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少年篇
作戦決行③
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奴隷の首輪を取るための、段取りを聞かされた後、スセルと聖女マリンと少し話すことになった
何を話すかは知らないが、提案したのはスセルだ
俺のことを心配しての事なのか、聖女に何かあったのか
どちらにしてもスセルの事だ、絶対何か企んでるだろう…………
スセルは落ち着いたのかいつものようニコニコしている
聖女は気づかれないようにしているんだろうが、震えているのがバレバレだ
そしてスセルに連れられた場所は、ゆるやかに流れている川だ
スセルは俺たちに手招きをし、隣に座るように促す
俺は素直に腰を下ろすが、マリンは戸惑いながらも川の畔に腰を下ろした
俺を囲むように座る二人
そんな中思ったのは、スセルの目的だ
だいたい分かったのだ…………マリンの事についてだろう
俺の奴隷の首輪を外すと言うことが決まってから、終始緊張しているのかずっと震えているというか、何か不安に感じているのか
とにかく、どこか切羽詰まったような雰囲気だ
俺がそんな風に考えながら、沈黙が続く
どうするんだろうかと思いながら、スセルと聖女を交互に見ていると沈黙を破ったのはスセルだ
「聖女マリンさん、急に失礼なことを言いますが、怖いと思う気持ちは分かります。ですが、あなたはカリルの覚悟を無駄にしようと言うのでしょうか?」
「え? いえ、そういうつもりは…………」
言葉を詰まらせて、マリンは下を向いたまま顔を上げない
長いブルーの髪が重力に従って覆っていく、マリンの表情が見えなくなる
スセルは変わらずニコニコしている、だが目が笑っていない
マジで急だなとも、思うがスセル自身もギリギリなのだろう
マリンに対して怒っているわけでもない、ただ失敗もできない、肩に力が入れば入る程プレッシャーに圧され出来ることが出来なくなり、視野も狭くなる
要するに、肩の力を入れすぎということだ
ただ力を抜けと言われたからと言って、簡単に抜けるものでもない
スセルからの問いに対して時間が静かに過ぎていく
俺は今どういう顔をすればいいかわからないでいた
川が流れる音や、木々が風で揺れる音が、俺らとは正反対に騒がしくなる
そして重々しく、マリンが口を開いた
「…………カリルのことを助けたい、という気持ちに嘘はありません。ですが、怖いのです。上手くいかなかったらどうしよう、という気持ちがぬぐい切れないのです」
スセルだけでなく俺自身も只黙って聞いていた
きっと、もの凄いプレッシャーを誰にも言わず抱えていたのだろう
俺の覚悟を踏みにじらないために、聖女として俺を助けるために
この世界じゃ、俺もまだ幼い只の子供だ…………聖女と同じ
高々十年やそこらしか生きていない、子供にとっては重すぎるのだろう
聖女は少し黙った後に、また続けて話し始めた
「カリルは本当に凄い…………それに比べて私は…………」
「そんなことないんじゃないかなぁ」
自然とその言葉が出てきて、漠然とそう思った
マリンはジークライア王国の聖女という肩書の前に一人の幼い女の子だ
偶々聖女として生きることになっただけであって、他の道もあったはず
今まで戦って傷ついた人を、病気で明日も生きていけるか不安な人をその年ですくってきたのだ
簡単に出来るようなことではない
それに比べて、俺のほうこそ褒められたような生き方では無い
マリンは持っている力で人の人生を助けてきた、俺は力で人の人生を奪ってきた
俺は思ったことを正直に話しを続けた
「上手く言えないですけど、人を助けると言う行為に責任を感じ、自分の事ではないのに本気で救おうとしているマリンさんは凄い人だと思います」
「いいえ、私以外にもできる人は…………」
「何を言っているんですか、そんな事で簡単に出来る訳ないじゃないですか。俺にだって出来ないし、スセルにだって出来ないですよ」
その言葉を、聞いた聖女マリンは俺のほうを向いて少し驚いた表情をしている
いや、そんなに何を驚いているのだろうか
スセルは…………相変らずにこにこしているだけだな
はぁ、もっと気の利いた言葉があるだろうけど、俺にはこれが限界だ
後は聖女マリンの気持ち次第
また沈黙が始まる、ただ一つ変わったことといえば聖女の表情だ
真剣に一点を見つめ深く考えているように見える
こんな時なのに、彼女の蒼い瞳が川から反射されている月明かりでキラキラと光り、蒼い髪が風に揺らされて、綺麗になびいている姿は、まるでどこかのアニメやドラマのワンシーンのように絵になっていた
その光景は、俺の思考をする余裕さえ与えないほどに美しい
そして見とれている俺に気付かず、急に勢い良く立ち上がるマリン
急すぎてびっくりしたが、顔を見た瞬間に聖女の変化に気付いた
どうやら、自分の中の悩みや色んなのが消し飛んだらしい
「すみません、時間をかけすぎました。そして私の覚悟は決まりました」
「流石ですねぇ。ではカリル…………始めるとしましょうか」
なんだか俺の気持ちまで暖かくなるそんな光景
そしてスセルは最初から気づいていたんだな、俺が声をかけるのが一番良いと
何が流石ですね、だ!
