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最強天使、新語を創作す
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「大人用の忍者衣装も作って欲しいなあ……」
すっかり演劇に魅了された遊は、十手を撫でてうっとりしている。
「遊よ。アクションも素晴らしかったが、いまは甘味を味わおう」
「うんっ!」
我々はあんみつではなく、夏の風物詩を選択。その理由はただひとつ。イチゴ帝国が誇る品種、とちおとめのシロップがあったからだ。
器いっぱいに、こんもり盛られたかき氷。店先の長椅子に腰を下ろし、華やかな紅色に染まった結晶を匙ですくう。さて、じっくりと堪能——。
む?頬張った途端、ふわふわの氷がたちまち溶けていく!甘みの中に息づく、ほのかな酸味。とちおとめの豊かな香りは、ほかのシロップとは一線を画している。頭にキーンと響くことなく、どんどん食べ進めてしまうとは……。
これぞ、日光の天然水がもたらす力だろうか?その水が与える生命力は、もやしだけではない。それを知らしめてくれたようだな。アメイジング、栃木!
「演劇を全部観るのは、難しいかもしれないですね」
誰よりも先に食べ終わった蒼くんが、スマホを手に時間を逆算している。なかなかな甘党である彼は、とちおとめシロップに練乳もトッピングしていた。
「私、せんべい焼きと矢場も気になってて。サミュエルさんはどうですか?」
蒼くんに続いて食べ終わったしのぶちゃん。弓を射るポーズを見せ、気合十分である。
「ははは。どちらも楽しもうではないか」
まずはせんべい焼き体験へ。香ばしい匂いに誘われたものの、家族連れに大人気だ。待ち時間を考え、その足で我々は矢場へと向かった。
立派な瓦屋根と、入口横に掲げられた『腕比べ・運試し』の看板。中を覗くと、順番を待つ必要はなさそうだ。台を隔て、少し離れた位置に丸い的が設置されている。ほう。あの中心に向かって矢を放つのだな?
「サミュエルさんさ、上手そうだから手本見せて?」
「うむ。いいぞ」
遊のリクエストに、俺は目を細めて視点を定めた。方向音痴ではあるが、この身が的に向かって飛んでいくわけではあるまい。長年魔法を操り、培われた繊細な感覚。任せたまえ。
手ぬぐいを巻いた番頭に弓と矢を渡されると、俺は背筋を伸ばした。
「お侍様。その逞しき腕で、弓を大きく——」
——ヒュンッ!パシッッ!!
最強天使が放った矢は、見事中央に命中。ははは。バレットよ、見ていたか?チェスの実力を伸ばし、どうにかチェックメイトしようと、俺に闘志を燃やすお前だが——。
「おっと、失礼致しやした! どうやら、お渡ししそびれたようで!」
番頭が自分の額をペチンと叩き、ごそごそと新しい矢を取り出した。はて?俺が放ったものは、すでにど真ん中を貫いているが……。
「すげえっ! もう矢が刺さってる!」
大はしゃぎの遊と、的を見て仰天する番頭。力也くんとしのぶちゃんは俺を見上げ、信じられないといった表情だ。二人とも、両手をゆっくりと口に添えている。
「お、お侍様……。手妻か何かを?」
手妻とは、簡単に言えば現代の手品のようなものである。我々天使と執事は、成人するまでに世界各国の言語を全て習得する。古き時代のものも含めてだ。だが、人間の語学の学び方とは異なるがゆえ、そう驚かずともよい。
……己を落ち着けようと語らってみたが、無駄である。秒速七十キロメートルで大空を翔ける、最強天使の俺。調節せねば、我が手から放たれる矢も同じ。人間からは視認できぬ速さで的を射抜いてしまったぞ!
「じ、実は……拙者は、手妻シャンでござってな!」
テンパった俺は、手妻とマジシャンを合わせて新語を作ってしまった。帰ってもよろしいでしょうか。
だが、ここは栃木である。そして、最上級のおもてなしを誇る、江戸ワンダフルランドだ。温かく受け入れてくれるに違いない。そう信じているぞ——!
「いやあ、お侍様は手妻シャンでらしたか! ささ、次の矢を!」
受け入れてくれた。
寿命のない俺だが、この地に骨を埋めたい勢いである。
強いて言えば蒼くんだけが全く驚いておらず、どこかクールに俺を眺めていた。本当にありがとうございました。
——続く——
毎日投稿してますので、ぜひ、サミュエルの活躍と震えを見守ってください!(笑)いつも読んでくださり、ありがとうございます!
