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第12章 新しい家族と新しい場所

12-20 黒幕の正体が・・・?

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 それからシルフィーと共に資料に目を通しては水晶に記憶させていった。



 ある程度作業が進み、シルフィーは突然シロンの部屋を出て行ったのだ。ただその事に対して俺は気付いてなかったが、シロンの声でシルフィーが居なくなっている事に気付いた。
「フィー姉様はなんであそこまで急いでたのでしょうか?ユウ兄様」
「えっ・・・あっ、あれっ?ホントだ・・・どこ行ったんだ」
 いつの間にか目の前に座って作業していたシルフィーの姿が無い事が不思議だったが、よく思い出すとなんか言っていた様な気がしたが・・・。

「どうしたんでしょうか?何か言って慌てていた様な?ユウ兄様解りますか?」
「う~ん、さあ?何か言っていた様な気がするけど・・・」
 シロンが、慌てて出て行ったシルフィーの様子が気になり俺に尋ねてきた。だが俺は作業をするふりをして、次々とコピーした資料をアイテムボックスに見つからない様に保管していたので、その直前の行動はよく解っていなかったし、何か言っていた様だが思い出せない。
 第一シルフィーが出て行ったこと事態、シロンが声をかけて来るまで気付かなかったぐらいである。

「シルフィーお姉ちゃんなら、これを読んだ後に出て行ったよ?えっと・・・これは予算配布計画(極秘)?・・・何これ?」
 ミーアが先程までシルフィーが目を通していた資料を見て、俺達にその資料を見せてくれた。

 俺はその怪しげな資料を受け取り、表紙と内容を確認すると・・・これまたビックリ予想以上の内容とここでまた、この国にあるまだ売却のめどが立っていない元俺達の屋敷のある土地への予算が組み込まれていたのだ。しかも国王の同意なしのうえに話が纏まっており、既に半分の予算が貯まっている状態だった。
 ただし期限には間に合わない状態なのだが・・・。

「おいおいこれって・・・おかしく無いか?確か国家予算から援助はせずに、あの場所のお金を払わせるって言ってた筈だぞ!しかも、これって・・・」
 まさかの孤児院への補助金のカットと各学園への予算を減額のうえに、その予算を全てミーア達の通う学園に回す計画になっており、その理由が優秀な生徒が増えたという事になっているのだ。

「これを見たら、悪意しか感じないぞ!どうやらこの計画を考えたのが・・・」
 この資料を見ていくウチに、最初は頭に来ていたが徐々に呆れてきた。ここまで露骨だと既にアホと言うしか考えられない。まあ、事情を知らない者が見れば、なるほどと言える内容だが見るものが見れば必ず解る内容だったのだ。

 その様な資料に目を通しているとシルフィーが戻ってきて、先程持ってきた資料で王様と上層部の大臣達の確認が入ってない資料と、今回の件に関係がありそうな資料を全てメイド達に任せ王様の元に戻す様に指示を出していたのだ。
 そして、この場に残ったのは殆どが各学園や孤児院に関しての補助金の流れと経営状況についての資料だそうだ。まあ先程の資料と違いこちらの分はちゃんと王様達の確認と承認の印が押されていた。
 しかも支給品の購入先が、リリアとカノが運営している店舗からであり、支給品である回復薬もその店舗から仕入れる事になっていたのだった。
「ユウマ様?このお話は知っていましたか?」
「いや、俺は知らないし回復薬の製作はいつもどおりだし、数もギルド分しか渡してないぞ。しかもこの話自体初めてだが・・・明日にでもカノかリリアに確認を取ってみるよ」
 もしかしたら俺の知らないところでそう言う話が上がってたのかもしれない。だがあの2人が俺に内緒で契約する筈はないと思う。特に回復薬に関しては色々と制限があるから俺に話さない事は無い筈だ。
 まあどの道その件に関しても、明日にでも確認を取ってみよう。帰ってから尋ねてもいいけど・・・他に確認したい事もあるので全て明日にしようと思った。

 それでその他の事を確認しつつ残っていた資料を水晶に記憶した後に、シロンにまた色々と話をした後に分かれて王宮から自宅のある神聖霊の森へと帰る事にしたのだ。それでどうやら明日の事でミーアはシロンと共に、今回の件で除名になった娘達の元に行く約束をしたみたいでシロンが別れの挨拶のついでに、俺に向けてお願いしてきた。
「それではフィー姉様、ユウ兄様、ミーアちゃんまた明日お会いしましょう。あっ!ユウ兄様!!お父様には話しておきますので、明日のお迎えよろしくお願いいたしますね」
 シロンと別れの挨拶をして、何故か明日俺が迎えに来る事になってしまったのだ。

「えっ?俺が・・・」
「うん!お兄ちゃんお願いね。ミーアだけだったら、シロンちゃんがお外に1人で出かけられないから・・・」
「そうですわね。ユウマ様お願いできますか?」
 まあ別にいいのだが、何故に俺なのかが解らないがシルフィーにもお願いされたので、しょうがなく明日もう一度ここに来る事にしたのだ。どの道またシルフィー達も、このシルフォードの城に連れて来なければならないから問題は無い。

 そして、翌日予定どおりシルフィー、レーネさん、キュリカさんの3人を連れてシルフォードの城にやって来たが・・・どうやら大変な事になっているようだ。どうも昨日シルフィーが見つけた資料に関する事で上から下へと大騒ぎになっているのだ。

「どうしたのでしょうか?この騒ぎは・・・ちょっと確認してきますね」
 レーネさんは近くでオロオロしている人を捕まえて事情を詳しく聞いていた。
 俺とシルフィーはこの状況がなんとなく理解できるが、レーネさんとキュリカさんにはこの状況がかつて無いほどの異常事態の感じがしているようだ。まあ、実際には異常事態なのは確かだが、この後更なる展開の要素をシルフィーは準備しているのだ。

