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最強天使、成長のゆくえ
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江戸ワンダフルランドに訪れた翌日。疲れを知らぬ遊は、朝からアイスクリーム屋へ出勤。俺は美浜家に残って留守番だ。
なんてことはあり得ず。遊に腕を引っ張られて、バスに乗車。一番後ろの席で二人揃って揺られている。
外はどんより空だ。夏の日差しは、かくれんぼをしている。
「日光で見た美しい夕日が、まるで幻のようだな」
「午後から晴れるみたいだよ!」
「おお、そうなのか」
下界とは異なり、上界では安定的に水が供給される。空気には潤いもあり、気温は適温だ。天気は晴れのみといっていいだろう。そのため、なかには魔法で雨を降らせて虹を楽しむ者がいたり、雪を舞わせて愛を語らう者もいる。
だが、昼間であればその空は明るいままだ。下界にはお天気雨なるものは存在するようだが、お天気雪など聞いた試しがないだろう。
ゆえに、初めて白銀の世界を目にしたとき、俺とバレットは非常に感銘を受けたものだ——。
「なんと美しい……」
「ええ。ソルベが降っているかのようでございますね」
バレットはコートの襟を立てて、マフラーに顔をうずめた。手袋をはめた手を宙にかざし、積もっては消える雪を不思議そうに眺めている。
我々には五感があり、また寒い・暑いの感覚もある。感情はもとより、人間との共通点は案外多いのだ。
「この雪景色から、白い更科そばが生まれたのかもしれんな」
「その点に関しましてはわかりかねます、サミュエル様」
ルーツを長野に持ち、江戸で広まった更科そば。まるでそれは、日本にルーツを持ち、上界で最強天使として羽ばたく俺のようである。無理やり感がひどい。
「ずいぶんと冷えるな。温かいそばで暖をとろう」
「そう致しましょう……」
鼻先を赤くしつつも、雪への関心が強いのか。上界とは異なる白い空を見上げ、なかなか蕎麦屋へ入ろうとせぬバレット。ツンデレな彼の少年のような姿を見て、微笑ましくなったのを覚えている。
「バレットよ」
「はい、サミュエル様。何なりと……」
「長野がこんなに寒いならば、上の北海道はどれほどだろうか?」
天を仰いでいたバレットが、顔をこちらに向けた。隣に立つ俺をじっと見つめている。
「サミュエル様」
「ははは。満足したか? どれ、そろそろ店の中へ——」
「上ではなく、北でございます」
俺の方向感覚に、成長が見えぬ件。
あれから、どれだけ歳月が過ぎたと思ってるんだ……?我が身に問う。
「サミュエルさん、その黒のスニーカーいつ買ったの?」
遊が俺の足元を指さした。県内をあちこち移動するのに便利だと思い、少し前に創作したのだが、今日になって気づいたらしい。江戸ワンダフルランドに向かう際も、これを履いて口笛を吹いていたぞ?
「カッコいいね! もともと持ってきてたの?」
「これはな……ちょちょいと、アレでな?」
俺は人差し指を唇にあて、内緒話のポーズをした。遊よ、わかるだろう?魔法だ。
「『ちょちょいと、アレでな?』って、なに?」
最強天使、まん丸おめめの遊に硬直。……なぜ、伝わらぬ。気取った仕草をした手前、恥ずかしいではないか!
「あ、着いたよ!」
羞恥心を隠せぬ俺に構わず、遊はテンション高くバスを降りた。お得意の飛行機ポーズで、アイスクリーム屋に向かって走っている。そして、そのまま勢いよくドアノブを握り……ハッ!待つのだ!!
「おはようございまーすっ!!」
——バアアァンッッ!!
豪快にドアを開け放った遊。油断していた俺は間に合わず、しまったと手のひらで顔を覆った。いつか、遊の勢いにドアベルが落下しそうである。
スタッフ一同、目くじらをたてることなく大笑い。そして、なぜか遊も一緒に笑っている。え?
「美浜くん、元気いっぱいね! サミュエルさんもありがとうございます。週末はどうしても混んでしまうので、大人の手があると助かるんです」
「お役に立てるよう、頑張ります」
下界のアイスクリーム屋で、新米の挨拶をしている。
「あ、そうそう。今日は、友人のお嬢さんが手伝いに来るんです。美浜くんと同じ学校みたいよ?」
「えっ?」
——カランカランッ。
ドアベルが鳴り、そこに現れたのは……?
