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DAY2 希望と絶望
3、眠りと覚醒
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【β世界・レジスタンス医療区画】
時刻:不明
薄暗い医療室。
白い天井。
低く、一定の電子音。
医療区画の簡易ベッドの上で、“オレ”が横たわっている。
包帯に覆われた脇腹。
固定器具、人工呼吸補助装置。
荒廃した世界の“生き延びるための医療”。
その横で、救護班のミオが端末を確認していた。
「……?」
数値が、微かに変動する。
脳波。
呼吸。
ミオは、顔を上げた。
「……まさか」
次の瞬間、オレの指が、微かに動く。
まぶたが、ゆっくりと開く。
最初に映るのは、天井のひび割れと、剝き出しの配線。
「カズマ!」
目が、ゆっくりと開く。
焦点は、まだ合っていない。
かすれ声で、オレが言う。
「……まだ……生きてる、か……」
和真(? オレの声…?)
脇にいたミオが、息を呑む。
「見て!
意識が戻ったわ!」
――聞き覚えのある女性の声。
ミオは、すぐにその肩に手を置く。
「無理に動かないで。
ここは後方医療区画」
顔を上げると、いつも見る夢の既視感を覚えた。
見覚えのある、女の子の顔が、オレを覗き込んでいた。
「カズマ! 大丈夫?」
ミオは、静かに言った。
「意識が戻っただけでも奇跡よ」
聞きなれた声を聞きながら、オレの視界は白く広がっていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夢。
荒廃した街。
崩れたビルの隙間を、オレは走っている。
だが、今回は違っていた。
銃はない。
敵もいない。
ただ、目の前に立つ一人の男。
戦闘服姿の――もう一人のオレ。
だが、顔はぼやけている。
「……あんたは……」
彼は、静かに立っていた。
傷は、ない。
「眠れ」
それだけ言う。
オレは、驚くほど自然に、その言葉を受け入れた。
身体の力が、抜ける。
地面に座り込み、そのまま目を閉じる。
――初めてだった。
何も追われず、何も撃たず、何も考えずに眠る夢。
遠くで、誰かの声がする。
教授の声。
スギヤマの低い声。
そして、どこかで、確かに聞いた声。
「……考えろ。
オマエが選べ」
だが、今回は――その声に、恐怖はなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時刻:AM 05:32
目を覚ますと、同じように天井が見えたが、こっちは綺麗に広がっている。
スギヤマ「起きたか」
近接訓練で疲れ切ったせいか、いつもの不眠症の兆候はなくなっており、ぐっすり熟睡していたようだ。
治療薬初期サンプルが、保冷ケースに収められている。
教授は疲労の色を隠さず、椅子に深く座っている。
スギヤマと和真が、静かにその場に立つ。
突然――
HUD端末が、低い電子音を鳴らす。
端末表示
〈β-WORLD MEDICAL CHNNEL〉
〈SIGNAL:UNSTABLE〉
スギヤマ「……通信が開通したか?」
端末のノイズが一気に安定する。
画面に、β世界のもう一人の和真の顔が映る。
初めて、瓜二つの自分を見て、息を呑んだ。
やつれ、傷だらけだがーー確かに”生きている”。
和真が、思わず一歩前に出る。
「……オレ……?」
画面の向こうの男が、かすかに笑う。
カズマ「夢で……散々、世話になったな」
一瞬、和真の胸が締め付けられる。
スギヤマ「……目が覚めたか」
カズマ「ああ。
そっちは……うまくいったか?」
スギヤマは、無言で保冷ケースを見る。
「治療薬の初期サンプルが完成した」
β世界カズマの表情が、わずかに笑う。
「……そうか」
言葉は短いが、そこに込められた意味は重い。
カズマ「さっそくで申し訳ないが、時間がない」
スギヤマが眉をひそめる。
カズマ「『エデン』が次に狙うのは--α世界だ」
和真が息を呑む。
カズマ「エデンのアジトを占拠したら、そこにα世界での地下鉄テロを起こす機密計画書が発見された」
スギヤマ「何!?」
カズマは左のスクリーンに目をやりながら、
「地下鉄テロ実行場所の座標観測点は地下鉄〇〇線〇〇駅に設定されている。
――発車時刻は08:45発の上り線」
少し間を置いて、
「ターゲットは未接種者専用車両……
殺戮じゃない――見せしめだ」
少し頭を巡らせて、和真の脳裏に、澪の顔が浮かぶ。
「澪がいつも乗る路線だ!」
スギヤマが、静かに口を開く。
「今度は、こっちの番だ」
カズマ「ああ……
α世界は、そっちに任せる」
通信が不安定になり始める。
カズマ「もう一人の和真」
和真「……」
カズマ「そっちの澪を頼む」
一拍置いて、
カズマ「”編集を受けない”って選択、間違ってなかった」
ノイズが強くなる。
カズマ「オレが、オレらしくいられる。
――それを――証明してくれ」
通信、遮断。
研究所に、再び静寂が戻る。
和真は、拳を強く握りしめる。
「……次は、オレが戦う」
スギヤマは、何も言わず頷く。
世界は繋がった。――今度は、選択が世界を分ける。
時刻:不明
薄暗い医療室。
白い天井。
低く、一定の電子音。
医療区画の簡易ベッドの上で、“オレ”が横たわっている。
包帯に覆われた脇腹。
固定器具、人工呼吸補助装置。
荒廃した世界の“生き延びるための医療”。
その横で、救護班のミオが端末を確認していた。
「……?」
数値が、微かに変動する。
脳波。
呼吸。
ミオは、顔を上げた。
「……まさか」
次の瞬間、オレの指が、微かに動く。
まぶたが、ゆっくりと開く。
最初に映るのは、天井のひび割れと、剝き出しの配線。
「カズマ!」
目が、ゆっくりと開く。
焦点は、まだ合っていない。
かすれ声で、オレが言う。
「……まだ……生きてる、か……」
和真(? オレの声…?)
