Last Lesson

駄文のヒロ

文字の大きさ
29 / 31
『Last Lesson』設定集(ネタバレ注意)

世界観解説

しおりを挟む
 ―『Last Lesson』の世界について―

 三つの世界と、ひとつの選択

 本作の舞台には、明確に区別された三つの「世界」が存在します。

 α世界
 私たちとほぼ同じ、平穏な現代社会。
 未完成の技術は慎重に扱われ、世界は一見、正しく進んでいるように見えます。

 β世界
 同じ技術が「進化」の名のもとに拡張され、人間の尊厳を失った世界。
 善意から始まった選択は、やがて暴力と管理を生み、世界は荒廃しました。

 c世界?
 α世界とβ世界が交錯し、ある“選択”を経て到達した世界。
 それは新しい世界ではなく、試練を終えたα世界です。

 本作は、「世界を救う物語」ではなく、世界が“選ばれる”物語です。

 ----------------------------------

 エデンベクターとは何か

 エデンベクターとは、人間のゲノムに直接介入し、能力や精神を最適化するために開発された編集技術です。
 β世界ではこの技術が義務化され、「苦しみから解放される代わりに、人間性を失う」社会が完成してしまいました。

 α世界では、その完成を拒んだはずの技術が、別の形で社会に忍び込み始めます。

 本作は、技術そのものを悪とは描きません。
 問われるのは常に、「それを、誰が、何のために使うのか」という一点です。

 ---------------------------------

 並行感覚干渉症候群と“夢”

 主人公・和真が見る夢、そして不眠症は、β世界との微小なポータルが無意識に開いていたことによる現象です。
 これは病ではなく、二つの世界に存在する“同一個体”が重なり合った結果。
 夢は予言ではありません。
 救いでもありません。
 それはただ、「もう一つの可能性を生きてしまった自分」の声でした。

 ---------------------------------

 教師と指導者 ― 同じ顔の理由

 担任教師と、β世界のレジスタンス指導者は、異なる世界に存在する同一個体です。
 両者は共に「教える立場」にあり、最後まで主人公を“導く存在”として立ち続けます。
 しかし、物語の終盤で彼は消えます。
 それは敗北でも犠牲でもなく、「教える必要がなくなった」という、役割の終わりです。

 ---------------------------------

 この物語が描くもの

『Last Lesson』は、ヒーローが世界を救う話ではありません。
 痛みから逃げる選択、
 誰かに決めてもらう安心、
 “正しさ”に身を委ねる誘惑。

 それらを前にして、それでも人として生きるという、とても小さく、しかし決定的な選択を描いた物語です。
 世界が変わった理由は、奇跡でも革命でもありません。
 ただ一人の高校生が、「注射を拒否した」
 それだけです。

 --------------------------------

 エピローグについて

 物語の最後に描かれる日常は、完全な幸福ではありません。
 そこには説明されない違和感が残ります。
 しかしそれこそが、この世界が“作り直されたのではない”証拠です。
 授業は終わりました。答えは配られません。
 けれど、生き方だけは、確かに残りました。

 ― 最後の授業は、読者一人ひとりに委ねられています ―
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

あなたのいない世界に私は生まれた

駄文のヒロ
SF
 西暦2051年12月上旬。  レイヤー聖台高等学校2年生の横澤穂花は、母である智美と穏やかな日々を送りながらも、心のどこかで言いようのない違和感を抱いていた。  優しく、何不自由なく育ててくれたはずの母――  けれど穂花は、『この人だけじゃない』という感覚を拭えずにいる。  自分を見守っている“もう一人の誰か”。  声も姿も思い出せないのに、確かに存在している気配。  それが母なのか、記憶なのか、あるいはただの思春期の錯覚なのか――  穂花自身にも分からない。  そんなある日、学校で囁かれている都市伝説を耳にする。  “世界を見守る守り神”  人知れずこの世界を監視し、迷える者の問いに応える存在がいるという噂。  真実を知りたい。  自分が感じているこの違和感の正体を確かめたい。  穂花は、誰にも打ち明けられない想いを胸に、その“守り神”に会いに行くことを決意する。  ――その選択が、世界の秘密と、彼女自身の出生の真実を揺るがすことになるとも知らずに。  人々のそれぞれの愛情を紡ぐ『あな生き』シリーズ最終章、始動!

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

アガルタ・クライシス ―接点―

来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。 九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。 同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。 不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。 古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。

あなたのいない世界でバージンロードを歩く

駄文のヒロ
SF
 西暦2051年6月上旬。  一年前の「ロンドン崩壊事件」を経て、レイヤー世界は表向きの安定を取り戻していた。  だが人々の心には、「世界は壊れうる」という不安が、静かに残り続けている。  東京レイヤー総合管理塔で働く研究員・朝霧結奈(24)は、レイヤー創成期の移行実験中に亡くなった父・朝霧雅人の死亡記録に、説明のつかない違和感を覚えていた。  公式には「実験中の突然死」と処理されたその記録に、近年になって管理層による不可解な参照痕跡が残されていたのだ。  個人研究として調査を進める結奈は、父の死が単なる事故ではなかった可能性と、レイヤー世界の深層に隠された過去に触れていく。  やがて彼女は、この世界を裏側から支える存在と静かに交錯する。  それは、レイヤーの中枢に関わる、名を持たぬ“誰か”だった。  その交錯で、知られていない16年前のレイヤー移行実験暴発事故の真相が明らかになる。  これは、あなたのいない世界で、それでもあなたと歩くための物語。 『あなたのいない世界であなたと生きる』第2弾開幕!

女神の白刃

玉椿 沢
ファンタジー
 どこかの世界の、いつかの時代。  その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。  女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。  剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。  大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。  魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。  *表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】新・信長公記 ~ 軍師、呉学人(ごがくじん)は間違えない? ~

月影 流詩亜
歴史・時代
​その男、失敗すればするほど天下が近づく天才軍師? 否、只のうっかり者 ​天運は、緻密な計算に勝るのか? 織田信長の天下布武を支えたのは、二人の軍師だった。 一人は、“今孔明”と謳われる天才・竹中半兵衛。 そしてもう一人は、致命的なうっかり者なのに、なぜかその失敗が奇跡的な勝利を呼ぶ男、“誤先生”こと呉学人。 これは、信長も、秀吉も、家康も、そして半兵衛さえもが盛大に勘違いした男が、歴史を「良い方向」にねじ曲げてしまう、もう一つの戦国史である。 ※ 表紙絵はGeminiさんに描いてもらいました。 https://g.co/gemini/share/fc9cfdc1d751

処理中です...