【完結】おじさんはΩである

藤吉とわ

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12話ーヒート② *

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 床ってこんなに冷たいんだ。でも熱くなった体にはちょうど良い。
 雄大はぼんやりと天井に目をやり、これは何て模様なんだろうと暮らし始めてから初めてじっくりと壁紙を眺め見た。まだ視界は霞む。ついでに脳内も靄が掛かったようになって、今は善悪の判断を下せる思考回路にない。
「んんぅ、ん」
 Tシャツを捲り上げられて腹を舐られていると自覚なく声が漏れる。でももう恥ずかしいという感情は死んだ。
 もう少し若い頃にはくっきりと浮き出ていた腹筋も今では脂肪に負けてしまっている。ぶよぶよでズボンの上に肉が乗るということはないが、締まりがないのは確かで、けれど、そんな腹を戸賀井は一心に舐ってくる。
「し、つこ、っ」
 脇腹を舐られながら胸を弄られ、それだけで一度射精した。普段淡白だと自認している精力は何だったのかと思うほど、達しても達しても足りなくて溢れるように性欲が湧いてくる。
 乳首を摘まみ、腹の肉をガジガジと食んで戸賀井が空いた片手を下に下ろす。
「はぁ、っ、あ、あっ、とが、戸賀井くん……早く」
 言葉だけでなく視線も使って催促をする。中央部分を中心にぐっしょりと濡れた下着に戸賀井の指が掛かる。期待だけで射精感が上がってくるが、呼吸を控えめにして興奮を抑える。
「せんせ、可愛い」
 Ωのヒートを味わうのが初めてなら、αのラットを間近で見るのも初めてだ。他のαがどうなのか比べようもないし、個人差もあるだろうが、どうやら戸賀井のラットはIQが低下するのが特徴のようだ。
 先程からしつこく肌を舐り上げて、時には歯を立てつつ、目が合うと「可愛い、可愛い」を繰り返す。
 三十四の取り立てて褒める場所のない、普通体型のおじさんに向かって言う言葉ではないだろう。だから戸賀井はラットで頭がおかしくなっているんだなと思うことにした。
 性行為の際に、交際相手でもない者を愛おしいと感じる現象はしばしば起こるというし、多分その手の類のものだろう。
「あ、ぁ」
 ボクサータイプの下着の腰元を引っ張られると薄い布と陰茎がくっ付いていて、体液が粘っこい糸を作る。
「はー、っ、すげ、いい匂い」
 生臭いの間違いではないか。ああ、でも戸賀井はαだからΩの発する匂いに魅かれるのだ。彼も自分と同じような甘い香りを嗅いでいるのだろうか。そう思うと腹の奥がきゅうっと切なくなる。堪らない。早く欲しい。男に組み敷かれてるなんて恐怖でしかないはずなのに、欲に支配されて、怖いというよりも満たされたいという気持ちの方が大きくなっている。
 ボクサーパンツを中途半端な位置まで下げると、焦らすこともせずに戸賀井が雄大の陰茎を掴む。
「いっ、ぁ、ぁ」
 濡れ過ぎていて戸賀井が雄大の陰茎を扱く度に手の中から滑って抜ける。ちゅぽっ、ちゅぽっと間の抜けた音が可笑しいのに笑う気にはなれない。それよりもまた達してしまいそうで雄大の腰がふわっと浮き上がる。
「ぁ、ぁ、イッ、く、とがっ、い、くん、ぁ、イクッ、あっ……え」
 射精の瞬間、亀頭が温かなものに包まれた。経験のない熱さに雄大は床に付けていた頭を起こす。何が起きたのか確認の為だったが、戸賀井の手の平の中にあると思っていた陰茎に彼のピンクの舌が添えられていて、目を剥いた。
「なっ、え、なに、ちょっ、口に……っ、ん、ぅ、汚いぃ」
 亀頭の先端に付いた体液や、今まさに鈴口から溢れて出ている先走りの汁を吸われて雄大は悲鳴めいた喘ぎ声を出す。
 それで止めて貰えるはずもなく、戸賀井は口に含んだ陰茎の裏筋に舌を這わす。先程見えたピンク色の舌が敏感な場所を這い回る。ジュジュッ、と吸いながら根元は手で扱いて、射精後の陰茎に器用に刺激を与えられると雄大は射精とは違う感覚に襲われて床に爪を立てた。
「ぁ、ぐ、ぅ……ぁ、待っ、て、待って、戸賀井くんっ、戸賀井くん、なん、なんか、へん、へん、も、漏れちゃ、っ、は、は、あ、あ、出ちゃう、出ちゃうからっ」
