その吸血鬼、返品します!

胡桃澪

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返品はききません。

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「とにかく、私は貴方のような人と婚約する気はありません。きゅ、吸血鬼なんて無理……」
「半分人間なんだけどな」
「そ、それでも無理です!」
「召喚しといてそりゃあ無いって、雫」
「わ、私はただおまじないを間違えただけで」

 魔法のランプの魔人が出てきてくれた方がよっぽどマシだった。

 なのに、目の前にいるのは紫色の髪をした吸血鬼。

「おまじない、ね? それってどんなおまじない?」
「な、内緒です」
「内緒、ね。俺なら雫の願いを叶える手伝いが出来るかもしれないぜ?」
「へ?」
「吸血鬼って特別な能力があるからね」
「私のお願い……叶えるって……」
「せっかく封印から解いてくれたんだ。お礼はちゃんとさせろよ?」
「け、けど……恋を叶える手伝いなんて出来ないですよね?」
「恋….…?」

 吸血鬼にそんな事出来るわけない。

「魔法のランプの魔人とかじゃあるまいし……無理ですよね?」
「君の言う魔法のランプの魔人というのはよく分からないけど、出来ない事は無い」
「ほ、本当ですか!?」
「俺を好きにさせりゃあ良いんだ。万事解決」
「ば、万事解決じゃあありません!」

 何なの、この人ー!!

 本当にどうしたら良いんだろう!?

「たくさん食べてね!」
「はい、とても美味しいです。お義母さん」
「まぁ! お義母さんだなんて!」

 お昼になると、お母さんと談笑しながら食事をする響斗くん。この人って村中の女性を夢中にさせて村を壊滅させかけて封印されたんだよね?

 どうしよ、お母さんまで口説かれたら!お母さんは私が守らないと!

「何、隅っこで縮こまってんの? 雫」
「ひ、響斗くんから自分の身を守っているんです!」
「まーだ信用してくれないんだ?」
「当たり前です! 村を滅ぼしかけた吸血鬼なんて信用なりません! 早く新しい飼い主を見つけてください!」
「俺は犬かよ……」

 部屋の隅っこで縮こまっている私を見て響斗くんは呆れている。

「と、とにかく! 私は貴方に釣り合いません!」
「悪いけど、離れる気は無いから」
「ど、どうしてですか!?」
「一目惚れしたから」
「そ、そういう台詞、女性皆に言ってるんでしょう!? だ、ダメです! チャラいです!」
「チャラいとは?」

 あっ、そっか。110年も眠っていた人だから!

「私は地味だし、暗いし、面白くもない人間なのでやめた方が良いです」
「地味? 雫、すげぇ可愛いと思うが」
「そ、そういう発言を簡単にするのがチャラいんです!」
「俺、意外と一途なんだけどな」

 どうしたら私を諦めてくれるんだろう?

 本には召喚の仕方しか書いてないし。

「今すぐ俺と愛し合えば雫も分かって……」
「ち、ち、近付かないでください!」

 私は彼が近づいてきた瞬間、クッションで頭を叩く。

「痛……すぐ照れるとこも似てるんだな、あいつに」
「あいつ?」
「さーてと、人間界で馴染むには色々揃えないとな。付き合え、雫」
「な、何故私が……」
「魔界で外貨両替はしてきたが、未だ今の通貨について理解していなくてな。一人で買い物は少し不安だ」
「が、外貨両替?」
「魔界の通貨を日本円に換算したんだ。110年封印されてたとはいえ、魔界にある金庫はそのまま残されていたからな。ざっと100万ぐらいある」
「ひゃ、100?」

 桁がおかしいんですけど!?

「服と本だけ買っておきたいんだ。付き合ってくれるな?」
「わ、私は……」
「付き合ってくれないならお前の母親口説くけど良い?」
「そ、そんな脅しは卑怯です! わ、分かりました」
「やった」

 どうしよう、本当……。

「何あの人、超かっこいい」
「外国人モデル?」

 街に行くと、やはり彼は注目の的となった。なるべく離れて歩こう。

 私まで目立ってしまう。

「うわ、着物の人一切いない。というか110年前の景色と全然違うな。なんか、変な板見ながら歩いてる人ばっかだし」
「変な板ってスマホですかね? 持ち歩ける電話です」
 「すまほと言うのか。便利な物があるんだな。よし、あれも買う」
「そ、そんな簡単に買うんですか!?」
「今時の高校生に擬態する為だ。明日から高校生だし」
「えっ?」
「俺も雫と同じ学校に通う」
「ど、どうしてですか!?」
「雫の側にいたいからな」

 高校までついてくるなんて!

