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92 その関係は
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華が神獣神殿にてファーナに石像の名前を一通り教えてもらっていると、いつの間にか生成りのスモックのような揃いの服を着た数人の子供達が石像を拭いているのに気が付いた。
一番小さな子供は6、7才位だろうか。大きな子も10才過ぎたくらいに見える。
(小学校の清掃活動?それにしては学年がばらばら…。神殿だし、孤児院とか?)
華はそういえば自分は戦災孤児になるのだろうかとちらりと思ったが、17才は大人!ただの行方不明者だと瞬時に結論付けた。
華が子供達を気にしているのに気が付いたファーナが『あの子たちは孤児院の子供なの』と教えてくれる。
『こじいん』
『そう。孤児。親が育てられない子供を神殿で預かっているの。今はお掃除の時間なのね。邪魔をしないようにそろそろ行きましょうか』
ファーナに促されて神殿を出る時に、華は扉の内側で寝そべっている石像に気が付いた。
(わ、この子。気弱さんに似てる!)
頭から後ろに向けて伸びた太い2本の角もそっくりだ。
華は数日姿を見ていない山の隣人の姿を思い浮かべた。
初めて遭遇した時は鹿の仲間かと思ったのだが、どうも牛っぽい。華の知っている牛より随分スマートだが。
『それはね、アピスって言う神獣様よ』
シアが石像の名前を教えてくれる。
華のお気に入りになった隣人に似た石像の背には翼が畳まれていた。
神殿を出てメインストリートを挟んだ斜向かい。
他の門より立派に見える北門に程近い場所に立派な建物がある。
規模で言うと神殿くらいはあるように見えるが、こちらは神殿には見えない。
(役場、かな?)
神殿と同じように人の出入りが見られる。
『あれはね、代官所。町役場ってところかしらね。中からも行き来出来るけれど、役場の関係者ではないわたしたちはこちらからね』
ファーナは代官所には入らず、その手前にある門へ向かった。
『お帰りなさいませ』
門の脇には小さな小さな小屋があり、その中の椅子に座っていた老人が門を開ける。
華は小さな小屋を見て銀座にあった電話ボックスを思い出したが、もちろん電話は無く、小さな机と椅子のみだった。
門を入ると馬車の轍が見える小道が代官所の建物沿いに続いている。
周りにはちらほらとお屋敷が見えることから、南側と違い、北側は裕福層のエリアなのだと判る。
『ここよ』
『ファーナさんのうち?』
『そうよ。娘夫婦と孫が一緒に暮らしているの』
『むすめふう…?』
『ふふっ。すぐに紹介するわね』
周りのお屋敷より大きいと分かるお屋敷の扉をシアが開けると、奥からぱたぱたと足音が聞こえて来た。
『お帰りなさい!お母様!』
待っていましたとばかりにエントランスに駆け込んで華達を迎えたのは3、40代くらいのダークブラウンの髪の女性で、華を見ると満面の笑みを浮かべた。
『あなたが華さんね!はじめまして!わたしはルナリアって言うの。お母様って呼んでね!』
(母娘で同じ事言ってるし…)
呆れるシアの横で、華も“おかあさま”の意味は分からないながらもなんだか似たような挨拶をファーナがしていたのを思い出していた。
そう思って見ると、西洋風の顔立ちを見慣れていない華にもファーナとこのルナリアは似ているように見える。
(親子なのかな?)
『はじめまして。千田 華です。よろしく…おかあさま?』
『きゃあああ!!なんて可愛いのかしら!』
可愛いわ~!と連呼するルナリアのお陰で華は“可愛い”を覚えることが出来た。
どうも形容詞は名詞と違い、覚えたくてもどう尋ねればいいのかが難しく、なかなか語彙が増えないのがもどかしかったのだ。
それと。
『ファーナさん、ルナリアさんのおかあさま?』
関係性を表す言葉も同じく、知りたいが尋ね方が難しい単語。
ファーナとアルベルトは夫婦だと華は思っているが、こちらでの“夫婦”の言い方が分からない。
因みに華はシアとマールが付き合っていると思っている。実際には姉弟なのだが。
『まあ!やっぱりハナは賢いのねえ。そうよ。わたしはルナリアのお母様。ルナリアはわたしの娘よ』
『よろしくね。ハナさん!まずは荷物を置きましょう。ハナさんのお部屋を用意したのよ!』
一番小さな子供は6、7才位だろうか。大きな子も10才過ぎたくらいに見える。
(小学校の清掃活動?それにしては学年がばらばら…。神殿だし、孤児院とか?)
