異世界で、平和を願う。

ちょこぼーらー

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50 じょうほうりょう

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『ハナ、このタケフミ、作ってもいいかな』

『? いい、です。??』

 なぜアルベルトが許可を求めているのかが解らず首を傾げる華に、アルベルトはもう少し詳しい話しをする。

『この気持ちが良いタケフミのマットを僕らのお店で作って売ってもいいかな?もちろん売り上げの何割かはハナのものだよ』

『?お金、いらない、です』

 身振り手振り、華のノートでの図解をしても、華はお金はいらないと言う。商品のアイデア料だと言うのは理解しているようなのに。権利ではなく、完全に買い取った方がいいのだろうか…。

 華にしてみたら、自分が考えた訳でも提案した訳でもない、ましてや作るのも販売するのもノータッチで、いったいどこに自分が貰えるお金が発生するのかがさっぱり解らない。

『ハナ。ハナの持ち物やすることで、僕たちに有益な知識を教えてくれた事に対する情報料なんだよ』

『じょうほうりょう?』

 ってことでどうかな…。華が納得できるように説明をする。
 華が勝手に作ればいいと言っているのだから、勝手に商品開発でも販売でもすればいいのだが、アルベルトにはこの後の展望がある。

 タケフミだけならそれでもいいかもしれないが、ファーナがいままで忌避されていた黒の染めを流行らせたがっている。まあ、忌避されていたのはあれほど美しく上品には染められないからだが、それを研究させたがっている。今日は更に太い糸とそれで作られた上着に興味津々だった。
 携帯用の鏡と櫛、最終的にはあの“鉛筆”の再現・開発の契約まで持っていきたいとホーソンと話していた。

 しかし、上手いこと華の住む家に来ることができて話が変わってきた。

 規模は分からないが、華の住む集落の長か華の家族かが交渉相手だろうと思っていた。言葉の違う相手とどう交渉に持っていけばいいのかと。

 ところが華が誰かと一緒に住んでいる様子はない。

 荷物を運び入れたのとは反対の隅には、先日の布で作ったシーツらしきものが畳んであるが、他に寝具は見当たらない。むしろ華の独り暮らしだとしても、これまでどうやって暮らしていたのかと思うと、真剣に連れて帰って家の子にしたくなってくる。

 それだけではなかった。

 華の畑はただ美しいだけではない。
 わざわざ面倒な畝立てなどしない農家も多い中、あれだけきっちり畝を立てているのは性格がどうの以前に、農家の知らない何か理由があるのだろう。

 それに一斉に出始めている芽。
 同じ日に植えたからといって、あれほど発芽が揃うものだろうか。

 このタケフミもそうだった。
 アルベルトはこれから華と付き合っていくにあたって、絶対に華を食い物にはしたくなかった。
 しかしそうではない商人や貴族もいる。
 侯爵家で生まれ育った自分や、大公家の息のかかったローレンス商会ならば華を守ることが出来るだろう。

 なんとか華に納得してもらった上で、契約金やら情報料やらを受け取ってもらいたいと言うのに。

『じょうほうりょう。ことば、もらう。わたし、じょうほうりょう、はらう?』

 なんて言ってくるのだ。

 言葉の違う相手に、ああ言えばこう言うが出来るのは、それだけ頭の回転が早いと言うことなのだろうが、手強い。



 その後、ロイにも竹踏みを体験してもらい『凄く気持ちいい』『商品になったらみんな喜ぶ』だのと言ってもらって、なんとかタケフミ商品化の情報料を、想定していた10分の1である千リーンだけ受け取って貰えたアルベルトだった。

 ちなみに藤棚さんより明らかに大きいエドワードは、そもそも藤棚さんに入るのを遠慮した。
 アルベルトもロイもマールも藤棚さんの中ではでは屈んでいたのを見ての判断である。







 干し蛇肉をお土産に持たせて、アルベルトのリクエストで手を繋いで山を下りていく。
 もうすぐ街道に出るその手前で、華が寄り道を提案した。

 そこは比較的木も少なく傾斜も緩い場所で、クローバーが群生していた。

「ミライトちゃんたちのおやつに摘んでいきます」

 クローバーを摘み始めた華に、ファーナのお土産に白詰草を摘んでいるのだろうと思い、華と一緒になってきゃっきゃと草を摘んで休憩場所に戻った一同は、摘んできた草を馬に食べさせ始めた華に驚いた。

 もちろんロイに食べさせていいか訊いた華ではあるが、ロイがよくわからないまま返事をしたのだ。

 華がミライトに手ずから食べさせているところに、他の馬も寄って来てむしゃむしゃするので、華が摘んだ分はあっという間に無くなってしまった。

『うひょー。めっちゃ食べてるー』

 マールも自分の馬に食べさせて喜んでいる。

(これもそうなのか…)

 ファーナに可愛い白詰草の花を差し出そうとしていたアルベルトは固まっている。

 アルベルトたちにとっては商品の詰め物に使うだけの雑草だったのだが、華にとっては、この日乗せてくれたミライトたちへのお土産の馬肥うまごやしだったのだ。
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