最強天使の俺、日本で迷子になり高校生男子に懐かれ大混乱【改訂版】

エイト∞

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最強天使、歓喜のち動揺

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「そうか……。だが、夏の花々に囲まれながら、愛を深めるのもお勧めだぞ?」

 盛り上がっていた己を落ち着けつつも、あしかがフラワーランドを推す。高校生にして、やや大人な楽しみ方もいいだろう。

「久美ちゃんは恐竜と絶叫マシーンが好きだから、はしゃげるところのほうがいいかなあって迷っててさ」

 なるほど。的を得ている。とは言え、ティラノサウルスに追いかけられながら告白されても嬉しくはないだろう。ジェットコースターで急降下ののち、「好きだ!」と叫ばれるのも、また違うのでは?
 女剣士と化していたしのぶちゃんとて、イルミネーションの輝きの中で想いを伝えられ、嬉しかったはずだ。
 
「サミュエルさんはさ、夏と言えばどこだと思う?」
「うーむ……」

 俺は腕を組み、デートの定番コースを浮かべた。祭りは月末に行くため除外するとして——。

 海 → 栃木にはない。
 だが、ここにはロマンがある。ゆえに問題ない。どなただ?「必死だな」とおっしゃったのは(笑顔)。

 続けて、プール → NGだ!
 久美ちゃんの水着姿に、遊が泡を吹いて倒れる可能性が高い。いまの段階で誘うのは危険である。

 キャンプはアウトドア好きでない限り、気乗りせぬだろう。鮎のつかみ取りも経験としてはよいかもしれぬが、まだ付き合っていない二人だ。距離を縮めるデートとしては、少々異なるだろうか。

 ——コンコンコン。

「はーい!」

 ノック音がし、遊が元気に返事をした。風呂上がりの蒼くんが、スマホを片手に部屋に入る。

「遊、ちょっと提案なんだけど。サミュエルさんもいいですか?」

 タオルを首にかけた蒼くん。髪の毛が濡れたままである。

「にーちゃん! サミュエルさんが、のイルミネーション綺麗だって!」
「ここってどこだよ?」
「にーちゃんがさ、しのぶさんに告白した——!」
「那須ハイパークメンバーでばーちゃん家に一泊しないかってしのぶが言ってます」

 弟の発言をかき消すため、蒼くんがバレットに負けぬ早口になっている。

「大人数で伺って、ご迷惑ではないのか?」
「来週、ばーちゃんが婦人会の旅行で留守をする日があって。そこに合わせるのはどうかって。ばーちゃん、普段は民宿経営してるんですよ。布団もあるし、広さも余裕なんで」

 民宿に泊まるのは初めてである。一泊旅行とは惹かれるな。

「ご挨拶できぬのは残念だが、ありがたい話だ。ばーちゃんのご自宅はどちらなんだ?」

 お会いしたことのない、しのぶちゃんの祖母までもを「ばーちゃん」と呼んでいる。最強天使の品位とは。

「日光です。なので、観光がてらどうですか? 江戸ワンダフルランドに行ったばかりですけど」
「おお! 蒼くん、そしてしのぶちゃんにも感謝だ!」

 東照宮、華厳の滝、中禅寺湖——。訪れたい場所は山ほどあるぞ!

「お、お泊まりとかさ……。俺、変に思われないかな?」

 遊が天パの髪を掻き乱し、目を泳がせている。俺は笑って、首を左右に振った。六人で泊まるのだ、心配あるまい。添乗員の俺もいるとなれば、久美ちゃんのご両親も安心するだろう。

「遊よ、案ずるな。喜ぶはずだぞ。すぐに連絡するといい」
「そっか! じゃあ、力也先輩に『お泊まりどうですか?』って聞いてみるね!」

 ……ま、まあ、その点においても問題は起こらぬだろう。俺と遊の思考は、どうやら腕時計の秒針のようにズレているようだ。

「あ、もしもし? 力也せんぱあーい! にーちゃんの彼女のしのぶさんのばーちゃんの家に泊まりませんか!?」

 細かな情報を伝えたい、その熱意は伝わった(キリッ)!改めて、移動距離にすると県内をかなり巡っているのでは?これも美浜家の大木に落下したおかげである。落下したおかげとか。開き直り過ぎな件。

「サミュエルさん、東照宮気になってましたよね?」

 蒼くんの問いに頷く。三猿、眠り猫、別名『日暮ひぐらしの門』とも呼ばれる陽明門など。繊細な彫刻作品を、この目で確かめてみたいのだ。

「だが、俺に合わさずともよいぞ?」
「まあ、せっかくなんで。サミュエルさんって神社に行っても平気なんですね」
「ははは。人間を脅かさず、陥れず、平和を求める心に壁など——」

 ん?

「く、久美ちゃん! あのさ、にーちゃんの彼女のしのぶさんのばーちゃんの家に——!」

 力也くんに続き、久美ちゃんにも緊張気味に電話をかける遊。その大声に遮られたものの、先ほどの蒼くんの発言はいったい……?

「あ、しのぶからです。詳細決まったら伝えますね」

 蒼くんが握るスマホから、バイブ音が響く。なんだろうか。細かな振動が、俺の胸の動揺と重なっているんだが。

「う、うむ。しのぶちゃんにもよろしく伝えて欲しい」
「わかりました。……もしもし?」
「メンバーは、サミュエルさんとにーちゃんとしのぶさんと力也先輩と俺と——!」

 声を張る遊とは対照的に、蒼くんは片方の耳に人差し指を突っ込むと、静かに部屋を去っていった。

 もう、なんだ。ここまでくると、清く正体を明かしたほうがいいのでは(震)。
 
 

 ——続く——
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