俺の番が見つからない

Heath

文字の大きさ
5 / 64

05. 計略結婚 5

しおりを挟む
読んでくださってありがとうございます。
説明ばっかりでなかなか話が進みませんが、
このお話の話が進みます?(´-`).。oO

* ** * ** * ** * ** * ** * ** * ** * 



 厄介な仕事を終え、侯爵夫人のオクタビアはメイドに煎れさせていたお茶を娘のアレクサンドラと飲んでいた。

しかし、その表情はまるで正反対だった。浮き浮きとしている娘と眉間に眉を寄せたままの母。

「お母様、もう、あの嫌な娘はいなくなるのよ。嫌なことがなくなるのよ。もっと喜びましょうよ」

我が娘ながら、なんと気楽なんだろうか、と侯爵夫人は一瞬戸惑った。

この半年間お父様、叔父様方がどれだけあちこちに話をして回ったと思っているのか。

「ああ、いい気味だわ。80過ぎの老人おいぼれの後宮ですって」

アレクサンドラはただ目障りなソフィが酷い目に合うことと、自分の前にあるはずの輝かしい未来を想像して楽しんでいた。



 侯爵夫人オクタビアは先々代の英雄王を支えた王弟グーゼンバウワ公爵家の第一王女として、幼い頃から思い通りにならないことは何もなかった。

欲しいものを直接欲しいと言わなくても、どうすれば周りが喜んで与えるのかが手に取るように分かった。

そしてそれ故、相手が欲しているものも、言葉にされずとも理解できる才も持ち合わせていた。



 公爵家のオクタビア王女は年頃になり、自分に相応しい夫たる人物は誰だろうと考えたとき、社交界で女性の目を引く美丈夫のアーデンブルグ伯爵を見つけた。

無口で控えめでありながら、長身でハンサムな彼はすでに伯爵という爵位も持っており、歳頃の令嬢やその母親から注目されていた。

しかし彼は高潔であり、数多の美しい令嬢の誰にも靡かないところも自尊心をくすぐった。


慕っている女性がいると噂で聞いたが、それが一体何だというのだろう。

高貴な血筋の、王女の、この私がボルストラップ侯爵という爵位を持って嫁ぐのに喜ばない者などいないはず。

実際、アーデンブルグ伯爵家一族からは一も二もなく、受け入れられてもいる。

しかし、アーデンブルグ伯爵自身は私の手を受け取ろうとはしなかった。

ありえない、ありえない。

古い血脈と噂されるだけの子爵家の女など比べようもないはずが、ありえない。


お父様や叔父様方に少しばかりお話をすると、その子爵家に新たな領地が与えられた。

そこは国境北端であり、諍いの絶えない場所なのだそうだ。

それだけではまだ宮廷に出仕する機会があるのではないかと思い、それとなく聞いて見れば、そこは我が国の領土になって日も浅く、領主が砦の建設や街道などの整備をしなくてはならないのだそうだ。

