異世界で、平和を願う。

ちょこぼーらー

文字の大きさ
82 / 154

81 再びローレンス商会へ

しおりを挟む
 西街道で牧場見学をした華とシアは、町に戻り予定通り種苗屋で買い足しをした。

 ネギやハーブ等、食べられるものを何種類かを今度は苗で3つずつ。

『それだけでいいのかい?』

 綿を150買った華を覚えていた種苗屋のおじさんが聞くが、別に売る為に育てる訳ではない。

『わたし、食べるだけ』

 それより華は、店の隅に立て掛けてあるスコップと箱車が気になっていた。

『これ?』

 指を指してシアを見ると、心得たもので名前を教えてくれる。

『これはスコップと箱車』

 書き書き。

『ハナ、欲しいの?これは売り物じゃないと思うわよ?』

 華が欲しいと言うと、多分商会で買えるだろうとの事だったので、種苗屋を出てローレンス商会へ向かった。





 種苗屋からローレンス商会までは数百メートル。
 ローレンス商会自体が道を挟んで百メートルほどあるのだが。

 その、大きな店舗の中でもシアが真っ先に案内してくれた文具の売り場に着いた途端、男の子二人が駆け寄って来て、華に深々と頭を下げたのだ。

『売り場を走らない!』

『『ごめんなさい!』』

 戸惑う華の横でシアが何か叱っているが、二人が謝っているのは分かったのでノートを開く。
 書き書き。

『売りバヲ…?』

『売り場。ここね。お店の中、売り場。走る、と駄目ぇー、しない。で、走らない、よ』

 手で×を作ってその場で走る真似をするシアに、華はふむふむとノートに書いて行く。

『売りばを、はしらない?』

『『ごめんなさい!』』

 華がノートを読み上げると再度頭を下げる二人に華も改めて戸惑う。
 この二人は多分、昨日お店の掃除をしていた二人ではないだろうか。

『ごめんなさい、何?』

『あの、昨日はファーナ様、アルベルト様なんて人はいないって言っちゃって…』

『本当はいたんですけど、いなくて。知らなかったんです!』

『?』

(いた?いない?どっち?)

 よく分からないが、こうして謝るということは、いたということなのだろう。
 華が納得していると、見覚えのある赤い髪の店員がやって来た。

『そんなんで分かるか』

『カイさん、こんにちは』

『ぅお、はいっ、こんにちは。…よく覚えてたな…』

 カイの呟きも華にはしっかり聞こえていた。
 華の中でカイは塩の壺とセットで記憶されているので忘れていないのだ。

『ハナさん。こっちがパマットでこっちがテオ。新人…店に入ったばかりでファーナ様とアルベルト様のことを知らなかったんだ。いないって言って申し訳ありませんでした』

『『も、申し訳ありませんでした!』』

 華は駄目元で訊ねただけなので、その後捜索がかけられていたことなど知らない。
 魔獣を窓から見ていたら、たまたま偶然、町の塀を移動するロイたちを見付けられたので、帰る前に会えてすごいラッキーだったと思っている。
 しかしパマットとテオは、華が店を訪ねて来たと発覚した時のカイたちの剣幕や慌てっぷりから大変なことを仕出かしてしまったと思い、一夜明けてこの日、来店があるかもしれないと聞いて、朝からずっと外を気にしていたのだ。

『ごめんなさい、いらないです。もうしわけありません、ないです。ファーナさん、会いました』

『もう会えたから謝らなくてもいいって。困るから止めろって』

『言ってないだろそんなこと』

『そんなことより、紙ってこれだけ?もっと薄くて安いの無いの?』
 シアが意訳で謝罪を切り上げさせ、紙の種類がもっと無いのか聞いた。
 売り場に2種類しか無いのを見て、紙紙言っていた華が、「これ違う」という顔をしていたのを見ていたのだ。
 この日はシアもノートにたくさん書き込みをしたので、華の使っている帳面の紙が薄くて書きやすい上質なものだと知っている。書いたのは鉛筆でだったが、ペンで書いても引っ掛かる書きづらさは想像出来なかった。

 カイが新人二人に見本帳を持って来るように言うと、パマットとテオは良い返事をして走って行く。

『『走るな!』』





 持って来て貰った紙見本を見て華は困ってしまった。

(これって羊皮紙…かどうかはわからないけど全部皮紙ってやつだよね。宿帳もそうだったし、パルプ紙って無いのかな…。万年筆で書くからこれでもいいんだけど値段が…。あれ?でも写本して売る事を考えたら皮紙を使った方がいいのかな!?)

 華のB5サイズのノートより大きなA4サイズかそれより少し大きいくらいの紙が1枚200リーンから2,500リーン。

(1枚で顔大のパンが20個買えちゃうのか…。えーっと、今残金が12,000くらい?1万くらい使っちゃう?あ、インクも買わなきゃ。スコップとネコも欲しいんだった)

 紙見本を待っている間にインクは選んでいたので、量重視で一番安い紙の中でも薄い飴色の200リーンの紙をとりあえず30枚購入する。

 その後、スコップや荷車のコーナーへ行き、完全な箱形の、しかも木箱が乗った荷車しか無いのを見た華が、箱部分と車輪部分に注文を付けたところ、商会長におもてなしを受けることとなってしまった華だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。

桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。 「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」 「はい、喜んで!」  ……えっ? 喜んじゃうの? ※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。 ※1ページの文字数は少な目です。 ☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」  セルビオとミュリアの出会いの物語。 ※10/1から連載し、10/7に完結します。 ※1日おきの更新です。 ※1ページの文字数は少な目です。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年12月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...