「なあぁ、シルフィー・・・流石にこの後の会議で、あの後で見つけた資料を見せるのは、更に大事にならないか?下手すると国の経済が破綻するかもしれないぞ・・・それも一部の貴族のせいで」
 実を言うと昨日自宅代わりにしている神殿に戻ってから、シルフィーの手伝いをしながらとんでもない資料を見付けたのである。シロンの部屋で水晶に記憶させている段階では、然程気になるような内容では無かったのだが、持ち帰って確認していると、ある資料の部分に差し掛かると、全ての文章にフィルターがかかり見えない状態になる事が判明した。
 最初は説明にあった、情報漏洩防止対策の保護魔法の効果だろうと思ったのだが、その様な効果でなく見た者が誤認する効果と、そのうえに記憶処理を行なった場合は文章がぼやける効果を加えていたのだ。ただしこの効果は表面上であり俺には効いていないうえに、コピー能力で同じモノを作っていたので、直ぐにどの様な内容かが堪忍できたのだ。

 実際その資料に書かれていた内容は・・・。
「確かにそうですが、このままではわたくしの家族はもちろん、関係の無い民達が・・・」
 ・・・まあ、確かにあの資料の項目では、シルフィーの家族である王族は反逆者扱いになるうえに、この公国がある国に乗っ取られた挙句に、ある一定の国民が強制労働をさせられる事が書かれていたのだ。

 大体その様な事を行なえば間違いなく反乱どころか、反感をかって国自体が滅ぶはずだ。
 それでその計画を立てている貴族達の名簿まで、何故か親切に添えられていたのだ。

 しかし、これを資料室に置いてった奴は馬鹿なのか、それともその企みを阻止したいのかが見えて来ないが、どちらにしてもとんでもない奴なのは間違いがない。

 どう転んでも大変な事になるのは、間違いが無いだろうな。・・・まあ、そこが狙いなのだろうが、ヤバイ事にその資料には王様だけでなく、各大臣と重役の神官達の了承印とサインが記されているのだ。
 完全にこれを作った奴等は国の転覆を狙っている。しかもこの内容に関しての実行日が、明日からになっているので、とんでもないがこれを公にした途端に、かなり王様達が不利になる・・・まあ事実実行されてもたまったモノではないだろうが・・・。
 
 そして、もう一つの内容は貧民街と孤児院の解体と、冒険者ギルドの排除と冒険者の撤退を要求書が添えられたモノだ。詳しい内容は貧民街と孤児院は予算がかかりすぎるとの事と、何の役にも立たない理由らしい。
 そんな事を言っているのは、全て頭の悪い貴族達だ。そのうえ全て自分達の金で養ってるとでも言うような感じなのだ。自分達が寄生虫みたいな存在だとは気付かずにだ。

 それと冒険者とギルドに関しては、その頭の悪い貴族達の言い分で、言う事を聞かない等と邪魔な存在なんだとからしく、貴族をもっと大切に扱えだそうだ。

「でも、これを見せたら王様だって困るだろう。まあ貴族制度は廃止した方が賢明だけど、実際この国の半分以上の貴族は腐ってるから無理か、正常な貴族なら既に貴族街には住んでないからな!」
 実はかなり前になるのだが、貴族街は城の近くと俺達の元屋敷がある場所に分かれているのだ。ちなみに俺達が住んでいた方の貴族街は、常識的な貴族が多く住んでいて、その殆どの貴族達は他の国や領地に住んでいるらしいのだ。
 それで最悪なのが城の周りにある貴族街なのだが、そこに住む連中は・・・はっきり言って俺は嫌いだ!何せ自分の事しか考えていないうえに、以前シルフィーの誘拐を企てた貴族と同じ一族がいるし、俺達の屋敷にいちゃもんを付けた貴族等が多数住んでいる。少し前に調べた事があるが、ろくでもない貴族が9割程度住んでいるのだ。

「ユウマ様!もし危険な状態になる可能性があれば、この国の民を・・・」
 シルフィーが上目遣いで、お願いに近い仕草で話し掛けてきた。まあ、以前シルフィーの家族である王様達を神聖霊の森に移り住んで貰おうかを話した事がある。
 何せシルフォード公国での王族の役割は殆ど無いに等しい、それなら王族の権限をなくして完全な民主政治か、もっといい方法があるのではと思うが、下手な貴族が強欲に政治を進めたら、それこそ国が数ヶ月どころか1週間持つかどうか解らない。

「まあ、シルフィー家族は既に俺の家族であるからいいとして、この国の住人全ては無理だぞ!それはホントに最後の処置だからな」
 一応以前確認したが今俺達が住んでいる神聖霊の森の区域は、基本的に人を選ぶようなのだ。貧民街に住む住人は一部の地域の住民以外は問題ない、それに冒険者ギルド周辺の住民も以前のテコ入れで悪い事を考えているやからはいなくなっているので問題ないが、他の地区に住んでいる大半は入る事が出来ないのだ。

「はい!解っていますよ。それはいよいよの時でいいですので・・・それよりもそろそろシロンをミーアちゃんのところに連れて行ってあげて下さい」
 あっ、忘れるところだった。確かに待ってるだろうし、レーネさんとキュリカさんも戻って来たから、そろそろ俺も動こうかな。



 結局のところ肝心な事が確認出来ないまま俺は、シロンの部屋を訪れてシロンを連れてミーアの元に【瞬間移動テレポート】で向かったのであった。


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