リス獣人の溺愛物語

天羽

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17さい

108話 お互いの夢と目標

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「う~ん……ううぅ~」


「そうそう、いい感じだね~」


「……ふぅー、ハビー先生どうですか?」


「うん上出来だよ、流石は僕の教え子!!……これなら来年には騎士団や僕達魔導師と共に魔獣討伐へ参加してもらうと思う」


少しだけ真剣な顔付きになったハビー先生を俺も真っ直ぐ見つめ頷く。





ーーーあれから数日が経ち、この学園生活にも少しずつ慣れてきた。

初めこそハビー先生の登場にびっくりしたものの、学ぶ事は屋敷にいた頃と何ら変わりなく、週に2日程は放課後ハビー先生の元へ行き、神聖魔法の使い方を習っている。

今日は浄化魔法の練習のため、ハビー先生が魔獣の瘴気を含んだ魔石を用意してくれて、それを俺が次々に浄化していく訓練。
習い始めの頃は思うように行かなくて、落ち込む事もあったけど……練習に練習を重ね、今ではハビー先生に褒めて貰えるくらいには成長したのだ。


来年……来年か……。


やっと俺も役に立てる……。


きっとラディやライオネルには断固拒否されると思うけど、既に2人は魔獣討伐に何度も参加している。
……俺だって皆の役に立ちたいってずっと思っていたから正直師匠であるハビー先生にそう言われて俺は嬉しかった。


……もっと頑張らないと!!


皆を助けられるように……ラディに守ってもらうばっかにならないように!!

俺は両手を強く握りしめ、気合を入れたのだった。







。。。。。。。






「なぁ、ミロットってなんでこのアカデミーに入学したんだ?」



午前の授業が終わり、昼休みに入る。
俺は友人となったミロットと共に食堂へと行き、本日のメニューの中から決めたトロトロチーズのデミグラスオムライスを口いっぱいに頬張りモグモグと口を動かしていた。


そんな俺を見ながら変わらずの可愛らしい笑みを浮かべた兎獣人のミロットは、食べていたサラダを飲み込んで俺の質問に答える。



「僕は植物を育てるのが好きで……少しだけど土と風の魔法が使えるんだ。何でも僕の育てる植物は魔法のお陰もあってか品質が良いみたいで……アカデミーから入学通知書が届いたんだ」


「へぇ、そうなんだ。俺も屋敷にいた頃は趣味で花とか野菜とか少し育ててたけど、失敗ばっかりで……よく庭師の人達に助けて貰ってたな…そう考えると1人で植物を育てられるミロットは凄いな!!」


俺の素直な気持ちを伝えると、ミロットは頬を染めて俯く。


「ぜ、全然そんな事ないよ……でも、ありがとう。僕ね、このアカデミーで薬草の事について学んで、いつか皆が手軽に服用出来る便利な薬を作りたいって思うんだ」


「……薬?」


「うん、僕の実家は山奥にある村で農家をしているんだけど、村には医者や薬師が居ないんだ……。だから薬を貰うだけでも、数時間はかかる街へと出なくてはいけいのだけど、僕の村はその町から少し疎外されていて、あまり良い顔をされないんだ」


ミロットのその言葉を聞いて俺はドクンと心臓が跳ねる。


「どうしてか……聞いてもいい?」


おずおずと聞く俺に、ミロットは眉を下げ悲しそうに微笑むとコクリと頷いた。


「僕の村はね、小型獣人が多いんだ……」


「……え?」


ミロットの呟きに俺は目を見開く。

俺は今まで小型獣人を見たことがなかった……母ちゃんとアカデミーで友人となったミロット以外。


「正確に言うと、僕の村は小型獣人を伴侶に持つ獣人族や人族が、少し前に作った村で……好奇の目に晒される小型獣人を守るために作った村だと父さんが言っていた……だから数少ない小型獣人が多い」


……そんな村があったんだ。
そんな、優しい村が。


「……でも1歩街へ出ればやっぱり好奇の目に晒されるのは確かで、医者や薬師は僕達の村に来たがらない……だから僕は、アカデミーの入学通知書が来た時、両親の反対を押し切ってここに来たんだ。僕が村の薬師になるために」



ミロットはそう言って強し眼差しで俺を見つめた。
1人で……たった1人で覚悟を決めて温かい村とは正反対の場所に来たミロットをかっこいいと思った……応援したいと思った。
そして同時に、俺も1度ミロットの実家へと行ってみたくなったのだ。



「あ……ご、ごめんねこんな話…つまらなかったよね」



「そんな事ないっっ!!ミロット本当に凄いよ尊敬するよ!!」


「……っっ!」


俺は椅子から立ち上がりミロットの手を両手で握りしめる。
突然の事に耳を立てて驚いたミロットだったけど、直ぐに頬を緩め「ありがとう」と呟いたのだった。






「あの、もしよかったら……リツくんの事も知りたい……あ!でも嫌なら全然ーーーーーー」


「ーーーううん、ミロットだって沢山話してくれたんだから俺も話さないと対等じゃない。少し長いけど聞いてくれる?」


そうして次は、俺の壮大な過去についてミロットに話したのだった。


……グラニード公爵家の人達以外、誰にも言ったことのない俺の過去。
ミロットになら話してもいいと思った……話したいと、思ったんだ。








「ーーーーーだから俺は、俺に闇魔術の呪いをかけた犯人を知りたいって思ってる。そして、俺のこの特別な力で困ってる人を助けたいって……初日にハビー先生と知り合いだったのも、俺の師匠だからーーーって、えぇぇぇぇ!!!なんで泣いてるの!!!」


一通り話し終えてミロットを見ると大量に涙を流し鼻を啜っていて俺は驚き声を上げ、急いでポケットからハンカチを取り出すとミロットの目元に当てる。



「だ、だって……リツくん…すごく辛かっただろうなって……なのに、こんなに優しくて…前を向いてて……」


自分の事のように泣いてくれるミロットを見て、何故か俺の心は温かくなり、目元が熱くなる。


……あぁ、やっぱり……話して良かったなぁ。


まだ知り合って数週間しかだっていないけど、それでもこんなに自分を思ってくれるミロットとずっと仲良くしたいと思った……。



「今度ラディやラオも紹介するね。あ!あと俺の友達で植物に詳しいやつがいるんだ!そいつも紹介するから、ミロットさえ良ければ……長期休みに入ったら俺もミロットの村へ行ってみたい……」


断られるかもと眉を下げ小さく呟くと、ミロットの顔がぱぁぁぁっと明るくなり耳がピクピクと揺れる。



「もちろんだよ!!皆絶対歓迎する!絶対来てね!」



「…っ!うん、うん!!」



優しいその言葉が嬉しくて、俺の耳はゆらゆらと動く。
そうして……俺達はお互いの夢や目標を話し合って、前よりも一層仲が深まった気がした。





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