2 / 7
ライゼン通りのお針子さん2 ~職人の誇り見せてみます~番外編
番外編 錬金術師とイクト
しおりを挟む
ライゼン通りにある小さなアトリエ。そこにはコーディル王国一の腕を持つ錬金術師の女性が工房を営んでいた。そのお店へと一人のお客が訪れる。
「いらっしゃい。イクト君……貴方が来る時はいつも難しい問題を抱えている時よね。……それで、今日はどうしたの?」
「ソフィー。君にまた依頼を頼みたいと思ってね。今日中にこのデッサン画に描かれているアクセサリーの台座を作ってもらいたいんだ。しかも伝説級の品でね」
どことなくアイリスに似て真面目で頑張り屋さんな雰囲気を漂わす女性の言葉にイクトは頼み込む。
「またそれは難しい依頼ね。たった半日で伝説級の品物を作れだなんって……ハンスを通してじゃなくて、私に直接頼むってことはよっぽどの事情があるのね」
「お願いできるかな」
ソフィーがふぅと溜息を吐き出す。そんな彼女へと彼は柔らかい微笑みを浮かべた顔のまま尋ねる。
「イクト君。何があったか知らないけれど、そこまで必死になるのはこのデッサン画を描いた子のためかしら?」
「まぁ、そうだね」
ソフィーの問いかけにイクトは軽く頷き答えた。
「分かったわ。そこでお茶でも飲んで待っていて。すぐに作るから」
彼女は言うと調合室へと入っていく。
「思えばイクト君との付き合いも長いものね。私がこの国に来てからだからもう十九年になるかしら」
ふと過去のことを思い起こすとあの頃のことが懐かしいと言わんばかりに微笑む。
「さて、それじゃあ調合しますか。イクト君の大切な子を助けるために」
ソフィーが言うとフラスコを手に取り調合を開始する。
「お待たせ。できたわよ」
「有難う。それで……」
「お代はいいは。いつも贔屓にしてもらっているからね。持って行って」
調合室から出てきた彼女から品を受け取ると代金を支払おうとするイクト。
そんな彼へとゆるりと首を振って微笑む。
「私が手伝えるのはここまで。後はイクト君がそれを完成させるのよ。頑張ってね。貴方の大切なお針をさんを助けるために」
「うん」
彼女の言葉に彼が微笑み力強く頷く。
「……さて、ポルトが帰ってくるまでに今受けている依頼をすべて終わらせないとね」
イクトが店から出ていくとソフィーがそう言ってまた調合室へと戻っていった。
ライゼン通りの一角にある小さなアトリエ。そこには錬金術師の女性がお店を経営しており、彼女の調合した品は市場にいるハンスという商人の店でしか販売されていない。その素材は仕立て屋アイリスが買い取り今日も誰かの着る服やアクセサリー等になりこの町の人達の笑顔につながっている。
「いらっしゃい。イクト君……貴方が来る時はいつも難しい問題を抱えている時よね。……それで、今日はどうしたの?」
「ソフィー。君にまた依頼を頼みたいと思ってね。今日中にこのデッサン画に描かれているアクセサリーの台座を作ってもらいたいんだ。しかも伝説級の品でね」
どことなくアイリスに似て真面目で頑張り屋さんな雰囲気を漂わす女性の言葉にイクトは頼み込む。
「またそれは難しい依頼ね。たった半日で伝説級の品物を作れだなんって……ハンスを通してじゃなくて、私に直接頼むってことはよっぽどの事情があるのね」
「お願いできるかな」
ソフィーがふぅと溜息を吐き出す。そんな彼女へと彼は柔らかい微笑みを浮かべた顔のまま尋ねる。
「イクト君。何があったか知らないけれど、そこまで必死になるのはこのデッサン画を描いた子のためかしら?」
「まぁ、そうだね」
ソフィーの問いかけにイクトは軽く頷き答えた。
「分かったわ。そこでお茶でも飲んで待っていて。すぐに作るから」
彼女は言うと調合室へと入っていく。
「思えばイクト君との付き合いも長いものね。私がこの国に来てからだからもう十九年になるかしら」
ふと過去のことを思い起こすとあの頃のことが懐かしいと言わんばかりに微笑む。
「さて、それじゃあ調合しますか。イクト君の大切な子を助けるために」
ソフィーが言うとフラスコを手に取り調合を開始する。
「お待たせ。できたわよ」
「有難う。それで……」
「お代はいいは。いつも贔屓にしてもらっているからね。持って行って」
調合室から出てきた彼女から品を受け取ると代金を支払おうとするイクト。
そんな彼へとゆるりと首を振って微笑む。
「私が手伝えるのはここまで。後はイクト君がそれを完成させるのよ。頑張ってね。貴方の大切なお針をさんを助けるために」
「うん」
彼女の言葉に彼が微笑み力強く頷く。
「……さて、ポルトが帰ってくるまでに今受けている依頼をすべて終わらせないとね」
イクトが店から出ていくとソフィーがそう言ってまた調合室へと戻っていった。
ライゼン通りの一角にある小さなアトリエ。そこには錬金術師の女性がお店を経営しており、彼女の調合した品は市場にいるハンスという商人の店でしか販売されていない。その素材は仕立て屋アイリスが買い取り今日も誰かの着る服やアクセサリー等になりこの町の人達の笑顔につながっている。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる