異世界で、平和を願う。

ちょこぼーらー

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 休憩場所から少し離れた所から山に入り、華の作った階段を登っていく。

 華が先日買った鍬でこの階段を作ったと聞くと、アルベルトは感激してロイたちも誉めてくれたので、華は照れ照れしながら鍬を売ってもらったお蔭だと言い、ご機嫌である。

『えへへ。鍬、ありがとう』

 階段はあるが、蔦で作った縄はそのままなので、アルベルトも危なげなく登っていく。
 すると、2、30分ほどで竹藪の道に着いた。

 そこを抜けると小さな滝の川原である。

『ここが神龍湖の河の源流か…』

「“しんりゅう…”?」

『神龍湖。水がたくさんあるんだよ』

(川の向こうのたくさんの水…。こんな小さな川が湖か海に続いてるんだ…)

 岩に渡した細い筏のような竹の簡易橋を通るときに、荷物を持った男の人たちが渡れるか心配だったが、彼等は竹だけのところは決して踏まず、華より遥かに長い脚で岩の上の竹だけを踏み、なんと数歩で渡ってしまった。

 渡る前はハラハラしていた華だったが、ロイたちが難なく川を渡ると思わず拍手を送ってしまい、にこにこしたアルベルトに頭を撫でられるのだった。





 川原から階段を登ると、数分で竹垣が見えてくる。

 アルベルトたちは初め、防衛を意識した村なのだと思ったのだが、近付くにつれて、どうも規模の小さな集落のようだと思い。

「ただいまー!どうぞお入りください!」

 堀を巡らせた竹垣の、扉を開けた内部に入って、どう見ても一軒しか家がないことにまさか、と思った。

『アルベルトさん、みる!』

 華に袖を引かれて案内されたのは、竹垣の内側に作られた畑だった。
 しかし、アルベルトの知っている畑とは明らかに違っていた。

 4メートル四方程の畑は非常に美しく整えられており、4列の畝は真っ直ぐで、どうやってか高さまで揃っている。
 斜面の高い方を掘り下げて水平にしているのは分かるものの、どうやったら4列全て線を引いたように真っ直ぐに畝を作れるのだろう。

『さすが女の子の作るものは畑までキレイだなー!』

 マールにも他の畑と違うのは一目で分かるようなのだが、違う。そういうことじゃない。

「これ」

 声を掛けられてハッとして華の指差すところを見ると、僅かに土が盛り上がって、その隙間から芽を出す直前の様子があった。よく見ると畝の中心に、これまた真っ直ぐ同じように少しだけ土が盛り上がっている。落ち葉混じりのふかふかな土なので、言われてよく見ないと分からなかった。

『オマケ、種、ありがとう』

 にこにことお礼を言う華に思わずなでこなでこしてしまったアルベルトは、華を連れて帰りたいというよりむしろここで華と一緒にのんびり暮らしたくなってしまった。

 その後すぐに茅葺きの小さな竹壁の家に通され、更に驚くことになった。

 家の前に土の器が並べてある焚き火が燃えていたが、家の中にも焚き火がある。
 床は面積の半分以上に竹が敷いてあり、入って来たところは土のままで、竈がちゃんとある。

(床の中心にあるこの焚き火はいったい…?)

「靴を脱いで上がって下さい。荷物はそっちの隅にお願いします」

 全員は入れないので、荷運び戦力外のアルベルトは外に出て荷運びを見守ろうとした。

『なにこれーっ!』

 しかしすぐに家の中からシアの叫び声が聞こえ、驚いて中を覗くと、華に言われたように靴を脱いで竹の床に乗ったシアが、頻りに足踏みをしている。

「“なにこれ”?」

『ハナ、これすっっごくキモチが良いっ!えーと、足!うれしい‼』

『え~!どれどれ?うわっ。じわーっとクル!』

『お前らまずこれ置け』

 マールまで靴を脱いで竹の床で足踏みをし出したのを見て、華が笑っている。

「足気持ちいいですよね。“アルベルトさん” 竹踏み “する”?」

 華に誘われてアルベルトも靴を脱いで脱いで上がってみる。
 すると、ブーツを履いていた足裏か溶け出すように気持ちが良い。

『これは気持ちが良いね…!』

『きもちが、いい、ね!』

 気持ちが良いの言葉を獲得してにこにこしている華を見て、この“タケフミ”から試してみてもいいかもしれないとアルベルトは考えた。

 しかし、その交渉をする前にどうしても気になることがあった。
 気になると言うより、確信に近い。



 この娘はこんな山の中に、独りで暮らしているーーー。
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