義父の檻で咲く虚妄のα

枝浬菰文庫

文字の大きさ
2 / 4

再会

しおりを挟む
もし、叶うなら彼には会いたくなかった。


小学生低学年時代に出会った伊集院灯弥くんは憧れのαだった。
僕もαだけど何かが違う、求められているもの、強い意志、そんなキラキラとした存在。


だから傍にいたい。彼の元に……。


「坊ちゃま、そろそろ」
「じゃぁまた今度な!! 絶対に忘れんなよ」

そう言って彼は遠くの地に行ってしまった。涙なんて流さない。君の笑顔を忘れない……。



8年後、僕は高校2年生になった。
鳳凰ほうおう高校、輝かしいαのみが通っている学校、その中で僕は優秀な生徒として生徒会長に選ばれた。
そして、君と再会する。


「うわぁっと……綺麗な顔だな、いや……なんか知っている気がするぞ」
初対面で話しかけられそう呟かれた。同じくらいの身長にはっきりとした男の顔。

「あーそうだ! 名前、俺転校生の伊集院灯弥っつんだ、よろしくな」
伊集院灯弥いじゅういんともや……」

ボソっと僕は名前を呟いていた。忘れたい。忘れたくない。昔出会った眩しすぎる彼、思わず瞬きを繰り返していると彼は口を開いた。



「あ! 思い出した、お前白玖はくだろ」
そう名前を呼ばれ驚いた顔を表に出す。もう僕の中ではこの人の名前を知っている、立派に成長している彼に少しきゅんとしてしまう、自分が恥ずかしい。


「白玖、俺はお前に会えて嬉しいぞ」
そう素直に聞こえる。懐かしい元気な声。


だけど、僕はもう君が知っているような人間ではない。


「えっと……僕は九条白玖、もしかしたら人違いかもしれないよ、たしかこの学校に〈はく〉は数人いるから」
「えーそうなのか? でも俺はお前が知っている人だと思うけどな、まぁよろしく!!」


肩に触れられる、懐かしい感覚。でもあの頃の僕にはもう戻れないから。


「君、転校生って言っていたよね、先生が君のことを探していたから連絡するね」
「あーサンキュ!」


先生に連絡を終え、職員室に彼を届けた。きっとこれで最後。会わないようにすればいい、そんなこと簡単なことだ。


「白玖……」
僕に抱きついてきた男は僕を空き教室に連れて行く。

「抱くぞ」
「今お父様が契約中じゃないの?」

「知ったことか、お前だって抱かれたくて仕方ないんだろ」

そう勝手に決めつけてくれる。Ωでもない、僕をどうして抱くのだろうか。
甘くも美味しくもないただの陶器を。


性器が秘部につけられ押し込まれる。Ωじゃない、もっとゆっくり身を開いてくれ、そんなこと言える立場に僕はいない。無理に抱かれ、秘部に傷がつく。

カチャカチャとズボンを履き、男はこちらに札を散らした。
「今日のご褒美だ」

嬉しくない。でも僕はこれしかできないから、床に座り込みながら札を集めた。
笑顔で彼を見送る。教室のドアはピシャっとしめられ、服を着て出ようとすると思わぬ男がそこにいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...