 膝の震えが太腿に移って痙攣し始める。止められない。自分の意思ではどうにも出来ない。
 雄大の変化に気が付いて戸賀井の口が陰茎から離れた。けれどもう遅い。達する時とは比べ物にならない快楽が上り詰めて弾ける。
「はっ、うぁぁっ、あっ、あ、あ」
 透明の、水のような液体が鈴口から噴出する。一度や二度ではなく、何度も何度も、勢い良く噴き出しては戸賀井の手や顔を汚す。
 漏らしたという失態に、床に取り込まれて地下深くまで潜って隠れてしまいたいと思うが、戸賀井はやけにうっとりとした表情で「いっぱい出てる……可愛いです、門村先生」とおかしなことを言う。
「見、ぅ、み、ないでっ、やだ、や、ぁ」
 羞恥心はとうに墓場の中だけれど、情けないという感情は残されている。雄大は足を閉じるが、戸賀井に膝を掴まれて結局最後の一滴が出切るまで全て見られてしまった。
「ふ、っ、うう」
 涙を滲ませ泣き声のように呻く。先程放った大量の液体のお陰か、一旦火照りは収まった。
 今の内に廊下を掃除して、部屋に行きたい。主治医である田口にも連絡をしなければ。そんなことを考え、戸賀井にそれを伝えようと上半身を起こすが、すぐに足を持たれて戸賀井の方へ引っ張られ、雄大は抵抗出来ずにまた床に背を付けることになった。
「戸賀井くん!? 俺、漏らしちゃったから、玄関綺麗にしたい。それに田口先生にも――」
「あとで……あとでにしましょう。俺が掃除するから。田口先生にも俺から伝えておきます」
「戸賀井くん?」
「まだ終わってないです。俺、まだ……」
「あっ、あー……そういうこと……ごめん、自分のヒートのことばっかりで」
 戸賀井くんも出したいよね、と直接的には言えなかった。でも彼のズボンの股間部分がきつそうに張り詰めているのは知っていた。
外見や中身に魅かれなくてもΩの匂いには抗えない。これがバース性の厄介な所で、事件や事故に繋がるから世間で問題視されて――あれ……でも確か戸賀井くんは理性が働くって言ってなかったか。特定の相手……好きな人以外には理性がきくって―― 
 雄大が冷静になれていたのはここまでで、戸賀井の指が尻に触れるとそれが起爆剤のようになって再び体に火がつく。他人には勿論、自分でも触れたことのない場所。けれど、ヒートになってからずっとここに触れられたい、戸賀井に触れて欲しいと思っていた。
「はっ、はっ、ああ」
 指の腹が当たる。それだけで水音が立つ。
「すげぇ濡れてる……すぐ入りそ」
 αやβが男同士で使おうとすればどうしようもなく狭くて小さな穴だが、Ω男性からすれば生殖器であるそこは相手を受け入れやすいよう愛撫に応えて濡れる。ヒートともなれば溢れるほど湧いて来て、雄大の後ろの穴は戸賀井の指を招くようヒクつく。
「んううっ、戸賀井く、ね、はやく」
 戸賀井と関係を持つことをいけないことだと思い拒否していた雄大はもうここには居ない。頭の中までヒートに犯され、初めて触れられる場所も怖くはない。恐怖感があるとすれば、そこに触れられたら、戸賀井が入ってきたら自分はどうなってしまうのだろうかという欲塗れの恐れのみだ。
 ツプツプ、と周りを押し広げて戸賀井の指が入ってくる。それだけで雄大の口から「ヒッ」と悲鳴のような声が漏れる。
 遠慮をしなくなった戸賀井は、一本目の指を差し込んで中で動かすとすぐに二本目の指を入れて来た。奥の方がむずむずしてもっと深くまできて欲しいのに、戸賀井の二本の指は浅いところを行ったり来たりするだけ。達しそうで達せない、焦れてしまって自分から腰を動かすと戸賀井の指が腹側に擦り付けられて、雄大はピクッと肩を揺らす。
「は、あ、なん、か、そこ、ぁ、ぁ、いい」
「え、ここ? ここ好き? 好きですか、門村先生」
「あ、う、っ、んんっ、そこ、気持ち、い、好き、ぁ、好き、好き」
 雄大の好い部分を見つけたのか戸賀井はそこを的確に捉えて、トントンと指の腹で叩いてくる。それをされると益々奥が切なくなってくる。
「うぁぁっ、イッ、く、イク、出ちゃう、戸賀井く、っ」
 すりすりと腹側を擦られてあっという間に上り詰めていく。短時間に何度も味わった快感がまたやってきて、身を任そうと雄大が力を抜くとその瞬間に戸賀井の指が好い場所から離れた。