——続く——
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なんてことはあり得ず。遊に腕を引っ張られて、バスに乗車。一番後ろの席で二人揃って揺られている。
外はどんより空だ。夏の日差しは、かくれんぼをしている。
「日光で見た美しい夕日が、まるで幻のようだな」
「午後から晴れるみたいだよ!」
「おお、そうなのか」
下界とは異なり、上界では安定的に水が供給される。空気には潤いもあり、気温は適温だ。天気は晴れのみといっていいだろう。そのため、なかには魔法で雨を降らせて虹を楽しむ者がいたり、雪を舞わせて愛を語らう者もいる。
だが、昼間であればその空は明るいままだ。下界にはお天気雨なるものは存在するようだが、お天気雪など聞いた試しがないだろう。
ゆえに、初めて白銀の世界を目にしたとき、俺とバレットは非常に感銘を受けたものだ——。
「なんと美しい……」
「ええ。ソルベが降っているかのようでございますね」
バレットはコートの襟を立てて、マフラーに顔をうずめた。手袋をはめた手を宙にかざし、積もっては消える雪を不思議そうに眺めている。
我々には五感があり、また寒い・暑いの感覚もある。感情はもとより、人間との共通点は案外多いのだ。
「この雪景色から、白い更科そばが生まれたのかもしれんな」
「その点に関しましてはわかりかねます、サミュエル様」
ルーツを長野に持ち、江戸で広まった更科そば。まるでそれは、日本にルーツを持ち、上界で最強天使として羽ばたく俺のようである。無理やり感がひどい。
「ずいぶんと冷えるな。温かいそばで暖をとろう」
「そう致しましょう……」
鼻先を赤くしつつも、雪への関心が強いのか。上界とは異なる白い空を見上げ、なかなか蕎麦屋へ入ろうとせぬバレット。ツンデレな彼の少年のような姿を見て、微笑ましくなったのを覚えている。
「バレットよ」
「はい、サミュエル様。何なりと……」
「長野がこんなに寒いならば、上の北海道はどれほどだろうか?」
天を仰いでいたバレットが、顔をこちらに向けた。隣に立つ俺をじっと見つめている。
「サミュエル様」
「ははは。満足したか? どれ、そろそろ店の中へ——」
「上ではなく、北でございます」
俺の方向感覚に、成長が見えぬ件。
あれから、どれだけ歳月が過ぎたと思ってるんだ……?我が身に問う。
「サミュエルさん、その黒のスニーカーいつ買ったの?」
遊が俺の足元を指さした。県内をあちこち移動するのに便利だと思い、少し前に創作したのだが、今日になって気づいたらしい。江戸ワンダフルランドに向かう際も、これを履いて口笛を吹いていたぞ?
「カッコいいね! もともと持ってきてたの?」
「これはな……ちょちょいと、アレでな?」
俺は人差し指を唇にあて、内緒話のポーズをした。遊よ、わかるだろう?魔法だ。
「『ちょちょいと、アレでな?』って、なに?」
最強天使、まん丸おめめの遊に硬直。……なぜ、伝わらぬ。気取った仕草をした手前、恥ずかしいではないか!
「あ、着いたよ!」
羞恥心を隠せぬ俺に構わず、遊はテンション高くバスを降りた。お得意の飛行機ポーズで、アイスクリーム屋に向かって走っている。そして、そのまま勢いよくドアノブを握り……ハッ!待つのだ!!
「おはようございまーすっ!!」
——バアアァンッッ!!
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スタッフ一同、目くじらをたてることなく大笑い。そして、なぜか遊も一緒に笑っている。え?
「美浜くん、元気いっぱいね! サミュエルさんもありがとうございます。週末はどうしても混んでしまうので、大人の手があると助かるんです」
「お役に立てるよう、頑張ります」
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「あ、そうそう。今日は、友人のお嬢さんが手伝いに来るんです。美浜くんと同じ学校みたいよ?」
「えっ?」
——カランカランッ。
ドアベルが鳴り、そこに現れたのは……?
——続く——
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