花は闇に誓いを捧ぐ

希音

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第三章 守られる私じゃなく。

守る人として ~since レオン~

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砂の舞う広場に、二人が向かい合って立つ。

周囲では兵士たちが輪を作り、好奇心と侮りの混じった視線を向けていた。

相手はギルバート伍長。

屈強な体躯を誇る男で、力任せの剣筋を得意とする。

「泣くなよ、お嬢様」

挑発めいた笑いが、空気をざらつかせた。

俺は静かに息を吸い、心を落ち着かせた。

――リディアは、もう守られるだけの女じゃない。

「始め!」

号令と同時に、ギルバートの剣が風を裂いた。

重い。だが――遅い。

刃が頬をかすめる瞬間、足を滑らせるようにかわし、リディアは反撃に転じた。

相手の手首を叩き上げ、剣を宙に弾き飛ばす。

「……っ!?」

驚愕するギルバート。

その懐に踏み込み、剣先を喉元へ突きつけた。

「これでも飾りに見えますか?」

広場が静まり返る。

風が吹き抜け、砂が舞った。

ギルバートは苦笑しながら、負けを認めるように剣を拾い上げた。

「……参った」

* * *

観覧席の影から、その光景を見ていた俺は、無意識に拳を握りしめていた。

能力をそんなに使わずに勝った。

使ったのは誰でも使えるような魔法だけ。

そんな魔法ですら能力値がとても高い。

(……見事だ)

最初に見たときは、華奢で、か弱く見えた。

だが今目の前にいるのは――

敵を見据え、一歩も引かない戦士の眼だ。

ただ強いだけじゃない。

誰かを守りたいと願う強さ。

それを、彼は知っていた。

彼女の剣筋には恐れも迷いもなかった。

むしろ――何かを断ち切ろうとする意志が滲んでいた。

その姿が、目に焼き付いて離れない。

* * *

「見事だ、リディア」

「ありがとうございます」

「思った以上に速い。誰に学んだ?」

「父です。かつて王国軍に仕えていました」

「……なるほどな」

陽光の中で振り向くリディアの髪が揺れ、金の光を散らした。

その一瞬――胸の奥に、知らない痛みが生まれた。

(……俺は、何を見ているんだ?)

気づけば、兵士たちに向けて命じていた。

「性別など関係ない。実力で示した者を、侮るな」

その言葉と同時に、広場の空気が変わる。

尊敬と静かな畏れが、リディアの背に集まった。

彼女は剣を収め、レオンに一礼する。

「私、少しは役に立てそうですか?」

「少しじゃない。――充分だ」

微かに笑うその横顔に、俺はまた胸がざわつくのを感じた。


俺はやっぱり彼女のことが―――
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