「うむ!」

 イエスマンサミュエルは、なぜか一台のマシンを担当することになった。まあいい。ここなら、遊と久美ちゃんの様子を見守れる。
 
 俺は次々とソフトクリームを仕上げながら、視線は常に遊へ向けていた。

「遊くん、こんにちは。ミルクジェラートをください!」
「は、はい!」

 久美ちゃんの眩しい笑顔に、遊の手が震えている。それでも懸命に盛りつける姿の、なんと麗しいことか!
 頑張れ、遊!そのひと盛りに、青春を込めるのだ!

 ——と、ふと気づけば。

「サミュエルさん、巻きすぎですよ!?」

 手元を見ると、ソフトクリームは天を突くほど高く巻き上がっていた。まるで聖火ランナーのトーチである。

「すごーいっ!」
「ピューッッ!」

 客たちは大盛り上がり。指笛を吹く青年までいるぞ。俺は手のひらを上げて、歓声に応えた。照れるではないか。

 ……満更でもない俺である。エプロン姿も含め、どうかバレットが見ていないことを願う。


 
 ——続く——
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。 ↓ PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

疎遠だった叔父の遺産が500億円分のビットコインだった件。使い道がないので、隣の部屋の塩対応な美少女に赤スパ投げまくってる件

月下花音
恋愛
貧乏大学生の成瀬翔は、疎遠だった叔父から500億円相当のビットコインが入ったUSBメモリを相続する。使い道に困った彼が目をつけたのは、ボロアパートの薄い壁の向こうから聞こえる「声」だった。隣人は、大学で「氷の令嬢」と呼ばれる塩対応な美少女・如月玲奈。しかしその正体は、同接15人の極貧底辺VTuber「ルナ・ナイトメア」だったのだ! 『今月ももやし生活だよぉ……ひもじい……』 壁越しに聞こえる悲痛な叫び。翔は決意する。この500億で、彼女を最強の配信者に育て上げようと。謎の大富豪アカウント『Apollo(アポロ)』として、5万円の赤スパを投げ、高級機材を即配し、彼女の生活を神の視点で「最適化」していく。しかし彼はまだ知らなかった。「金で買えるのは生活水準だけで、孤独は埋められない」ということに。500億を持った「見えない神様」が、神の座を捨てて、地上の女の子の手を握るまでの救済ラブコメディ。

ママはヤンママ女子高生! ラン&ジュリー!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
キャラ文芸
神崎ラン(♂)の父親の再婚相手は幼馴染みで女子高生の高原ジュリー(♀)だった。 ジュリーは金髪美少女だが、地元では『ワイルドビーナス』の異名を取る有名なヤンキーだった。 学校ではジュリーは、ランを使いっ走りにしていた。 当然のようにアゴで使われたが、ジュリーは十八歳になったら結婚する事を告白した。 同級生のジュリーが結婚するなんて信じられない。 ランは密かにジュリーの事を憧れていたので、失恋した気分だ。 そう言えば、昨夜、ランの父親も再婚すると言っていた。 まさかとは思ったが、ランはジュリーに結婚相手を聞くと、ランの父親だと判明した。  その夜、改めて父親とジュリーのふたりは結婚すると報告された。 こうしてジュリーとの同居が決まった。 しかもジュリーの母親、エリカも現われ、ランの家は騒然となった。  

転職したら陰陽師になりました。〜チートな私は最強の式神を手に入れる!〜

万実
キャラ文芸
う、嘘でしょ。 こんな生き物が、こんな街の真ん中に居ていいの?! 私の目の前に現れたのは二本の角を持つ鬼だった。 バイトを首になった私、雪村深月は新たに見つけた職場『赤星探偵事務所』で面接の約束を取り付ける。 その帰り道に、とんでもない事件に巻き込まれた。 鬼が現れ戦う羽目に。 事務所の職員の拓斗に助けられ、鬼を倒したものの、この人なんであんな怖いのと普通に戦ってんの? この事務所、表向きは『赤星探偵事務所』で、その実態は『赤星陰陽師事務所』だったことが判明し、私は慄いた。 鬼と戦うなんて絶対にイヤ!怖くて死んじゃいます! 一度は辞めようと思ったその仕事だけど、超絶イケメンの所長が現れ、ミーハーな私は彼につられて働くことに。 はじめは石を投げることしかできなかった私だけど、式神を手に入れ、徐々に陰陽師としての才能が開花していく。

処理中です...