「っ、え」
 薄っすらとしか開いていなかった瞼を持ち上げる。今の今まで在った強い快楽がある程度のところまで緩やかに落ちていく。
「……門村先生、俺、挿れたいです」
 合間に、はっ、はっ、と犬のような息をする戸賀井を見て雄大は息を飲む。発情している男の迫力を保ったままで、それでも許可を求める健気な戸賀井に体の表面だけでなく芯の方まで熱が移っていく。
「俺ので、先生の好きなとこ突いてあげたい」
 その奉仕精神は何処からくるのか。思わず笑ってしまいそうになった。というか半分笑ってしまって、顔が歪む。目元周りの皮膚が引き攣ると目に溜まった涙がぼろぼろと零れて、「いいよ」と発する声が上擦る。
 終わったら後悔するかもしれない。それは自分か、それとも戸賀井か。迷う心はまだあるけれど、もやもやとした気持ちはすぐにヒートという言い訳と性欲に搔き消されてしまう。
 ズボンのボタンとチャックを下ろす音。耳に届くそれらを聞かぬ振りをして、雄大はその時を待った。「先生」と呼ばれる。君の先生じゃないよ、と断りを入れたいが、そんな余裕はない。
 戸賀井が覆い被さって来て、決して軽くはない男の重みに安心してしまう。自分が下になることに、落ち着いていられることが不思議だった。
「は、っ、せんせ、門村先生っ」
「ん、うう」
 ズブ、と指とは全く質量の異なるものが入って来て、内臓を押し上げられる感覚に息を吐くと同時に呻く。中で更に大きくなる。
Ωの性質とは別の、男としての本能が働いて逃げたくなる。身を捩ろうとするが、戸賀井の体に押されてそれが叶わない。
「はー……っ、はぁ、はー」
 雄大はゆっくりと息を吐いて、瞬きをする。涙が零れても拭わずにその手を戸賀井の背に回す。戸賀井はTシャツを着たままで、直接肌には触れられないが布の上に手を滑らせながら上下に撫でる。安心感が戻ってきた。
「せんせ……気持ちい、俺、ぁ」
 余程我慢していたのだろう。挿入したはいいが、動くと射精してしまいそうなのか身動きの取れなくなっている戸賀井に愛おしさが湧く。
「……いいよ。俺も戸賀井くんの、欲しい」
 耳元で囁いたら戸賀井が低い声で、「ぅ」と漏らす。それすら舐め取って自分の中に取り込んでしまいたい。感情の高まりと共に雄大の腹の奥がきゅううっと締まっていく。
「は、っ、ぁ、かどむら、せんせ、っ」
 身を起こして腰を引こうとする戸賀井の体を雄大は抱き締めて離さない。あぁ、と力ない呟きと一緒に戸賀井のものが中で脈打つ。
「ぅ、ぬ、抜かないでっ、そのまま、中にいて」
「はぁ、は、っ、門村先生」
 奥に向かい精が放たれているのを身を以て感じる。避妊具を着けていない証だが、それでも離れて欲しくなかった。折角欲しいものを貰えたのだから満たされたままでいたい。無責任にもそんなことを考えた。
 雄大が強請ったものだから戸賀井は中から自身を抜くようなことはせず、射精を終えたあとで頬にキスをくれて上半身を起こした。
 抱き締めていた背から手を離すのは惜しかったけれど、唇が優しく頬に触れると体が繋がっているのだから良いかと思えた。
 雄大の足を抱え込んだ戸賀井の腰が緩々と動き出す。
「ぁ、はっ、とがっ、い、くん」
 ぱちゅっ、ぱちゅっ、と腰がぶつかる音が生々しく玄関に響く。中を行き来する度に雄大の体液と戸賀井の精液が混じり合ってぐちゃぐちゃに溶け合う。
 その内に中側から自分自身もドロドロに溶けて戸賀井と一つになれたらいいのにと有り得ない妄想がぼやけた脳内に浮かぶ。
 これが終わったら戸賀井を、戸賀井の好きな人の元へ返してやらなければならない。分かっている。でも今だけ。
 切なくなって泣き出しそうになるのに、ヒートのお陰かどんな感情も雄大の体を悦ばせる材料になってしまう。
「門村先生、門村先生」
 恋しそうに名を呼ばれ、戸賀井の想い人になった気にさせられる。そのまま、与えられる強い揺さ振りに身を委ね、雄大はまたすぐに達してしまった。
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