最強天使の俺、日本で迷子になり高校生男子に懐かれ大混乱【改訂版】

エイト∞

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最強天使、新語を創作す

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「大人用の忍者衣装も作って欲しいなあ……」

 すっかり演劇に魅了された遊は、十手を撫でてうっとりしている。

「遊よ。アクションも素晴らしかったが、いまは甘味を味わおう」
「うんっ!」
 
 我々はあんみつではなく、夏の風物詩を選択。その理由はただひとつ。イチゴ帝国が誇る品種、とちおとめのシロップがあったからだ。

 器いっぱいに、こんもり盛られたかき氷。店先の長椅子に腰を下ろし、華やかなくれない色に染まった結晶を匙ですくう。さて、じっくりと堪能——。

 む?頬張った途端、ふわふわの氷がたちまち溶けていく!甘みの中に息づく、ほのかな酸味。とちおとめの豊かな香りは、ほかのシロップとは一線を画している。頭にキーンと響くことなく、どんどん食べ進めてしまうとは……。
 これぞ、日光の天然水がもたらす力だろうか?その水が与える生命力は、もやしだけではない。それを知らしめてくれたようだな。アメイジング、栃木!

「演劇を全部観るのは、難しいかもしれないですね」

 誰よりも先に食べ終わった蒼くんが、スマホを手に時間を逆算している。なかなかな甘党である彼は、とちおとめシロップに練乳もトッピングしていた。

「私、せんべい焼きと矢場も気になってて。サミュエルさんはどうですか?」

 蒼くんに続いて食べ終わったしのぶちゃん。弓を射るポーズを見せ、気合十分である。

「ははは。どちらも楽しもうではないか」

 まずはせんべい焼き体験へ。香ばしい匂いに誘われたものの、家族連れに大人気だ。待ち時間を考え、その足で我々は矢場へと向かった。

 立派な瓦屋根と、入口横に掲げられた『腕比べ・運試し』の看板。中を覗くと、順番を待つ必要はなさそうだ。台を隔て、少し離れた位置に丸い的が設置されている。ほう。あの中心に向かって矢を放つのだな?

「サミュエルさんさ、上手そうだから手本見せて?」
「うむ。いいぞ」

 遊のリクエストに、俺は目を細めて視点を定めた。方向音痴ではあるが、この身が的に向かって飛んでいくわけではあるまい。長年魔法を操り、培われた繊細な感覚。任せたまえ。

 手ぬぐいを巻いた番頭に弓と矢を渡されると、俺は背筋を伸ばした。

「お侍様。その逞しき腕で、弓を大きく——」

 ——ヒュンッ!パシッッ!!

 最強天使が放った矢は、見事中央に命中。ははは。バレットよ、見ていたか?チェスの実力を伸ばし、どうにかチェックメイトしようと、俺に闘志を燃やすお前だが——。

「おっと、失礼致しやした! どうやら、お渡ししそびれたようで!」

 番頭が自分の額をペチンと叩き、ごそごそと新しい矢を取り出した。はて?俺が放ったものは、すでにど真ん中を貫いているが……。

「すげえっ! もう矢が刺さってる!」

 大はしゃぎの遊と、的を見て仰天する番頭。力也くんとしのぶちゃんは俺を見上げ、信じられないといった表情だ。二人とも、両手をゆっくりと口に添えている。

「お、お侍様……。手妻てづまか何かを?」

 手妻とは、簡単に言えば現代の手品のようなものである。我々天使と執事は、成人するまでに世界各国の言語を全て習得する。古き時代のものも含めてだ。だが、人間の語学の学び方とは異なるがゆえ、そう驚かずともよい。

 ……己を落ち着けようと語らってみたが、無駄である。秒速七十キロメートルで大空を翔ける、最強天使の俺。調節せねば、我が手から放たれる矢も同じ。人間からは視認できぬ速さで的を射抜いてしまったぞ!

「じ、実は……拙者は、でござってな!」

 テンパった俺は、手妻とマジシャンを合わせて新語を作ってしまった。帰ってもよろしいでしょうか。
 だが、ここは栃木である。そして、最上級のおもてなしを誇る、江戸ワンダフルランドだ。温かく受け入れてくれるに違いない。そう信じているぞ——!

「いやあ、お侍様は手妻シャンでらしたか! ささ、次の矢を!」

 受け入れてくれた。

 寿命のない俺だが、この地に骨を埋めたい勢いである。
 強いて言えば蒼くんだけが全く驚いておらず、どこかクールに俺を眺めていた。本当にありがとうございました。



 ——続く——

 毎日投稿してますので、ぜひ、サミュエルの活躍と震えを見守ってください!(笑)いつも読んでくださり、ありがとうございます!
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