脇にいたミオが、息を呑む。
「見て!
意識が戻ったわ!」
――聞き覚えのある女性の声。
ミオは、すぐにその肩に手を置く。
「無理に動かないで。
ここは後方医療区画」
顔を上げると、いつも見る夢の既視感を覚えた。
見覚えのある、女の子の顔が、オレを覗き込んでいた。
「カズマ! 大丈夫?」
ミオは、静かに言った。
「意識が戻っただけでも奇跡よ」
聞きなれた声を聞きながら、オレの視界は白く広がっていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夢。
荒廃した街。
崩れたビルの隙間を、オレは走っている。
だが、今回は違っていた。
銃はない。
敵もいない。
ただ、目の前に立つ一人の男。
戦闘服姿の――もう一人のオレ。
だが、顔はぼやけている。
「……あんたは……」
彼は、静かに立っていた。
傷は、ない。
「眠れ」
それだけ言う。
オレは、驚くほど自然に、その言葉を受け入れた。
身体の力が、抜ける。
地面に座り込み、そのまま目を閉じる。
――初めてだった。
何も追われず、何も撃たず、何も考えずに眠る夢。
遠くで、誰かの声がする。
教授の声。
スギヤマの低い声。
そして、どこかで、確かに聞いた声。
「……考えろ。
オマエが選べ」
だが、今回は――その声に、恐怖はなかった。
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時刻:AM 05:32
目を覚ますと、同じように天井が見えたが、こっちは綺麗に広がっている。
スギヤマ「起きたか」
近接訓練で疲れ切ったせいか、いつもの不眠症の兆候はなくなっており、ぐっすり熟睡していたようだ。
治療薬初期サンプルが、保冷ケースに収められている。
教授は疲労の色を隠さず、椅子に深く座っている。
スギヤマと和真が、静かにその場に立つ。
突然――
HUD端末が、低い電子音を鳴らす。
端末表示
〈β-WORLD MEDICAL CHNNEL〉
〈SIGNAL:UNSTABLE〉
スギヤマ「……通信が開通したか?」
端末のノイズが一気に安定する。
画面に、β世界のもう一人の和真の顔が映る。
初めて、瓜二つの自分を見て、息を呑んだ。
やつれ、傷だらけだがーー確かに”生きている”。
和真が、思わず一歩前に出る。
「……オレ……?」
画面の向こうの男が、かすかに笑う。
カズマ「夢で……散々、世話になったな」
一瞬、和真の胸が締め付けられる。
スギヤマ「……目が覚めたか」
カズマ「ああ。
そっちは……うまくいったか?」
スギヤマは、無言で保冷ケースを見る。
「治療薬の初期サンプルが完成した」
β世界カズマの表情が、わずかに笑う。
「……そうか」
言葉は短いが、そこに込められた意味は重い。
カズマ「さっそくで申し訳ないが、時間がない」
スギヤマが眉をひそめる。
カズマ「『エデン』が次に狙うのは--α世界だ」
和真が息を呑む。
カズマ「エデンのアジトを占拠したら、そこにα世界での地下鉄テロを起こす機密計画書が発見された」
スギヤマ「何!?」
カズマは左のスクリーンに目をやりながら、
「地下鉄テロ実行場所の座標観測点は地下鉄〇〇線〇〇駅に設定されている。
――発車時刻は08:45発の上り線」
少し間を置いて、
「ターゲットは未接種者専用車両……
殺戮じゃない――見せしめだ」
少し頭を巡らせて、和真の脳裏に、澪の顔が浮かぶ。
「澪がいつも乗る路線だ!」
スギヤマが、静かに口を開く。
「今度は、こっちの番だ」
カズマ「ああ……
α世界は、そっちに任せる」
通信が不安定になり始める。
カズマ「もう一人の和真」
和真「……」
カズマ「そっちの澪を頼む」
一拍置いて、
カズマ「”編集を受けない”って選択、間違ってなかった」
ノイズが強くなる。
カズマ「オレが、オレらしくいられる。
――それを――証明してくれ」
通信、遮断。
研究所に、再び静寂が戻る。
和真は、拳を強く握りしめる。
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