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少年篇

帝国脱走⑦

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 俺が王子だって分かったが、国王の孫なのもびっくりだが
 ただ助けたいからって、マジか
 ジークライア王国国王直轄諜報員のナインの顔を見つめながら、俺が固まっていると
 俺を見ながら、壁にもたれながら腕を組んで少しニヤついた顔で頷いている
 その仕草が全て事実だと語っているように見えた俺は、思わず前世の口調で話した
 
 「まじ?」
 「まじだ」
 「オレ、ガ、オウジ…………」
 「取り乱しすぎだろ。てか、まだそこ言ってんのかよ」
 
 少し困ったように苦笑しながら、俺を見ている
 当たり前だろうが、馬鹿なのか!?
 まぁ政治のために使われると言うこともないらしいし、好きに生きていいと言われているのは嬉しいことだが
 国王おじいちゃんなの!? え? 俺王族なの!?
 え? なにそれ、美味しいの?
 急にそんなこと言われても頭が追い付かないだろ!
 地位に関しても急に逆転しすぎだろ
 はぁ、もう一気に疲れた、何も考えたくない
 俺が頭を抱えながら溜息を吐いていると、そんな俺の様子を見てナインは少し笑顔を浮かべてどこか楽しそうにフードを頭に被る
 
 「まぁ、その辺の詳しいことは助け出してから話すとしよう。それから、作戦決行の日は今日を合わせて三日だ。その日にスセルと共に抜け出してこい。じゃぁな王子様」
 「あ、おい! ちょっと…………はぁ、行っちまった」
 
もう少し詳しいことを聞きたかったのに、なんで俺王子(笑)なのって聞きたいんだけど
はぁ、俺のおじいちゃんスーパーすげぇ人だったわ
 これは、もうやばいわ
 助けられる日まで、馬鹿になっておいたほうが楽なんじゃないかと思うほどにびっくりしたんだが
 はぁ、うん、もう一回寝て、忘れよう
 身体は疲れていないのに、頭から煙が出そうなほどに働かなくなっていた
 そこから俺は死んだように眠りにつく
 
 そして今度は本物の朝を迎えスセルがやってくる
 どうやら昨日誰が来ていたのか気配とスキルで分かっていたらしく
 朝から少し弄られていた
 
 「ふふ、ほら王子様、早く服を着替えなさい」
 「くっ、おいスセル思い出すからやめてくれ!」
 「いやぁ、でもしょうがない事じゃないでしょうかぁ?」
 
 俺が悔しそうな顔をしながらスセルを見ていると、急に真顔になって俺を見つめる
 少し戸惑いながら、急に真面目な話かと思い俺は気を引き締めて
 スセルの言葉を待っていた
 急に雰囲気が変わったことによって、俺の頬に汗が伝う
 時が少し達スセルが沈黙を破った
 
 「…………くく、王子様すみません、笑ってしまいました」
 「ここで来ると思わなかったよ!! なんでもいいよこの野郎!!」
 「まぁまぁ、そんな怒らなくても良いじゃありませんか。ほら、早く温かいうちにご飯を食べるために、着替えなさいカリル」
 「たく、なんなんだよ…………はぁ」
 
 急に名前を呼ばれたことに少し恥ずかしくなり、そっぽを向いて着替えを始める
 今日も護衛があるのと、綺麗な服がこれしかないもので、いつもの燕尾服に着替えた
 そして昨日ナインと話したことを伝え、急いで朝飯を食べる
 三日後に作戦決行聞いたスセルは、時間を早めたなぁと一人呟きながら食器を持ってこの部屋を後にした
 そして、出る際に俺に一言声をかける
 
 「安心しなさい、ジークライア王国に着いても私は、あなたの面倒を見ます」
 「うん、ありがとうスセル」
 
 スセルが退出した後は俺も護衛の準備…………と言っても少し身なりを整える程度だが
 それを済ませて聖女がこの屋敷に到着するのを待って合流した
 相変わらずジークライア王国の近衛騎士の人達、聖女マリンはとても良い人達だ
 正直完全に信用している
 俺自身この人たちは、本当に俺のことを思ているんだろうと言うことが本気で伝わってくる、正直それがまた心地いい
 今日の護衛も、沢山の物を見させてもらった
 それだけじゃなく、今日はピクニックをしながらジークライア王国の話まで聞かせてもらった
 どうやらジークライア王国は他種族共生国家らしく信仰している神も別々らしい
 国土は帝国より広くわないが南の地は全てジークライア王国の領土だと言う
 そしてグランキー帝国とジークライア王国の間にはパールニア合衆国があり
 ジークライア王国はパールニア合衆国と和平協定を結んでおり、このグランキー帝国とも結んでいるらしい
 他の国に比べて、争いを好まない国だと聖女は言っていた
 勿論時刻を守るためなら、本気で戦いはすると付け加えてだ
 そしてスセルと共にその話をすると、あそこの地は特産品が多く本当にいい国だという
 追加情報を貰った
 その日は、エリーに見つかることもなく静かに就寝することが出来た
 
 次の日は、少しどんな職業があるのかという話を聖女から教えてもらった
 普通の職業に変わり冒険者という職業がありランク制度もあり
 この話はもの凄く面白かった
 ランクはFからSまであるらしくCランクまではギルドから固定給がもらえるらしい
 だが、それは以来のノルマをしっかりと取り組んだものだけによる
 何故そのような制度があるのかというと、ランクの低いものにもしっかりと給料を上げることで冒険者を確保し士気を高めること
 何より、薬草も武器も防具も買えないとなると命にもかかわるからだそうだ
 勿論ノルマをクリアしていない冒険者や不正をしているような冒険者には給料は出ないと言う
 大怪我や死亡すると言った事は、ギルドから補助金が出すと言った事もするらしい
 ただこういった救済をしているのはジークライア王国だけらしく
 他の国の冒険者ギルドはそんなことはしていないと言う
 理由を聞いてみたところ、その国専用のギルドしか領土に設置が出来ないから
という理由だそうだ
 だから国によってギルドは千差万別だと聖女は言っていた
 その夜スセルと共にその話をして、俺は明日に備えて眠りにつく
 
 そして、作戦決行の当日が遂にやってくる
 朝スセルに会うと緊張しているのか、少し肩に力が入っているように見えた
 聖女たちと合流して、今日の護衛をしっかりとこなしている間も、どこか緊張している様子だった
 そして、聖女たちと別れて夜…………スセルと共に部屋にいると小屋の扉を何者かがノックをする
 扉の向こうには、ジークライア王国国王直轄諜報員のナインだった
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