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48 配達サービス

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 途中、皮を剥ぐところまでした岩熊を幌馬車に載せつつ、一行は休憩場所へ到着した。

 露店再び…であるが、その前にファーナは岩熊をどうするか華に訊いた。

『毛皮、欲しい、です!肉、欲しい、です』

『じゃあ、毛皮は鞣したのを今度持って来るわね。肉はどれくらい?』

『う~ん、持つ、出来る、くらい?』

 華としては、干すつもりなのでたくさんあればあるだけ嬉しいのだが、今日はフライパンなどの調理器具を持って来てくれているようだったので、多分そんなに持てないだろう。

 そう思っていたのだが、なんと山の上まで配達してくれると言う。

『ありがとう。うれしい、でも、山、ファーナさん、だめ、です。けが?する』

 有り難いのだがと、老齢のファーナを気遣って遠慮する華だったが、ロイ以外の護衛チームを紹介された。

『わたしとアルベルトは行けないけど、このシアとマール、あとロイが運んでくれるから大丈夫よ!』

『よろしくね。ハナ!』

『まかせろー』

 わざわざ山の上まで荷物を運んで貰うのは申し訳ない気もするが、シアとマールに声を掛けられた華は、有り難く配達をお願いすることにした。

(初めて藤棚さんにお客さんが来る‼ お茶でもあれば良かったのに。あ!せっかくだから干し蛇肉をお土産に持っていって貰おう。階段作っておいて良かった~!)

 そうと決まればと、ロイとマールとで肉を切り出して、シアとエドワードが摘んできた大きな葉っぱにくるんでいく。
 その間に華は買い物をする。

『岩熊の胆は薬に使えるのよ。ありがとう、ハナ』

 解体や毛皮の加工や運賃のことを訊くと、華が要らない内蔵等でお釣りが出るくらいだという。
 買い物の前に蛇骨と鱗を売って、心置き無く買い物をするのだった。





 今回ファーナが販売するのは、山で暮らす華のためだけに揃えたラインナップである。
 ファーナがどうしても入れたかった服も、もちろん布の薄いヒラヒラスカート等ではなく、耐久性があり、且つ可愛いをコンセプトにしている。

 アルベルトと一緒にあーだこーだきゃっきゃうふふと揃えている内に、明らかに華には持ち運び出来ないほどの大荷物になってしまった。

 鱗を持ってくると言っていたので華が必要ならそれらを全部買えるだろうが、運搬出来ないという理由で買えない華を想って深い哀しみに暮れるふたりに、呆れたロイが言い出したのだ。

『俺が運びますよ。華が登れる山なら荷物を運ぶくらいは行けるでしょう』

 その言葉にアルベルトと、ついでにホーソンが食らいついた。

 そして一番華が慣れていて言い出しっぺでもあるロイと、女性であるシアと、純粋に荷運び要員であるマールの3人に指令が出たのである。

 配達の振りをした、華の生活環境等の実態調査だ。

 勿論、華が自宅への配達を承知すれば、が大前提ではあるが、それはファーナとアルベルトの仕事である。

『ハナの家、もしくは集落の場所の特定とその規模の把握。何人くらいでどうやって暮らしているのか』

『何か困っていることがあるようなら、出来るだけ便宜を図ること』

 その他、気が付いたことがあれば何でも報告すること。

 それらをあらかじめ言い聞かされていた護衛チームのメンバーたちだった。





 とは言え、大量の岩熊肉もあるので、結果的に華を含めた4人とも荷物がいっぱいになってしまった。
 エドワードを追加投入するかとなったとき、華が先日買った鍬で階段を作った事を言うと、アルベルトが同行を希望してきた。

『じゃあ、僕も一緒に行っていいかな?』

 華としては、階段があるから山登りが楽になったよ、くらいのつもりで言ったのだが…。

『アルベルトさん、たくさん山、大丈夫?』

 すでに可愛い孫娘のように思っている華に心配されてもお祖父ちゃんはますます張り切るばかりである。
 結局、アルベルトをフォローするために、エドワードも付いていくことになった。

 ファーナとアレックスは残るが、お別れを言うファーナに華は見送りにまた戻って来ると言う。

(((もしかして、結構近い?)))

 ファーナが一緒に行くなどと言い出さない内に配達組+αは出発するのだった。
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