「私は困ります!」
「けど、もう決まったし。お前の母親も制服注文してたけど?」
「お母さんを洗脳しないでください! すぐお母さんの洗脳を解いて….…」
「いやぁ、洗脳したは良いけど、解く方法忘れちゃった。ごめんな」

 ぜ、絶対覚えてますよね!? にやにや笑ってるし!

「昨日に戻りたい……」
「雫。さっきから気になってたけど、何故そんなに離れて歩く?」
「め、目立ちたくないので!」

 早く買い物終わらせて帰ってしまいたい!

「そういうの寂しいからやめろ」
「ちょっと!」

 響斗くんはいきなり私の腕に自分の腕を絡ませる。

 男の人と密着するなんて初めてだから動揺する。

「おぉ! これがすまーとふぉんというのか。線が無くても話せるのか!」
「う、うん」
「明治には無かったぞ!? しかも、電話以外にも色々な事が出来るとは……」

 ショッピングモールに着くと響斗くんは早速携帯ショップでスマホを手に取る。

「これは買うしかないな」

 なんだかすごく楽しそうだな、この人。

「雫、あの店は何だ?」

 スマホを購入し、ショッピングモール内を回っていると、響斗くんはある店を指差した。

 それは女性向けの下着屋さん。

「し、下着屋さんです」
「ほぉ。これはなかなか良いな。スケスケのとかもあるのか? 雫?」
「は、入りたいの!?」
「雫が着たとこを見たい。できればスケスケの」
「き、着ないですからね!?」
「しかし、今の女性はああいった物を着けるんだな。俺がいた村は女性皆、ああいう物は着てなかった。だから、見放題……」
「つ、次の店に行きましょうか!」

 何この人、下ネタが多すぎる!!

「こんなに店がたくさんある場所は初めて行くな」
「そ、そうですか」
「雫は何も買わないのか?」
「わ、私は……オシャレとか興味ないので!」
「それはよろしくないな。勿体無い!」
「わ、私にはお構いなく」
「む……」
「ほ、ほら! 早く買い物を済ませましょう」

 さっきからやたらと注目されて落ち着かないし!

「このジャケットかっこいいな。よし、買うか」
「先程から即決ですね?」
「金ならあるしな」

 この人一体何者なの? 吸血鬼と人間のハーフという事しか情報が分からない!

「さっきからずっと警戒した顔をしているな? 雫は」
「う、うさんくさい要素しかないので!」
「ひっどいなぁ。俺を信用しろよ」
「で、出来ません!」

 どうしたらこの人は私に仕えるのを諦めてくれるのだろう。

「たくさん買ったな」

 スマートフォン、大量の服、大量の本を買い込むと彼は満足気な表情になる。

 かなり疲れました。普段人がたくさんいるショッピングモールなんて行かないから落ち着かなかった。

 そもそも家族以外の人とこんなに長時間一緒に過ごすなんて滅多に無かったし。

「デートみたいで楽しかったな? 雫」
「で、デートじゃありません!」
「全然俺を受け入れないな? 雫は」

 私は目立ちたくないのに、彼といるとやたらと注目されるし、ストレスしかない。

「早くお家に帰りたい……」
「本当に変わったんだな、110年前と。俺が知っている日本は何処にもないんだな」
「えっ?」
「110年以上も生きているのは俺だけだろうな」

 彼は突然切ない表情で話す。

「し、親戚とかいらっしゃらないんですか? 魔界には」
「いるけど嫌われてる。父さんが人間と一緒になった事で勘当された」

 そうか、吸血鬼の世界もシビアなんだ。

 けど、そうなるとやっぱり我が家しか居場所無くない!?

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