その吸血鬼、返品します!

胡桃澪

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吸血鬼が召喚されるとか知らない!!

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 家に帰ると、私は部屋のベッドに寝転びながら買ったばかりのおまじないの本を開く。

 もちろん見るのは恋を叶えるおまじないのページ。

本に書かれていたのはおまじないを行うのは夜の教会が良い事、用意する道具は魔方陣、蝋燭、蝋燭に火をつけられる物、 おまじないを実行する者の血液が少量入った便とあった。

 用意する道具は難しくないけど、どこか不気味なおまじないだ。

 私は取り壊しが決まっているという教会を調べ、早速おまじないに使う道具を揃えていった。

ーー4月20日。

 計画実行の日、電車で1時間半くらいかかる場所にある取り壊し寸前の教会。

 どうせ取り壊すなら床にチョークで魔方陣を描くくらい問題無いよね?

 中はかなり薄暗く、ステンドグラスから漏れる光だけが頼りだった。

 床にチョークで魔方陣を描き、真ん中に私の血が少量入った小瓶を置くと、その周りに火を灯した蝋燭5本を置く。

「これでオッケー。こんな不気味な所、早く出てしまいたい!」

 怯えながらも、私は魔方陣の前で祈りを捧げる。

 どうか、私の願いを叶えてください! 朝倉くんの彼女に……なれますように!

 その瞬間、いきなり魔方陣が強い光を放った。

「な、何!? 眩しくて目が開けられな……」

 10分くらいして、ようやく目を開けると、魔方陣の真ん中で黒いマントを纏った紫色の髪をした男性が倒れていた。

「ひ、人!? 何で!? さっきまでいなかったよね!?」

 ど、どういう事?

「ん……」

 男性が起き上がる。

「あ、あの……」
「あぁ、よく寝た。目覚めるのは110年ぶりか。ん? 女の子がいる……えっ……」


 紫色の髪に赤い瞳をした私と同い年くらいの人。

「だ、誰!? きょ、教会の人ですか?」

 私は恐る恐る彼に聞いてみる。

「……そう見える? まぁ、110年も封印されていれば、教会の人でもあるか」
「へ?」
「俺はこの教会に110年前、封印された吸血鬼。君が俺を目覚めさせてくれたのか? いやぁ、嬉しいね。110年ぶりに会う女の子」

 きゅ、吸血鬼!?

 私は慌てて持って来ていたおまじないの本を開く。

「きゅ、吸血鬼を召喚するおまじない?」

 恋を叶えるおまじないの隣のページ見てた!?

「今日から君が俺のマスターってわけか。嬉しいねぇ、若い女の子の血は格別だから」
「へ、返品します! 魔界に……魔界に帰ってください!」
「だーめ。もう契約は結ばれちゃったし」
「けど、さっき110年前に封印されたって。何か悪い事をした人なんですよね!?」
「悪い事なんてしてないぞ? 俺があまりに魅力的だから村の女性皆が俺に惚れちゃってさ、子孫繁栄できず、村を滅ぼしかねないって事で封印されただけで」
「十分悪い事です!」

 とんでもない吸血鬼を呼び出してしまった!?

「君は運が良い。何せ吸血鬼界のプリンスである俺を目覚めさせたんだから。はぁ、110年も封印されてたから女の子見ただけで興奮しちゃうな……」
「あ、あの! 私、おまじないを間違えたんです! 貴方を呼び出すつもりは無くて……だから、マスターにするのは私じゃない方が……」
「おまじない?」
「は、はい。私の願いを叶えるおまじないです! ですから、出て来てほしいのは貴方というよりランプの魔人みたいなのが良かったです….…」
「君の言うランプの魔人とやらについてはよく知らないけど、後悔はさせないぞ? 見たところ、君は処女のようだ」

 何で分かるの!?

 さすが女性達を落として村を滅ぼしかけた吸血鬼!!

「わ、私の男性経験と貴方に何の関係が?」
「俺、テクニシャンって言われるんだよな」
「さ、さようなら!」
「あっ……」

 私は走って逃げた。

 大丈夫、吸血鬼だから羽根なんて無かったし、私の家までは1時間半もかかる。

 もう会う事も無いでしょう!

