リス獣人の溺愛物語

天羽

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10さい

45話 獣人化

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……何だか身体の中が熱くて……痒い。
皮膚じゃなくて……どちらかと言うと骨が。

もっと正確に言うと……痛痒い?みたいな感じ。

そう、成長痛の様な感覚だ。
今までこんな事はなかったのに、溜め込んでいた分全てが今この瞬間に押し寄せて来たような……それ程までの大きな違和感に俺は眉を顰めるーーーーーーー。



「うぅ……ん……」



睫毛を揺らし、ゆっくりと瞼が開く。


……あれ?ここはどこだろう……?


まだ意識が朦朧としていているのか……何も思い出せない。




俺は……何をーーーーーーーーー。




……そうだっっ!ラディ!!!!!



これまでの事を思い出した俺は……ばっ!!と勢いよく身体を起こす。



「うっ!!……うぁ……いぃ……」



瞬間、頭に激痛が走り俺はうずくまる。
ズキズキと痛みの引かない頭を抑えながら、周りを見渡した。



……ここは、ラディの部屋か?



見慣れたラディの大きな部屋に何処か安心感を覚えた。


ラディの大きなベッドに寝ていた俺が不意に隣を見ると、落ち着いた呼吸で眠っているラディが目に入り俺は頭の痛みなど忘れてラディの顔を覗き込んだ。



……はぁ、良かった……ラディ、生きてる。



あの時は本当にラディを失うかと思って心臓が止まりそうになった。
ラディが生きていて良かったと心の底から思うと共に、一向に起きそうに無いラディを見ていると、このまま一生眠ったままなのではと不安にもなる。



……ラディ、ラディ……起きて。




「う……うぁ………………う?」  




……何だこれ?上手く喋れない。

それに何処からか聞いた事ない、高めの声が聞こえてきた。


そう思ったと同時に、様々な違和感に気付く。


目線の高さやベッドシーツに当たる感触、肌寒さ……それに、目の前に映る


「あ……あぅぁ……」


俺は目の前にある手を動かしたり、その手で顔をペタペタと触る。



……これって、もしかして。



俺はベッドの端までにじり寄り、窓から差し込む、まだ朝日が昇る前の薄明かりでまじまじと身体を見る。


白い肌の手足。


頭を触ると、2つのふわふわな丸い耳が控えめに存在している。

後ろには胴体と同じくらいの大きさをした、先端が丸まっている尻尾。



そして、先程の身体の痛痒い症状。



ーーーーえ、本当に……俺……。



そう思った瞬間、背後から聞こえる寝返りの音と……弱々しい悲痛な声に、俺は丸い耳をピクピクと動かす。



「う……いか、ないで……」



大好きなその声にゆっくりと振り返る。



「あ、い……?う、うぁ……」



ラディ、ラディだ……。ラディが目を覚ました……。


もう駄目だと何度も思った。
目を覚まさないかもって怖かった。


俺の目頭がじわじわと熱くなり、大きなブロンドの瞳からは大粒の涙が滲む。


薄目を開けたラディが俺の存在を視界に入れると、驚いた様に目を見開く。
ラディは俺を見つめたまま一時停止したかの様に動かなくなり、どこか痛いのだろうかと心配になった。



「ひっく、ひっく……あ……い、あぅ……」



眉を下げ心配した俺は、ラディの方へ少しだけ近づく。
その様子にハッと意識を覚醒させたラディはゆっくりと俺へ声を掛けた。



「リ、ツ……なの?」



その声は掠れてて弱々しく、いつもの様な凛々しい強さは感じられなくて、俺はポタポタと涙を落としながらコクコクと小さく頷く。



「う、うぁ……いぃ」



身体は大丈夫?
勝手な事してごめん。
助けてくれてありがとう。


伝えたい事は山ほどある。
……でも、上手く喋れないし、それ以前に嗚咽が邪魔して言葉にもならない。



「リツ……そっか……おめでとう、獣人化…出来たんだね…。怪我は…無い?大丈夫?……うん……僕は……平気だよ。……だから……泣かないでリツ……」


ゆっくりと手を上げたラディは、俺の頬をつたい続ける涙を拭う。



「うぅ……ひっく…うぁぅぅ……」



ラディの手だ……。
優しくて温かい手……。
もう触れられないかもと怖かった。

俺は存在を確認するかのようにしっかりとラディの手を両手で抱き締める。
そんな俺にふっと笑みを零すラディ。



「そんなに泣いたら……リツの綺麗な顔が、溶けてしまいそうだ…………ねぇ、リツ……僕との約束……覚えてる?…………せっかく、上手に獣人化出来たんだから……僕に、リツの可愛い姿をもっとよく見せて……」


そう言ってラディは笑った。


ラディ、ラディ……俺、あんな勝手なことして、ラディに痛い思いさせたのに……ラディの事傷付けたのに……まだ俺に優しくしてくれるの?

俺の事、許してくれるの?


 

ーーーーーー俺、ラディの傍にいてもいいの?










「う……ひっく、あぃ……う……うぅ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」






その瞬間、堪えていたものが一気に弾けて、俺はラディの胸へと飛び込んだ。


「リツ……リツ、無事で良かった……本当に……」


大量の涙を流す俺をギュッと抱きしめるラディの声も震えていて……泣いている様だった。


ギュッと隙間が無いほど強く抱き締め合う俺とラディ。


俺はその温かい存在を確認するかの様に、何度もラディの名前を呼び、ラディは何度も俺の名前を呼んだーーーー。









ドンドンとラディの部屋のドアが叩かれ、ラディの父ちゃんや母ちゃん、ライオネルやボブ、使用人達も集まる。



「ラディアス!!リツちゃん!!大丈夫!!??大きな声が聞こえーーーーーーーーー」



勢いよく部屋に入ってきた屋敷の人達は獣人化した俺の姿を見て一斉に言葉を失い、目を丸くする。




そんな皆の様子など露知らず、俺はラディの存在をひたすら感じていたのだったーーーーーーー。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
7月の内に獣人化出来て良かったぁぁぁぁ~。
暫く獣人リツちゃん続きます!
引き続きよろしくお願いします!
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