「はぁ、じゃぁ、生きるか死ぬかのギャンブル勝負を始めようか!」
何を話すかは知らないが、提案したのはスセルだ
俺のことを心配しての事なのか、聖女に何かあったのか
どちらにしてもスセルの事だ、絶対何か企んでるだろう…………
スセルは落ち着いたのかいつものようニコニコしている
聖女は気づかれないようにしているんだろうが、震えているのがバレバレだ
そしてスセルに連れられた場所は、ゆるやかに流れている川だ
スセルは俺たちに手招きをし、隣に座るように促す
俺は素直に腰を下ろすが、マリンは戸惑いながらも川の畔に腰を下ろした
俺を囲むように座る二人
そんな中思ったのは、スセルの目的だ
だいたい分かったのだ…………マリンの事についてだろう
俺の奴隷の首輪を外すと言うことが決まってから、終始緊張しているのかずっと震えているというか、何か不安に感じているのか
とにかく、どこか切羽詰まったような雰囲気だ
俺がそんな風に考えながら、沈黙が続く
どうするんだろうかと思いながら、スセルと聖女を交互に見ていると沈黙を破ったのはスセルだ
「聖女マリンさん、急に失礼なことを言いますが、怖いと思う気持ちは分かります。ですが、あなたはカリルの覚悟を無駄にしようと言うのでしょうか?」
「え? いえ、そういうつもりは…………」
言葉を詰まらせて、マリンは下を向いたまま顔を上げない
長いブルーの髪が重力に従って覆っていく、マリンの表情が見えなくなる
スセルは変わらずニコニコしている、だが目が笑っていない
マジで急だなとも、思うがスセル自身もギリギリなのだろう
マリンに対して怒っているわけでもない、ただ失敗もできない、肩に力が入れば入る程プレッシャーに圧され出来ることが出来なくなり、視野も狭くなる
要するに、肩の力を入れすぎということだ
ただ力を抜けと言われたからと言って、簡単に抜けるものでもない
スセルからの問いに対して時間が静かに過ぎていく
俺は今どういう顔をすればいいかわからないでいた
川が流れる音や、木々が風で揺れる音が、俺らとは正反対に騒がしくなる
そして重々しく、マリンが口を開いた
「…………カリルのことを助けたい、という気持ちに嘘はありません。ですが、怖いのです。上手くいかなかったらどうしよう、という気持ちがぬぐい切れないのです」
スセルだけでなく俺自身も只黙って聞いていた
きっと、もの凄いプレッシャーを誰にも言わず抱えていたのだろう
俺の覚悟を踏みにじらないために、聖女として俺を助けるために
この世界じゃ、俺もまだ幼い只の子供だ…………聖女と同じ
高々十年やそこらしか生きていない、子供にとっては重すぎるのだろう
聖女は少し黙った後に、また続けて話し始めた
「カリルは本当に凄い…………それに比べて私は…………」
「そんなことないんじゃないかなぁ」
自然とその言葉が出てきて、漠然とそう思った
マリンはジークライア王国の聖女という肩書の前に一人の幼い女の子だ
偶々聖女として生きることになっただけであって、他の道もあったはず
今まで戦って傷ついた人を、病気で明日も生きていけるか不安な人をその年ですくってきたのだ
簡単に出来るようなことではない
それに比べて、俺のほうこそ褒められたような生き方では無い
マリンは持っている力で人の人生を助けてきた、俺は力で人の人生を奪ってきた
俺は思ったことを正直に話しを続けた
「上手く言えないですけど、人を助けると言う行為に責任を感じ、自分の事ではないのに本気で救おうとしているマリンさんは凄い人だと思います」
「いいえ、私以外にもできる人は…………」
「何を言っているんですか、そんな事で簡単に出来る訳ないじゃないですか。俺にだって出来ないし、スセルにだって出来ないですよ」
その言葉を、聞いた聖女マリンは俺のほうを向いて少し驚いた表情をしている
いや、そんなに何を驚いているのだろうか
スセルは…………相変らずにこにこしているだけだな
はぁ、もっと気の利いた言葉があるだろうけど、俺にはこれが限界だ
後は聖女マリンの気持ち次第
また沈黙が始まる、ただ一つ変わったことといえば聖女の表情だ
真剣に一点を見つめ深く考えているように見える
こんな時なのに、彼女の蒼い瞳が川から反射されている月明かりでキラキラと光り、蒼い髪が風に揺らされて、綺麗になびいている姿は、まるでどこかのアニメやドラマのワンシーンのように絵になっていた
その光景は、俺の思考をする余裕さえ与えないほどに美しい
そして見とれている俺に気付かず、急に勢い良く立ち上がるマリン
急すぎてびっくりしたが、顔を見た瞬間に聖女の変化に気付いた
どうやら、自分の中の悩みや色んなのが消し飛んだらしい
「すみません、時間をかけすぎました。そして私の覚悟は決まりました」
「流石ですねぇ。ではカリル…………始めるとしましょうか」
なんだか俺の気持ちまで暖かくなるそんな光景
そしてスセルは最初から気づいていたんだな、俺が声をかけるのが一番良いと
何が流石ですね、だ!
「はぁ、じゃぁ、生きるか死ぬかのギャンブル勝負を始めようか!」
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