土地は痩せており作物も碌に育たず、特産品も鉱山などの資源もないと聞いて

「まぁ、大変ですこと」

と叔父様方に心配そうに言えば

「優しい娘だね。確かに大変だろうが、オクタビアの気にするようなことではないよ」

と慰めて下さり、安心したものだった。





    その後、王宮の書庫で子爵家に関する報告書を見たが、国境を守りきることができず、当主や一族の主たる者は戦死し、その領地を失う失態を犯したのだ。


それは国家に対する大罪ではないか、と私を可愛がってくださる大叔父様にお話すると

「賢いね。お前は統治者に向いているのかもしれないな。男であれば一族を率いたであろうに」

とお褒めいただいた。

その後、子爵家は褫爵され平民となり、一族郎等は散り散りとなったらしい。


これで伯爵も情に縛られることなく、私に夢中になると思ったのに、まさか子を成していようとは。

ありえない。全くもってありえない。
その下品な発想に考えるだけでも吐き気がしたものだった。


   アーデンブルグ伯爵家一族、グーゼンバウワ公爵家そして王家の祝福を受け婚姻の成され、アーデンブルグ伯爵はボルストラップ侯爵となった。

しかし、結婚生活が1年を越えても彼は夫の務めを果たさなかった。

ありえない。あってはいけないことが起きている。


余りの理不尽さに耐えかねて、少しばかり責めてしまったら、更に一歩下がり私との距離を更にとろうとした。

反省した私は王家直属の暗部隊をちょっとばかり使って、夫の悩みを目の届かないところへ追いやった。

それでも、彼は私を見ない。ありえない。


もう一歩進めて、その女の口に入るように長屋の井戸にを入れさせたりもした。


この私にここまでさせるとは、とうてい許されることではない。

犯した罪は命でもって贖うべきである。

墓石に刻まれたその女の名前を見たときには本当に嬉しかった。


それからは夫の弱みである泥棒猫の娘を使い、やんわり彼の中の罪悪感を刺激し続ければ、後継ぎとなるアレクサンドラを授かり、ついに夫は私のものになったのだ。

忌々しい娘も随分と身の程をわきまえるようにもなった。

やはり、筋道を立てた計画というものは大切なのだわ。



 此度も国難解決に併せて我が館の唯一の汚点ソフィをそれに相応しく取り除けることになった。

まさに神の導きとしか思えない。


卑しい獣人国の傍若無人な振る舞いは世界の均衡を崩し続けており、その矛先はいずれ我が王国に向くだろうとお父様や叔父様方は憂いておられる。

我が王国と獣人国を結ぶ政略結婚の案もでるものの、獣人国へ娘を送ろうという貴族ものは出てこないのだという。

何と不忠な貴族ものたちであろうかと憂いていれば、ふと我が館に住まう忌々しい娘を思い出したのだった。


侯爵家縁の娘というならば、使えるかもしれない。


この話に興味を示したのは、皇帝を退いたもののまだ充分に力のある上皇帝レオナルド大公であった。

戦狂い女狂いと悪名を持つ老獅子に若い娘を当てがい、獣人国の好戦派の牽制をかける。


私の名を汚されるようで非常に不愉快ではあるが、私が耐え忍べば良いことだと、我が王家のためになるのだからと、何とか心を慰め、ことを進めたのだ。



 それにしても泥棒猫の娘ソフィはどうやってセオドア王太子に取り入ったというのだろう。

王妃様主催のお茶会から日を置かず泥棒猫の娘ソフィ宛の手紙が届き、不審に思ったダイエが私にその手紙を持ってきた。

男からというだけでも汚らわしいのに、差出人がですって。

ありえない!ありえない!ありえない!

テッドはセオドア王子の親しいものしか呼ぶことの許されない愛称。

アリステアは前王妃の出身王家が使う姓。この私の目を誤魔化すことなどできはしないのだから。


泥棒猫の娘はやはり泥棒猫なのだ。血が汚いというのは、どうしようもないのね。

野蛮な獣人に泥棒猫の娘は相応しいというもの。


国家のためという大義名分に夫も否定はできないだろう。

良い嫁ぎ先ができたと思えば、少し気分が晴れてきた。

アレクサンドラの言う通り、あの雌猫がいなくなった後のことを考えましょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

ただの新米騎士なのに、竜王陛下から妃として所望されています

柳葉うら
恋愛
北の砦で新米騎士をしているウェンディの相棒は美しい雄の黒竜のオブシディアン。 領主のアデルバートから譲り受けたその竜はウェンディを主人として認めておらず、背中に乗せてくれない。 しかしある日、砦に現れた刺客からオブシディアンを守ったウェンディは、武器に使われていた毒で生死を彷徨う。 幸にも目覚めたウェンディの前に現れたのは――竜王を名乗る美丈夫だった。 「命をかけ、勇気を振り絞って助けてくれたあなたを妃として迎える」 「お、畏れ多いので結構です!」 「それではあなたの忠実なしもべとして仕えよう」 「もっと重い提案がきた?!」 果たしてウェンディは竜王の求婚を断れるだろうか(※断れません。溺愛されて押されます)。 さくっとお読みいただけますと嬉しいです。

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

番探しにやって来た王子様に見初められました。逃げたらだめですか?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はスミレ・デラウェア。伯爵令嬢だけど秘密がある。長閑なぶどう畑が広がる我がデラウェア領地で自警団に入っているのだ。騎士団に入れないのでコッソリと盗賊から領地を守ってます。 そんな領地に王都から番探しに王子がやって来るらしい。人が集まって来ると盗賊も来るから勘弁して欲しい。 お転婆令嬢が番から逃げ回るお話しです。 愛の花シリーズ第3弾です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...