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第一章
12. 約束
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半壊した部室棟の屋上に、二つの影が立っている……
空里とシェンガは、夕日と自分たちの間に広がった、奇妙な景色を飽くことなく眺めていた。
戦闘中に移動していた惑星改造船は、消滅した東京の西側に落下し、スター・コルベットとシールドに守られた部室棟の一部は墜落の被害をまぬがれていた。
完全な荒野と化した地上には、巨大な構造物や船体の残骸が突き立ち、金属製の神々が眠る墓場か、発狂した巨人の庭師による庭園にも見えたりした。
空里の世界は完全に変わってしまった。
この変わり果てた世界で、これから何をしていけばいいのか……
とにかく、銀河皇帝になる。
それだけはしなければならないこととして、明確だった。
でも、何のために?
とにかく、彼に言ったのだ。銀河皇帝になる、と。
今はそれだけしか理由は思いつかなかった。
「アサト……」
ネープがやって来て声をかけた。手に何か畳んだ布を持っている。
「これを着てください」
広げて空里の肩にかけ、首元のフックをかける。マントというか、ケープというか……全身をすっぽりと包むような一枚布の衣服だった。
「皇位後継者の聖衣です。即位の日まで、出来るだけ着ていてください。メタレザーで出来ていますから、環境の変化に対応し、多少のエネルギービームなら防ぐことも出来ます」
見た目はなんてことのないマントなのに、最新技術の賜物というわけだ。
「あ……ありがと。でも、これ……」
少年は空里の懸念をすぐに察した。
「〈彼〉のものではありません。さっき、自分で作りました」
手作りのプレゼント……こんな時でなければ、飛び上がって喜びたい……
「なんでも出来るのね、完全人間さん」
「あなたのためなら、何でもします」
あまりにストレートなその物言いに、空里は頬をほてらせた。
「アサト、これから即位まで、まだ困難な道が続くと思います。しかし、私が必ずあなたを銀河皇帝の座に着かせて差し上げます」
それが、〈法典〉の定めだから……よね。
空里はネープの優しい言葉を素直に喜べない現実に失望しながら、少しでも長く彼といたい気持ちも感じずにいられなかった。
皇帝に即位したら……いや、今でも彼は自分の言うことに何一つ逆らわず、聞いてくれることだろう。でも、それがいいことなのか確信が持てない……
かつて校庭だった眼下の浜辺では、チーフ・ゴンドロウワが戦闘の後片付けをしている。命令すれば言うことを聞く人造人間……空里はネープをそのように思いたくなかった。
完全人間の少年は、振り返ると自分の仕事へ戻ろうとした。
「ネープ……」
空里は、マントの合わせを強く握りしめて言った。
「約束して。いつまでも私のそばにいるって」
「ご命令であれば、その通りにいたします」
「命令じゃないの。約束して欲しいの」
風がネープの前髪を揺らし、青紫色の双眸が夕日に光った。
「約束……します」
ネープの後を追って階段を降りて行ったシェンガは、疑念に毛の逆立つ顔を彼に見せつけた。
「……お前、違いが分かってるのかよ」
少年は何も言わずに地上に下り、一度だけ振り返って空里の姿を見上げた。
少女は屋上の端に腰掛け、沈む夕日をいつまでも眺め続けていた。
空里とシェンガは、夕日と自分たちの間に広がった、奇妙な景色を飽くことなく眺めていた。
戦闘中に移動していた惑星改造船は、消滅した東京の西側に落下し、スター・コルベットとシールドに守られた部室棟の一部は墜落の被害をまぬがれていた。
完全な荒野と化した地上には、巨大な構造物や船体の残骸が突き立ち、金属製の神々が眠る墓場か、発狂した巨人の庭師による庭園にも見えたりした。
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それだけはしなければならないこととして、明確だった。
でも、何のために?
とにかく、彼に言ったのだ。銀河皇帝になる、と。
今はそれだけしか理由は思いつかなかった。
「アサト……」
ネープがやって来て声をかけた。手に何か畳んだ布を持っている。
「これを着てください」
広げて空里の肩にかけ、首元のフックをかける。マントというか、ケープというか……全身をすっぽりと包むような一枚布の衣服だった。
「皇位後継者の聖衣です。即位の日まで、出来るだけ着ていてください。メタレザーで出来ていますから、環境の変化に対応し、多少のエネルギービームなら防ぐことも出来ます」
見た目はなんてことのないマントなのに、最新技術の賜物というわけだ。
「あ……ありがと。でも、これ……」
少年は空里の懸念をすぐに察した。
「〈彼〉のものではありません。さっき、自分で作りました」
手作りのプレゼント……こんな時でなければ、飛び上がって喜びたい……
「なんでも出来るのね、完全人間さん」
「あなたのためなら、何でもします」
あまりにストレートなその物言いに、空里は頬をほてらせた。
「アサト、これから即位まで、まだ困難な道が続くと思います。しかし、私が必ずあなたを銀河皇帝の座に着かせて差し上げます」
それが、〈法典〉の定めだから……よね。
空里はネープの優しい言葉を素直に喜べない現実に失望しながら、少しでも長く彼といたい気持ちも感じずにいられなかった。
皇帝に即位したら……いや、今でも彼は自分の言うことに何一つ逆らわず、聞いてくれることだろう。でも、それがいいことなのか確信が持てない……
かつて校庭だった眼下の浜辺では、チーフ・ゴンドロウワが戦闘の後片付けをしている。命令すれば言うことを聞く人造人間……空里はネープをそのように思いたくなかった。
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「ネープ……」
空里は、マントの合わせを強く握りしめて言った。
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少女は屋上の端に腰掛け、沈む夕日をいつまでも眺め続けていた。
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(2022.04.04)
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