すっかり演劇に魅了された遊は、十手を撫でてうっとりしている。
「遊よ。アクションも素晴らしかったが、いまは甘味を味わおう」
「うんっ!」
我々はあんみつではなく、夏の風物詩を選択。その理由はただひとつ。イチゴ帝国が誇る品種、とちおとめのシロップがあったからだ。
器いっぱいに、こんもり盛られたかき氷。店先の長椅子に腰を下ろし、華やかな紅色に染まった結晶を匙ですくう。さて、じっくりと堪能——。
む?頬張った途端、ふわふわの氷がたちまち溶けていく!甘みの中に息づく、ほのかな酸味。とちおとめの豊かな香りは、ほかのシロップとは一線を画している。頭にキーンと響くことなく、どんどん食べ進めてしまうとは……。
これぞ、日光の天然水がもたらす力だろうか?その水が与える生命力は、もやしだけではない。それを知らしめてくれたようだな。アメイジング、栃木!
「演劇を全部観るのは、難しいかもしれないですね」
誰よりも先に食べ終わった蒼くんが、スマホを手に時間を逆算している。なかなかな甘党である彼は、とちおとめシロップに練乳もトッピングしていた。
「私、せんべい焼きと矢場も気になってて。サミュエルさんはどうですか?」
蒼くんに続いて食べ終わったしのぶちゃん。弓を射るポーズを見せ、気合十分である。
「ははは。どちらも楽しもうではないか」
まずはせんべい焼き体験へ。香ばしい匂いに誘われたものの、家族連れに大人気だ。待ち時間を考え、その足で我々は矢場へと向かった。
立派な瓦屋根と、入口横に掲げられた『腕比べ・運試し』の看板。中を覗くと、順番を待つ必要はなさそうだ。台を隔て、少し離れた位置に丸い的が設置されている。ほう。あの中心に向かって矢を放つのだな?
「サミュエルさんさ、上手そうだから手本見せて?」
「うむ。いいぞ」
遊のリクエストに、俺は目を細めて視点を定めた。方向音痴ではあるが、この身が的に向かって飛んでいくわけではあるまい。長年魔法を操り、培われた繊細な感覚。任せたまえ。
手ぬぐいを巻いた番頭に弓と矢を渡されると、俺は背筋を伸ばした。
「お侍様。その逞しき腕で、弓を大きく——」
——ヒュンッ!パシッッ!!
最強天使が放った矢は、見事中央に命中。ははは。バレットよ、見ていたか?チェスの実力を伸ばし、どうにかチェックメイトしようと、俺に闘志を燃やすお前だが——。
「おっと、失礼致しやした! どうやら、お渡ししそびれたようで!」
番頭が自分の額をペチンと叩き、ごそごそと新しい矢を取り出した。はて?俺が放ったものは、すでにど真ん中を貫いているが……。
「すげえっ! もう矢が刺さってる!」
大はしゃぎの遊と、的を見て仰天する番頭。力也くんとしのぶちゃんは俺を見上げ、信じられないといった表情だ。二人とも、両手をゆっくりと口に添えている。
「お、お侍様……。手妻か何かを?」
手妻とは、簡単に言えば現代の手品のようなものである。我々天使と執事は、成人するまでに世界各国の言語を全て習得する。古き時代のものも含めてだ。だが、人間の語学の学び方とは異なるがゆえ、そう驚かずともよい。
……己を落ち着けようと語らってみたが、無駄である。秒速七十キロメートルで大空を翔ける、最強天使の俺。調節せねば、我が手から放たれる矢も同じ。人間からは視認できぬ速さで的を射抜いてしまったぞ!
「じ、実は……拙者は、手妻シャンでござってな!」
テンパった俺は、手妻とマジシャンを合わせて新語を作ってしまった。帰ってもよろしいでしょうか。
だが、ここは栃木である。そして、最上級のおもてなしを誇る、江戸ワンダフルランドだ。温かく受け入れてくれるに違いない。そう信じているぞ——!
「いやあ、お侍様は手妻シャンでらしたか! ささ、次の矢を!」
受け入れてくれた。
寿命のない俺だが、この地に骨を埋めたい勢いである。
強いて言えば蒼くんだけが全く驚いておらず、どこかクールに俺を眺めていた。本当にありがとうございました。
——続く——
毎日投稿してますので、ぜひ、サミュエルの活躍と震えを見守ってください!(笑)いつも読んでくださり、ありがとうございます!
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