 私は完全に安心しきっていた。

 恋を叶えるおまじないは今度リベンジすると決め、帰宅するとすぐに私は眠りに落ちた。

 翌朝、インターフォンの音で私は目覚めた。日曜日の朝に人が来るのは珍しい。

 宅配便か何かだろうと思っていると、玄関にいる母が私を呼んできた。どうやら、宅配便ではないみたい。

「お母さん、何……」

 玄関に行くと、玄関のドアの前には昨日私が召喚してしまった吸血鬼が笑顔で立っていた。

「おはよう、雫」
「な、何で!?」
「何寝ぼけた事言ってるのよ、雫。彼は黒月響斗くん。貴方の婚約者でしょう? 今日から一緒に住むのよ」
「き、聞いてないけど!?」
「話したわよー!」

 何かが可笑しい。絶対、彼が何かしたんだ!!彼はにやにや笑っている。

 吸血鬼が婚約者で、いきなり同居って。こんなの絶対に可笑しい。

「昨晩ぶりだな、マスター」
「あの……何故うちが分かったんですか?」
「能力で分かるよ、そのくらい」

 私は部屋で彼に色々追求する事に。

「婚約者とか同居とか色々頭が混乱して……」
「そりゃあ、目覚めさせてくれた子には恩義があるからな。その子の家に仕えるのは当然。それに嫁を取る前に封印されちゃったから手っ取り早い」
「私は嫌ですけど……」
「ん? 聞こえなかったわ」
「あ、あの! 私には好きな人がいて……吸血鬼さんと結婚なんて……」
「響斗で良いよ」
「ひ、響斗?」
「黒月響斗は人間界での名前。俺の母さんは日本人なんだ」

 日本に吸血鬼なんていたっけ?

「響斗くん……」
「ああ、よろしく! 雫」
「ま、待って。親がいるならそっちに行けば良いじゃないですか!」
 

 この人、110年眠っててぴんぴんしてるし、吸血鬼って不老不死だよね?

「親はもういないよ。俺が7つの時に二人は死んだ。殺されたんだ」
「えっ?」
「吸血鬼でも対吸血鬼用の妖刀で斬られたら死ぬから」
「そ、そっか」
「ま、この美貌のおかげでたくさん女性に養って貰ったから苦労はしなかったけど」
「紐じゃないですか……」
「紐とは?」

 今から110年前って事は明治とかだよね?

「と、とにかく! 私は困ります」
「雫は捨てられた子犬を見捨てるタイプ?」
「み、見捨てないですけど……」
「親はいないし、封印されたのが110年前だから人間界で生きている知り合いはもういない。あぁ、こんなに可哀想な吸血鬼を放置するなんて……」
「ま、魔界に帰れば良いじゃないですか! ありますよね? そういう世界。本で読みました」
「俺、魔界で嫌われてるから。人間と吸血鬼のハーフじゃ仕方ない」

 人間と吸血鬼のハーフ?

「半分、人間なんですか?」
「言っただろ? 母親が日本人って。父親は純血の吸血鬼」
「あっ……そういえば、昨日と瞳の色違うのって……」
「ああ、昼間は茶色で夜は赤なんだ。ハーフだから夜に吸血鬼の力が強まって赤くなるんだ」

 確かに髪色が紫色な事以外の昼間の彼は人間にしか見えない。夜のがモンスター感があった。

「だから、窓から差している日差しに当たっても平気そうなんだ……」
「半分人間だからね。ニンニクは嫌いだし、血はやっぱり2日に一回くらい摂取しないといけない身体だけどね」
「やっぱり血を……」
「俺が怖い?」
「あ、当たり前じゃないですか。吸血鬼なんて……」

 本の中だけの存在だと思っていた。だけど、本当にいたんだ。

「大丈夫。痛くしないから!」
「そ、そういう問題ではありません!」
「かったいなぁ、雫は。110年前まで俺が住んでた村では女性皆、喜んで俺に血を差し出したのに」
「わ、私はあげませんからね!?」
「気持ち良くさせてあげるけど?」
「け、結構です!」

 そうだ、やっぱり早く出て行ってもらわないと!血を吸われたらお嫁に行けない!

 
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