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最強天使、屋形船とゆれる数字
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矢場を離れたあとは、せんべい焼きの体験をし、泣き笑いの人情演劇も観賞。お叱りのメッセージが届くのではとヒヤヒヤしたが、スマホは静かなままだ。バレットは、手妻シャンの件をモニターしていなかったらしい。
「さっきの演劇、すっげえ笑っちゃったや!」
「ははは。遊は誰よりも楽しんでいたな?」
「サミュエルさんの笑い声もさ、シンバルみたいに響いてたね!?」
どんなだ。一度、録音して確かめるとしよう。事実ならば迷惑この上ない。
……おや?劇場近くの通りに、人だかりができているぞ。まげニャンだろうか?そう思ったのだが——。
左右に人々がはけ、道が開かれた。華やかな列の先頭で、金棒引きがシャララッと高らかな音を奏でる。花魁道中が幕を開けたようだ。
艶やかな着物を幾重にも重ね、つま先から外側へ八の字を描くように、高下駄でゆるりと歩む花魁。その姿を一目見ようと、観光客は夢中で首を伸ばしている。
「綺麗……!」
声を漏らし、しのぶちゃんがスマホで写真を撮っている。袴姿もよく似合うが、豪華な着物にも惹かれるようだ。
「次回、しのぶちゃんは花魁の衣装を選ぶかもしれんな?」
「いえ! 本当は私、くノ一がよかったんです! でも、子供用しかなくて……大人用の忍者衣装も作って欲しいなあ」
しのぶちゃんが刀を撫でながら、遠くを見てうっとりしている。蒼くんにはバレットが、しのぶちゃんには遊が憑依したように思えてならない。江戸ワンダフルランドの変身処は、どうやら人格も変えてしまうらしい。
その後は資料館をいくつか巡り、大串の焼き鳥も堪能。気づけば、夕方になっていた。
秋には夜まで満喫できる日もあるそうだ。ライトアップされたこの町は、どんなに心を奪われることだろうか。都会の夜景とは異なる趣だろう。
だが、本日は通常営業だ。ゆえに、あと少しで閉門の義が行われるという。健康的である。那須ハイパーク同様に、「たくさん遊んだあとは、夜更かしせずに寝るといい」そんなメッセージが込められているのだろう。合ってるのか?
「最後はさ、みんなであれに乗ろうよ!」
一日動き回っても元気な遊を筆頭に、屋形船にぞろぞろと乗り込む。船頭が棹を操り、ゆるやかに進む船を、オレンジ色の夕日が穏やかに照らしている。
太陽も月も、懸命に己の光を放っている。同じ輝きはひとつとしてない。だから美しいのだ。
——人間もまた、同じである。
「僕、カメラ持ってくればよかったな……」
ゆらゆらと揺れる水面を見つめ、力也くんがぽつりとつぶやいた。
「力也くん。また、遊びにこようではないか」
声をかけると、力也くんが俺に視線を移した。じっと見つめる漆黒の瞳。頭上の数字に変化はないが、表情はとても柔らかだ。
「次は久美ちゃんも誘おう。な? 遊よ」
つむじを見せていた遊が振り返り、嬉しそうに何度も頷く。蒼くん、しのぶちゃんも笑顔だ。みな、満足の色が顔ににじんでいる。
「はい。僕も、またみんなでここに来たいです」
力也くんの頭上の数字が、明滅し始めた。その光は強いとは言えぬ。どこか儚く、朧げだ。だが——。
変化はゆっくりでよい。焦る必要などないのだ。この屋形船のように、のんびりといこう。力也くん。
「サミュエルさん! 明日さ、俺バイトだから。また一緒に働こうよ!」
「ははは。ソフトクリームを高く巻かぬよう、気をつけねばな?」
さて、明日はどんな一日になるだろうか。俺にもわからぬが、きっと良き思い出の日となるだろう。
——続く——
「さっきの演劇、すっげえ笑っちゃったや!」
「ははは。遊は誰よりも楽しんでいたな?」
「サミュエルさんの笑い声もさ、シンバルみたいに響いてたね!?」
どんなだ。一度、録音して確かめるとしよう。事実ならば迷惑この上ない。
……おや?劇場近くの通りに、人だかりができているぞ。まげニャンだろうか?そう思ったのだが——。
左右に人々がはけ、道が開かれた。華やかな列の先頭で、金棒引きがシャララッと高らかな音を奏でる。花魁道中が幕を開けたようだ。
艶やかな着物を幾重にも重ね、つま先から外側へ八の字を描くように、高下駄でゆるりと歩む花魁。その姿を一目見ようと、観光客は夢中で首を伸ばしている。
「綺麗……!」
声を漏らし、しのぶちゃんがスマホで写真を撮っている。袴姿もよく似合うが、豪華な着物にも惹かれるようだ。
「次回、しのぶちゃんは花魁の衣装を選ぶかもしれんな?」
「いえ! 本当は私、くノ一がよかったんです! でも、子供用しかなくて……大人用の忍者衣装も作って欲しいなあ」
しのぶちゃんが刀を撫でながら、遠くを見てうっとりしている。蒼くんにはバレットが、しのぶちゃんには遊が憑依したように思えてならない。江戸ワンダフルランドの変身処は、どうやら人格も変えてしまうらしい。
その後は資料館をいくつか巡り、大串の焼き鳥も堪能。気づけば、夕方になっていた。
秋には夜まで満喫できる日もあるそうだ。ライトアップされたこの町は、どんなに心を奪われることだろうか。都会の夜景とは異なる趣だろう。
だが、本日は通常営業だ。ゆえに、あと少しで閉門の義が行われるという。健康的である。那須ハイパーク同様に、「たくさん遊んだあとは、夜更かしせずに寝るといい」そんなメッセージが込められているのだろう。合ってるのか?
「最後はさ、みんなであれに乗ろうよ!」
一日動き回っても元気な遊を筆頭に、屋形船にぞろぞろと乗り込む。船頭が棹を操り、ゆるやかに進む船を、オレンジ色の夕日が穏やかに照らしている。
太陽も月も、懸命に己の光を放っている。同じ輝きはひとつとしてない。だから美しいのだ。
——人間もまた、同じである。
「僕、カメラ持ってくればよかったな……」
ゆらゆらと揺れる水面を見つめ、力也くんがぽつりとつぶやいた。
「力也くん。また、遊びにこようではないか」
声をかけると、力也くんが俺に視線を移した。じっと見つめる漆黒の瞳。頭上の数字に変化はないが、表情はとても柔らかだ。
「次は久美ちゃんも誘おう。な? 遊よ」
つむじを見せていた遊が振り返り、嬉しそうに何度も頷く。蒼くん、しのぶちゃんも笑顔だ。みな、満足の色が顔ににじんでいる。
「はい。僕も、またみんなでここに来たいです」
力也くんの頭上の数字が、明滅し始めた。その光は強いとは言えぬ。どこか儚く、朧げだ。だが——。
変化はゆっくりでよい。焦る必要などないのだ。この屋形船のように、のんびりといこう。力也くん。
「サミュエルさん! 明日さ、俺バイトだから。また一緒に働こうよ!」
「ははは。ソフトクリームを高く巻かぬよう、気をつけねばな?」
さて、明日はどんな一日になるだろうか。俺にもわからぬが、きっと良き思い出の日となるだろう。
——続く——
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