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第三話
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「なんか、ごめんなぁ……」
放課後。僕たちは晃の上がりでカフェを食べに来ていた。
甘党だから普通に嬉しい。
「いいよ別に。嘘告くらい」
「いやそうじゃなくて……、まぁいいや」
深いため息をついて項垂れる晃。
別にこの件で晃を責める気はないし、ホントに気にしなくていいのだが、まぁ本人が奢ると言ったんだから甘えるべきだと思う。
ここぞとばかりに特大パフェを二杯、クレープ一個、ココア四杯をすでい完食している。
「で、結局どうするんだ?」
「受けるしかないよ。だってボコボコは嫌だもん。呪いも。まあちょうど彼女は欲しかったし」
「じゃあ普通に付き合ってくれるのか!?」
晃がガタッと勢いよく立ち上がった。どこか嬉しそうだ。
「仕方ないよ。といっても、ほとんど形だけの恋人さ。どーせどっちも本気じゃないんだし」
「じゃ、じゃあさ、もしお前が暦月に惚れたら?」
「ないよ」
「なさそうだもんなぁー。……ならその逆は? 暦月がお前のこと好きだったら?」
「それが一番ない。……けど、仮にそうなら振るよ。彼女はほしいけど、だからって相手の気持ちを利用するなんて。それに、色々こじれそうでめんどくさい」
「じゃあ無理じゃん! このままいくしかないじゃん!」
態度を一変させて、ガックリと肩を落とし落ち込む晃。糖分が足りてないのだろうか。やれやれ仕方ない。僕は晃の肩を優しく叩いた。
「悩んでるならパフェ食いなよ? 一口あげよっか? 一口だけ」
「おぉっ、ほんとか? ありがとう……お前ほんといいやつだな……ってこれ俺の金じゃねぇか! しかもめっちゃ買ってるし……一口て……ケチか!」
ムカ。
「失礼なやつだな。もう一口もやらん」
「なんでだよ!」
結局その日はパフェを食い荒らしてそのまま帰った。
ちなみにお金は半分くらい払わされた。おかしいな……。
◇◇◇◇◇
翌日の放課後。
僕は校舎裏へと呼び出された。大勢のヤンキーが待ち構えてるかと身構えたが、どうやらそれもないらしい。一安心だ。
「わ、わざわざごめんね……」
「別にいいけど、早くしてくれないかな?今日はちょっと用事があって」
さっき思い出したのだが、好きな漫画の新刊の発売日だったのだ。どうせOKだし、早くして欲しい。
「あ、あのさ、その……基山のこと……す、すすす好き、です! その……付き合ってくれませんか!?」
わずかに潤んだ大きく茶色の瞳。上目遣いに赤らんだ頬。ピンク色の唇。全てが完璧で、思わず見惚れてしまいそうになる。
僕のことがまるで本気で好きかのような演技力もさることながら、何よりその破壊力が凄まじい。
……が、警戒していれば大して効かない。僕のことを陰で笑うつもりなんだろうと考えると、驚くほど冷静でいられる。そう、無の境地。何とも思わない。
「いいよ。これからよろしく」
「は、ほんとに!? 付き合ってくれるの?」
やけにハイテンションな橘。三メートルはあった距離を一気に詰めて、僕の肩を握った。
か、顔が近い。流石に間近で見ると天使だ。
「はいはい。もちろん付き合うよ」
「や、やったぁー!」
叫びながら、控えめなガッツポーズをとる橘。
ってあれ? なんか泣いてるし。
「ごめんっ、嬉しくて……」
「いや別に……」
白々しい奴め。ノータイムで涙を出せるのには流石に驚いたけど。
まぁいい。これで用事は済んだ。
「てことでよろしく。それじゃ」
こんなことより僕の趣味の時間の方が有意義だ。とっとと帰らせてもらう。
それに、橘にはちょっと冷たいくらいがいい。
恋人としての立場を確保しながら、好きという態度を見せない。橘はまるで利用されたみたいで相当悔しいはず。
これが僕のせめてもの抵抗だ。
「え、ええ。え? ちょっと待って?」
「?」
呼ばれたので振り返った。
「えっと、おかしくない? 早くない?」
「? ……何が?」
「帰り出すのが。もうちょい色々話したりするもんじゃない? だって、ほら。こ、ここ恋人なんだし……」
後半はむにゃむにゃ言って聞こえにくい。
それにしても、嘘告のくせにわがままなやつだ。
まぁ、でも正論なのはあっちか……。どこのどいつが返事だけしてとっとと帰ろうとするんだ。大したようもないのに。まぁ僕に限っては例外だが。
「いや、用事あるしさ。別に特に話したいこともないし、よくない?」
どうせこれからは仮とはいえ恋人関係。お話する時間なんてたっぷりあるだろう。
「そ、そっか……。うん、じゃあまた明日ね」
「うん」
今日買った漫画は、クラスメイトとのラブコメ漫画だった。
オタクとオタクに優しいギャルという、おおよそ現実では絶対にありえない組み合わせ。
ストーリーには山も無ければ谷も無い。お互いがお互いを好きなのに、付き合ってないという絶妙な距離感で、ギャルに翻弄されるオタク。たまにやり返すオタク。平坦なストーリーであるが故の安心感と甘酸っぱさ。
そういえば、僕は一応ギリギリ不本意にもオタクの領域に足の爪が一ミリ程度入ってるし、橘はギャルではないがかなりの陽キャで超美少女。
