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17さい
107話 見覚えのありすぎる顔
しおりを挟む学園で初めてできた友達は、綺麗な白髪の髪と垂れ下がる耳、色白の肌、そして赤く輝く瞳が印象的な兎獣人……ミロット。
なんと嬉しい事に、同じクラスだった!!!
文学科は2クラスで分けられているから、運良く同じクラスになれたのが嬉しくて俺の耳はピクピクと揺れる。
「なぁ、あれって噂の……」
「間違いないよ、うわぁ想像以上にかわーー」
「バッカッ!お前あの方に殺されたいのか」
「わ、分かってるよ……」
あ……またこれか……。
俺とミロットが教室に入ってきた瞬間、生徒達がチラチラと横目で見ながら耳打ちする様子に、数分前から俺は何度もため息をついていた。
ラディとの噂……本当にあちこち出回っているんだな。
確かに貴族だったら知っている人も多いと思うけど、平民だって多く在籍するこの学園にこうも早く出回るなんて……。
それほどラディは皆から期待と尊敬の眼差しを向けられているって事なんだろうけど……。
正直……居心地が悪すぎるっ!!!!
俺が机の上で掌を握りしめた時、ガラッと教室の扉が開く。
「はいは~い、皆席に着ーーーいてるね~じゃあ授業を始めます!」
入学して最初の授業……それを担当する教師が入ってきて、俺は顔を上げる。
「ーーーーっ!え!?」
「ん?あ~、リツちゃんだ!!久しぶり~…と言っても3日前に会ったけどね~」
「は、ハビー…先生!?」
教卓に教科書を置くハビー先生は俺を見てニコリと笑い手を振る。
屋敷での授業中、いつも必ずしていた丸メガネを同様にかけた……見覚えのありすぎるその顔は間違いなくハビー先生だった。
「な、なんでハビー先生が……!!」
「それはまぁ……可愛い教え子のために?」
口元に人差し指を当てて誤魔化す様に言うハビー先生に眉を寄せる。
そんな俺を見て降参を示すように手を挙げたハビー先生は薄らと笑い口を開く。
「あはは、それじゃあリツちゃんは後で先生と一緒に来るように!!」
「ちょ!!まっーーーーーーー」
「はぁ~い、それじゃあ授業を始めまーす」
そうして初めての授業は、予想外のハビー先生の授業で……俺はその状況にモヤモヤしたまま始まったのだった。
同じクラスのミロットや他の生徒達は、そんな俺とハビー先生を交互に見て、終始呆気にとられていたという事に、その時の俺は気付いて居なかったーーーー。
「ハビー先生!!!どうしてアカデミーに居るんですか!!!!」
授業が終わり、俺はハビー先生の教員部屋へと行き勢いよく詰寄る。
そんな俺を見て楽しそうに笑うハビー先生は相変わらず老いを感じない美貌を維持していて本当に不思議だ。
「あはははっ、リツちゃんをびっくりさせたくて内緒にしてたんだよね~」
「だよね~……じゃない!!ハビー先生、ここの教師もやってたの!?」
魔法ギルドのギルドマスターで魔獣討伐にも参加して、俺やラディ、ライオネルの先生もしていた先生はまさかここの教師もしていたとなっては本当に人間か疑うレベルである……。
別の意味でドキドキと脈打つ心臓に手を当てて、ヘラヘラと笑うハビー先生を見つめる。
「いいや、元々誘われては居たんだけど…僕だってそんなに何個も仕事を受け持つのは無理だからね」
ハビー先生のその言葉にほっと息を吐くも、ハビー先生の多忙さは俺だって知っている。
そんな山積みの仕事を淡々とこなすこの人が、本当に人間なのかはまだ疑っているのだが…。
「じゃあどうしてですか?」
キョトンと首を傾げる俺を見つめてニンマリと笑うハビー先生は俺の頭を耳ごと撫で回す。
「うわぁっ!」
「そりゃもちろん!可愛い可愛い教え子が入学するんだもん、僕もついて行かなきゃいけないでしょ~」
「でもさっき何個も仕事を受け持つのは無理って!!」
「うん、だからギルドの方はあらかた部下に任せてきちゃった!」
ペロッと舌を出して可愛く答えるハビー先生に俺は何からツッコんでいいか分からなくて眉を下げる。
「任せてきちゃったって……」
「この学園の学園長が実は僕の師匠なんだ、だから融通も効く……もしもギルドに何かあったら教師の仕事は二の次になるって事を了承してこの仕事を受けたから大丈夫!!それに僕の部下はすごく優秀だからね!!!」
「え!?学園長が……ハビー先生の師匠!?!?」
……あのめちゃくちゃ話の長かった爺さんが……ハビー先生の……。
「そうそう!今度リツちゃんも紹介するって約束してあるから、その時は師匠に会ってあげて」
軽く爆弾を落とすハビー先生は俺の肩に手を置くと、ニコッと爽やかな笑みを浮かべる。
「って事で、これからもリツちゃんの事色々調べさせて貰うから……改めてよろしくね!」
「え、えぇ……」
一応ハビー先生は俺の師匠的存在なのだが、そんな師匠を突き飛ばしたくなったのは許してほしいと俺は心の中で思ったのだった。
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