華はそういえば自分は戦災孤児になるのだろうかとちらりと思ったが、17才は大人!ただの行方不明者だと瞬時に結論付けた。
華が子供達を気にしているのに気が付いたファーナが『あの子たちは孤児院の子供なの』と教えてくれる。
『こじいん』
『そう。孤児。親が育てられない子供を神殿で預かっているの。今はお掃除の時間なのね。邪魔をしないようにそろそろ行きましょうか』
ファーナに促されて神殿を出る時に、華は扉の内側で寝そべっている石像に気が付いた。
(わ、この子。気弱さんに似てる!)
頭から後ろに向けて伸びた太い2本の角もそっくりだ。
華は数日姿を見ていない山の隣人の姿を思い浮かべた。
初めて遭遇した時は鹿の仲間かと思ったのだが、どうも牛っぽい。華の知っている牛より随分スマートだが。
『それはね、アピスって言う神獣様よ』
シアが石像の名前を教えてくれる。
華のお気に入りになった隣人に似た石像の背には翼が畳まれていた。
神殿を出てメインストリートを挟んだ斜向かい。
他の門より立派に見える北門に程近い場所に立派な建物がある。
規模で言うと神殿くらいはあるように見えるが、こちらは神殿には見えない。
(役場、かな?)
神殿と同じように人の出入りが見られる。
『あれはね、代官所。町役場ってところかしらね。中からも行き来出来るけれど、役場の関係者ではないわたしたちはこちらからね』
ファーナは代官所には入らず、その手前にある門へ向かった。
『お帰りなさいませ』
門の脇には小さな小さな小屋があり、その中の椅子に座っていた老人が門を開ける。
華は小さな小屋を見て銀座にあった電話ボックスを思い出したが、もちろん電話は無く、小さな机と椅子のみだった。
門を入ると馬車の轍が見える小道が代官所の建物沿いに続いている。
周りにはちらほらとお屋敷が見えることから、南側と違い、北側は裕福層のエリアなのだと判る。
『ここよ』
『ファーナさんのうち?』
『そうよ。娘夫婦と孫が一緒に暮らしているの』
『むすめふう…?』
『ふふっ。すぐに紹介するわね』
周りのお屋敷より大きいと分かるお屋敷の扉をシアが開けると、奥からぱたぱたと足音が聞こえて来た。
『お帰りなさい!お母様!』
待っていましたとばかりにエントランスに駆け込んで華達を迎えたのは3、40代くらいのダークブラウンの髪の女性で、華を見ると満面の笑みを浮かべた。
『あなたが華さんね!はじめまして!わたしはルナリアって言うの。お母様って呼んでね!』
(母娘で同じ事言ってるし…)
呆れるシアの横で、華も“おかあさま”の意味は分からないながらもなんだか似たような挨拶をファーナがしていたのを思い出していた。
そう思って見ると、西洋風の顔立ちを見慣れていない華にもファーナとこのルナリアは似ているように見える。
(親子なのかな?)
『はじめまして。千田 華です。よろしく…おかあさま?』
『きゃあああ!!なんて可愛いのかしら!』
可愛いわ~!と連呼するルナリアのお陰で華は“可愛い”を覚えることが出来た。
どうも形容詞は名詞と違い、覚えたくてもどう尋ねればいいのかが難しく、なかなか語彙が増えないのがもどかしかったのだ。
それと。
『ファーナさん、ルナリアさんのおかあさま?』
関係性を表す言葉も同じく、知りたいが尋ね方が難しい単語。
ファーナとアルベルトは夫婦だと華は思っているが、こちらでの“夫婦”の言い方が分からない。
因みに華はシアとマールが付き合っていると思っている。実際には姉弟なのだが。
『まあ!やっぱりハナは賢いのねえ。そうよ。わたしはルナリアのお母様。ルナリアはわたしの娘よ』
『よろしくね。ハナさん!まずは荷物を置きましょう。ハナさんのお部屋を用意したのよ!』
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