組み合わせは似ている。
それでも、好きなのに付き合わない二人と、好きじゃないのに付き合う二人。
全く違う境遇に苦笑してしまった。
放課後。僕たちは晃の上がりでカフェを食べに来ていた。
甘党だから普通に嬉しい。
「いいよ別に。嘘告くらい」
「いやそうじゃなくて……、まぁいいや」
深いため息をついて項垂れる晃。
別にこの件で晃を責める気はないし、ホントに気にしなくていいのだが、まぁ本人が奢ると言ったんだから甘えるべきだと思う。
ここぞとばかりに特大パフェを二杯、クレープ一個、ココア四杯をすでい完食している。
「で、結局どうするんだ?」
「受けるしかないよ。だってボコボコは嫌だもん。呪いも。まあちょうど彼女は欲しかったし」
「じゃあ普通に付き合ってくれるのか!?」
晃がガタッと勢いよく立ち上がった。どこか嬉しそうだ。
「仕方ないよ。といっても、ほとんど形だけの恋人さ。どーせどっちも本気じゃないんだし」
「じゃ、じゃあさ、もしお前が暦月に惚れたら?」
「ないよ」
「なさそうだもんなぁー。……ならその逆は? 暦月がお前のこと好きだったら?」
「それが一番ない。……けど、仮にそうなら振るよ。彼女はほしいけど、だからって相手の気持ちを利用するなんて。それに、色々こじれそうでめんどくさい」
「じゃあ無理じゃん! このままいくしかないじゃん!」
態度を一変させて、ガックリと肩を落とし落ち込む晃。糖分が足りてないのだろうか。やれやれ仕方ない。僕は晃の肩を優しく叩いた。
「悩んでるならパフェ食いなよ? 一口あげよっか? 一口だけ」
「おぉっ、ほんとか? ありがとう……お前ほんといいやつだな……ってこれ俺の金じゃねぇか! しかもめっちゃ買ってるし……一口て……ケチか!」
ムカ。
「失礼なやつだな。もう一口もやらん」
「なんでだよ!」
結局その日はパフェを食い荒らしてそのまま帰った。
ちなみにお金は半分くらい払わされた。おかしいな……。
◇◇◇◇◇
翌日の放課後。
僕は校舎裏へと呼び出された。大勢のヤンキーが待ち構えてるかと身構えたが、どうやらそれもないらしい。一安心だ。
「わ、わざわざごめんね……」
「別にいいけど、早くしてくれないかな?今日はちょっと用事があって」
さっき思い出したのだが、好きな漫画の新刊の発売日だったのだ。どうせOKだし、早くして欲しい。
「あ、あのさ、その……基山のこと……す、すすす好き、です! その……付き合ってくれませんか!?」
わずかに潤んだ大きく茶色の瞳。上目遣いに赤らんだ頬。ピンク色の唇。全てが完璧で、思わず見惚れてしまいそうになる。
僕のことがまるで本気で好きかのような演技力もさることながら、何よりその破壊力が凄まじい。
……が、警戒していれば大して効かない。僕のことを陰で笑うつもりなんだろうと考えると、驚くほど冷静でいられる。そう、無の境地。何とも思わない。
「いいよ。これからよろしく」
「は、ほんとに!? 付き合ってくれるの?」
やけにハイテンションな橘。三メートルはあった距離を一気に詰めて、僕の肩を握った。
か、顔が近い。流石に間近で見ると天使だ。
「はいはい。もちろん付き合うよ」
「や、やったぁー!」
叫びながら、控えめなガッツポーズをとる橘。
ってあれ? なんか泣いてるし。
「ごめんっ、嬉しくて……」
「いや別に……」
白々しい奴め。ノータイムで涙を出せるのには流石に驚いたけど。
まぁいい。これで用事は済んだ。
「てことでよろしく。それじゃ」
こんなことより僕の趣味の時間の方が有意義だ。とっとと帰らせてもらう。
それに、橘にはちょっと冷たいくらいがいい。
恋人としての立場を確保しながら、好きという態度を見せない。橘はまるで利用されたみたいで相当悔しいはず。
これが僕のせめてもの抵抗だ。
「え、ええ。え? ちょっと待って?」
「?」
呼ばれたので振り返った。
「えっと、おかしくない? 早くない?」
「? ……何が?」
「帰り出すのが。もうちょい色々話したりするもんじゃない? だって、ほら。こ、ここ恋人なんだし……」
後半はむにゃむにゃ言って聞こえにくい。
それにしても、嘘告のくせにわがままなやつだ。
まぁ、でも正論なのはあっちか……。どこのどいつが返事だけしてとっとと帰ろうとするんだ。大したようもないのに。まぁ僕に限っては例外だが。
「いや、用事あるしさ。別に特に話したいこともないし、よくない?」
どうせこれからは仮とはいえ恋人関係。お話する時間なんてたっぷりあるだろう。
「そ、そっか……。うん、じゃあまた明日ね」
「うん」
今日買った漫画は、クラスメイトとのラブコメ漫画だった。
オタクとオタクに優しいギャルという、おおよそ現実では絶対にありえない組み合わせ。
ストーリーには山も無ければ谷も無い。お互いがお互いを好きなのに、付き合ってないという絶妙な距離感で、ギャルに翻弄されるオタク。たまにやり返すオタク。平坦なストーリーであるが故の安心感と甘酸っぱさ。
そういえば、僕は一応ギリギリ不本意にもオタクの領域に足の爪が一ミリ程度入ってるし、橘はギャルではないがかなりの陽キャで超美少女。
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