リス獣人の溺愛物語

天羽

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17さい

98話 2人部屋②

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それから俺は一旦ライオネルやアルベール殿下と別れ、ラディとこれから生活する部屋へと足を進めた。

ラディに促され部屋へ入ると、俺は目を見開き目の前の光景に息を飲んだ。



……その部屋は、一言で言うと……規格外……だ。



学生寮ってもっと狭くてちょっと汚らしくて、簡易的な感じのを想像していたのだが、ここの学生寮は全くもって違っていたのだ。


広い部屋に豪華な家具、ソファなんて大きくてふかふかで、所々に観葉植物まで置いてある。
リビングや寝室に敷かれるラグは凄く高そうだし、キッチンもお風呂だって広くて、まさに高級宿の部屋の様だった。


……流石は人気名門アカデミー……他の国の人達ですらこのアカデミーに入学したいと希望する程だ。
魔法や剣術、学問の才能を最大限に引き出す為に希望するのは勿論の事だが、こういった日々の生活を送る場所が住みやすい場所である事も、人気アカデミーの秘訣なのだろうと感じたのだった。






「……ラディ、このクローゼットって俺が使っていいの?」



「あぁうん、そこはリツのーーーーーーそんな事よりリツ、ちょっとこっち来て」



ラディはそう言って自分が座っているベッド端の隣をトントンと叩く。



「え、でも俺…持ってきたもの仕舞わないとーーーー」


「ちょっとだけ……だめ?」


「ぐぅ……!」



ラディのしょんぼりとしたその表情を見たら断るなんて出来ない……。

俺はラディにゆっくりと近付き、隣へ腰を下ろす。
ベッドは想像以上にフカフカで、座ると自重で身体が沈む……それが凄く心地よかった。



「……リツ…やっとだ」



「ら、ラディ?」



ラディが俺をギュッと包み込む。
ふわぁっと香る大好きなラディの匂いに包まれて、俺もホッと息を吐いた。



「やっとリツと……また一緒に居られる」



そう言ってラディが無邪気に笑った。

思えば昔のラディは俺以外には全然笑わなくて…家族にすら無表情だった。
でも最近のラディは、家族や友人のアルベール殿下、稽古を共にする騎士達にも時折笑顔を見せる様になって、俺は少しだけ安心したのだった。

……まぁそれにより、ラディを狙う令嬢や令息も後を絶たないから、最近の俺はそれと同時に少しだけやきもきしているんだけど……。


なんて思いながら、俺は「ふっ……」と笑みを零し、自身もラディの背中に腕を回した。



「ふふっ、俺も!俺もラディと一緒……嬉しい」



そう言って俺はラディの肩口にグリグリと額を押し付けた。



「……リツ、キスしたい」


俺の肩を優しく押し返して、真剣な表情で見つめられる。
その表情にドキッと胸を高鳴らしつつ俺は小さな口を尖らせて呟いた。


「むぅ、何でそんな事いちいち聞くんだよ……いつもはいきなりする癖に」


少しだけ拗ねた様に言うと、ラディが意地悪な表情を浮かべてゆっくり顔を近づける。



「なんか、聞きたくって……ねぇ、していい?嫌ならしない」



……こんなにも近付いてるのに今更何言ってんだよ。



そう思いながらも、俺はラディを見上げる。
ーーーーそして、自分からラディの首に腕を絡ませ……チュッとその形の良い唇に可愛らしい音を立てて軽くキスを落とした。



「はぁ、もう…嫌なわけないじゃんか……ラディのバカ……」



赤く火照った頬を膨らませてラディを見つめる。
俺の行動に驚きの表情を浮かべていたラディは「ふっ……」と静かに笑うと、それから暫く……ぱくぱくと食む様なキスを繰り返していたのだった。













「あ、そうだーーーーーーはい!ラディ」



俺は持ってきた鞄から綺麗にラッピングされた袋を取り出して、ラディに手渡す。



「ん?これは?」


「クッキー!昨日俺が作ったんだ」


二カッと笑うと、ラディも優しく微笑んでそれを受け取ってくれる。


「ありがとう、リツ……凄く嬉しいーーーーーこれは僕にだけ?」


「……え?」



ラディは期待した様な瞳でそう言って俺を見つめる。



……た、確かにラディの事を考えて甘さ控えめで作ったけど……皆にあげようと思って作ったんだーーーーーーなんて、ラディにこんな目で見られたら言えないよぉ……。



「あ、あのっ!えぇーっと……屋敷の皆に…もあげたーーーーでもでもっ!ラディの為に甘さ控えめに作ったし!ラディのが1番沢山入ってるから!!ーーーーーそ、その……」


「ぷっ……くすっ」


俺が慌ててそう言う隣で口を押えて肩を揺らすラディ。



……こ、こいつ……もしかして揶揄ったな……。



「ラディ……もうきらい……」



俺は頬を膨らませてそっぽを向く。



「ごめんリツ……慌てるリツが可愛くて、嫌わないで……?」



ラディは拗ねる俺を優しく包み込むと旋毛へキスを落とした。


「リツ、今お茶入れるから……一緒にクッキー食べようか」


そう言って眉を下げ、首を傾げるラディは相変わらず凄くイケメンで……俺はそんなラディを見ると、胸がキューッとなってどうしようもない気持ちになるんだ。



「しょ、しょうがないな……一緒に食べてやるよ」



俺は眉を寄せ目を逸らしたまま小さな口を尖らせてそう言うと、ラディの唇が音を立ててくっつく。



「ありがとう……リツ、愛してる」



……ほら、また胸がキューってなった。



「……お、俺も……」




胸の高鳴りが治まらない俺は、そう小さく呟いた。

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